アベノミクスと中古不動産流通の関係について取り上げてみました。
安倍首相の掲げる大胆な経済改革「アベノミクス」によって円安・株式市場の上昇とともに不動産価格も上昇の傾向が見られました。
また、政策の一部として「中古不動産市場」の見直しもあり、「中古住宅」に対する関心も高まりつつあります。
今回はアベノミクスを通して中古不動産市場の動きの変化を見ていきましょう。
アベノミクスが目指す「多様な住宅ストックの形成」
第三の矢の日本産業再興プランでは「都市の競争力の向上」の一環として、「都市・住環境の向上」が挙げられています。
施策としては、「フロー(新築住宅の建設)拡大からストック(中古・既存住宅の流通)充実に向けて質の良い多様な住宅ストックの形成を図る」ことが目標とされています。
その実現に向けた取り組みとして、国土交通省は中古戸建て住宅の評価手法の改善に向けた検討のため「中古住宅に係る建物評価の改善のあり方検討委員会」を設置し検討を進め、その結果を「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」として平成26年3月に公表しました。この指針の具体的な目的は日本の「中古住宅市場流通」に関する問題への対策です。
日本が抱える「中古住宅市場流通」の問題
日本の中古住宅の流通市場は欧米諸国に比べ、非常に小さいのが現状です。
そもそも日本の中古住宅市場では、全住宅流通量(中古流通+新築着工)に占める中古住宅の流通シェアは約13.5%(平成20年)であり、欧米諸国と比べると1/6程度と低い水準にあるといわれています。その原因の一つと指摘されているのが、中古戸建て住宅の建物評価の問題です。
現在、日本の中古戸建て住宅については、取引時の個別の住宅の状態にかかわらず一律に築後20~25年で建物の市場価値をゼロとされる慣行があり、中古住宅流通市場活性化の阻害要因」となっているのです。特に不動産業者による取引価格などや金融機関における担保評価において、中古戸建て住宅の価値を十分に評価できていないことが中古住宅流通市場活性化の大きな阻害要因となってきました。
このような状況を見直し改善するため、前項で挙げた「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた」指針が策定されたのです。
「中古不動産」の扱いの変化
こうした「中古不動産」に対する判断基準の改善が進むと、当然市場の流れも変化します。
極端な表現をすると「明らかに住宅の価値が回復・向上するリフォーム(設備の定期更新等)を行った物件も、管理がされていない放置状態だった物件も20年~25年経てば一括して「価値ゼロ」とみなされていた現状が変わることによって、中古不動産の売り手・買い手ともにその価値を見直すことになります。
これは「中古不動産市場」の流通を間違いなく活性化させます。さらに国家戦略プロジェクトとして市場の活性化に合わせてリフォーム市場も2020年までに倍増させることが閣議決定されているので、今まで新築物件に手厚かった措置がゆくゆくは中古物件に波及することが期待できます。
また、中古住宅を購入してリノベーションするという手法は、今後増えていくと思われます。神奈川県横浜市エリアでのファミリータイプ新築マンションが大体4500万円~7000万円程度の水準に対して中古マンションは900万円~3500万円程度です。1000万円程度でリノベーションをしても、概算での総取得費用は新築の相場を下回る水準に抑えることができます。
こうして様々な点から「中古住宅」に対する見直しがされています。新築・中古物件の需要と供給はこれから大きく変化していくことでしょう。
いかがでしたでしょうか。これからの中古不動産流通について紹介しました。