新築戸建てなら“住宅性能評価書”を取得した物件を買った方がいい理由

「住宅性能表示制度」とは?新築戸建てなら評価書付きの家を買いたい

住宅の性能は外見からでは分かりにくいことが多いものです。

たとえ言葉で「この家は特に地震に強いですよ!」「この物件は省エネですよ!」と説明されても、なんとなく理解はできますが、他の家とどう違うかきちんと比べることもできません。

そこで、家の品質を等級や数値などで分かりやすく表示する「住宅性能表示制度」が作られました。

「耐震等級3で地震に強い」「この家は耐火性能の最高等級4を取得!」などといった広告を見たことがあるでしょうか。これらは、この表示制度を利用して、住宅を客観的・数値的に評価した家であることを示しているのです。

そして今後、新築戸建てを購入するのであれば、できるだけ性能評価を受けた家を購入することをお勧めします。

ここでは、住宅性能表示制度を簡単に理解した上で、そのメリットや注意点、性能評価付きの新築戸建てを購入した方がいい理由などをみていきましょう。

【住宅性能評価】家の品質を共通基準で客観評価、他の住宅とも比較可能に

まずは住宅性能表示制度の概要を理解しましょう。

住宅の性能は目に見えず分かりづらいものです。例えば「耐震性がある家」といっても、建築基準法で定める最低限のレベルなのか、それ以上のレベルなのかもよく分かりません。

また、注文住宅を建てる場合には、建築知識が乏しい施主(注文主)は「耐久性がまあまあある家にしてくれ」「バリアフリーにそこそこ配慮した家にして欲しい」などと、希望するレベルを適切に伝えることも難しいものです。

そこで、2000年に家の品質を等級や数値などで分かりやすく表示する「住宅性能表示制度」が作られました。

具体的には、10の分野について国が定めた統一基準で客観的に評価します。

住宅性能表示制度の10分野 ※太字は評価必須項目

①構造の安定(耐震性)②火災時の安全(防火性)③劣化の軽減(耐久性)④維持管理・更新への配慮⑤温熱環境・エネルギー消費量(省エネ性)⑥空気環境⑦光・視環境⑧音環境⑨高齢者等への配慮(バリアフリー性)⑩防犯

これにより住宅の性能を共通のルールで客観的に評価でき、建築会社が違う家など他の家とも比較しやすくなります。また、注文住宅であれば、自分で指定したレベルに合致している家かどうかをチェックすることもできます。

この制度は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づいて運用され、性能表示の評価基準や評価方法も国が定め、国が登録した第三者機関(登録住宅性能評価機関)が客観的な評価を実施します。

評価を受けた住宅はマークも表示できるようになります。

マイホームの販売図面などにこのマークを見付けたら住宅性能を評価された家です。どの項目の評価を受け、どの程度(等級)の品質が認められたかをチェックしましょう。

図面での設計評価と、建築中・完成時での建設評価の2種類。4回現場に立ち入り検査

住宅性能評価には大きく2つあります。

建築前における図面での事前評価と、その図面通り建物が作られたかを建築中・建築完了後に検査する事後評価の2つです。3階建て以下の住宅の場合、原則として4回現場に立ち入って検査します。

住宅性能表示制度による性能評価の流れ【出典】住宅性能表示制度の概要(国交省)

具体的な名称は、図面などの設計図書で評価した「設計住宅性能評価書」と、施工途中と建物完成後に検査・評価する「建設住宅性能評価書」の2種類です。

「設計」と入っていたら「図面で建物品質をチェックした評価だな」、「建設」と入っていたら「建物を建てている途中に検査し、竣工後にもチェックして評価したんだな」と考えましょう。

どちらか片方だけの評価を取得した住宅もあれば、設計と建設の両方の評価を取得している住宅もあります。もちろん両方取得している家が安心です。

【メリット】建築中の検査もあり安心。ローンの割引や安価での紛争処理も

住宅性能を取得するメリットは、目に見えず分かりづらい家の性能を、共通の基準で評価して等級や数値で客観的・定量的に確認できることです。

また、建設住宅性能評価では建築途中に複数回の検査が入ります。そのため、建物が完成した後には見ることができない壁や床の裏側部分の状況もチェックできるため安心です。

金銭的な優遇・割引措置もあります。

具体的には、フラット35Sなど住宅ローン金利の引き下げや、評価された耐震性能の等級に応じた地震保険料の割引、質の高い住宅であることが確認できた場合の住宅資金贈与非課税枠の拡大などです。

さらに、建設住宅性能評価書を取得した住宅では、将来トラブルが生じた場合に、国土交通大臣が指定する指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に紛争処理を申請できます。

これにより、売買契約や請負契約において当事者間で争いが発生した場合、裁判によらずとも紛争を円滑・迅速に処理することができます。しかも、紛争処理費用は1件当たり1万円という格安ともいえる金額です。

性能評価書(等級)を取得するためには20万円程度の費用がかかる(建物規模やオプションによって異なります)ことはデメリットですが、それを緩和する金銭的なメリットもあるのですね。

【実績】今や新築物件の約3割は性能評価書を取得。今後も増える見込み

住宅性能評価書を取得した新築住宅(新築戸建て、新築マンション)は増え続けています。

2021年6月30日に国交省が発表した、2020年度の住宅性能表示制度の実績データによれば、設計住宅性能評価書の交付数は225,609戸となり、新設住宅着工戸数812,164戸に対する割合は「27.8%」と5年連続の増加となっています。

新築住宅のうち、約3割が性能評価を取得しているということです(「設計」の評価数ですので中古住宅は含まれていません)。

人口減少に合わせ新設住宅着工戸数が減少傾向にあるため交付実績数自体は減っているものの、新築住宅に対する評価書交付の割合は増加しているのです。つまり、家の数(量)ではなく、質を高めていく傾向にあるといえます。

今後、マイホームを売却する時には、こういった住宅性能評価書を取得した住宅がライバル物件となっていきます。

逆に、住宅性能評価を受けた場合には「うちの自宅は、新築時に住宅性能評価書を取得しており、耐震等級や劣化等級、省エネ等級など5項目で最高等級を取得していました」と、修繕履歴と共に示せば、良好なメンテナンス状態を訴求することもできます。

将来の買主としては、きちんと性能評価されていた住宅であり、その後も適切なメンテナンスがなされていれば、安心して住宅購入に踏み切れます。

購入後の修繕費用を加味した値下げ交渉が入る余地も少なくなり、強気で販売できるでしょう。

新築分譲マンションと違い、品質に大きな差がある新築戸建て。評価書が安心材料に

特に、戸建て住宅においては住宅性能評価を取得することは大きな意味を持つといえます。

いまだに欠陥住宅や快適な暮らしには程遠い戸建て住宅もあるなか、住宅性能評価を取得することは、買主に対して安心感を与えることができるためです。

戸建ては、地元の工務店やローコスト住宅メーカー、大手ハウスメーカー、高品質の注文住宅設計事務所など、建築会社の規模や建物品質、価格帯もさまざまで差が大きいとことが背景にあります。

資力ある大企業が建設し高価格帯で販売される新築分譲マンションでは、大きく品質の劣る住戸はほとんどなく、むしろ高性能化は当たり前と受け止められていることと対比すると分かりやすいですね。

そんな中、従来より性能評価を実施していた大手ハウスメーカーである飯田グループ(一建設、飯田産業、東栄住宅、タクトホーム、アーネストワン、アイディホームなど)が、住宅性能表示制度をさらに積極活用することを発表してます。

具体的には、2021年7月1日以降に飯田グループが売主として販売する新築分譲戸建ての全棟において、住宅性能表示制度で7項目の最高等級を取得することを義務化したと発表しています。

年間4~5万棟の新築住宅を供給する飯田グループが、この方針を打ち出したことで、他の建売メーカーもこの動きに追随する可能性もあります。

これらのことを踏まえれば、建売分譲戸建てであれ、注文住宅であれ新築戸建てを買うことを決めている場合、できるだけ性能評価書を取得することが資産価値を守る意味でも安心といえるでしょう。

【注意】等級の高さと快適さは違う。住環境に応じたバランスよい家が大事

住宅の性能表示制度には誤解されやすい点があることには注意したいところです。

まず、「耐震等級2」などのように等級や数値で客観的に示され、数字が大きいほど性能が高いことを示します。

例えば、耐震等級1は建築基準法で定められる新耐震基準と同等の耐震性能があることを示し、等級2はその1.25倍、最高等級である3になると1.5倍の性能があることを意味します。

そうなると、等級が高ければ高い住宅ほど良い家であるというイメージに感じますが、必ずしもそうではありません。

例えば、高台にある固くて強い地盤に建築される戸建てに、耐震の最高等級は必ずしも必要ありませんし、無駄にコストがかかることになります。そのエリアの特徴にあわせた家造りが合理的といえます。

また、等級を取る分野を増やすことが快適な住まいづくりに繋がるとも限りません。

例えば、窓など家の開口部を小さくすることで、頑丈で熱の逃げにくい家を実現でき、耐震性能や省エネ性能を向上させる(等級を上げる)ことができます。

しかし、窓が小さいため陽当たりが悪く不快な家になることは容易に想像ができます。評価上も、単純開口率や方位別開口比といった指標が悪化し、光・視環境の性能が悪くなります(光・視環境の等級が下がります)。

住環境に応じて必要十分な等級であることが大事です。等級にこだわるあまり、バランスの悪いマイホームとなることは避けましょう。

【まとめ】住宅性能表示をうまく活用して、資産価値のある家を手に入れる

理解しづらい住宅の性能を、国の定めた基準で評価して等級や数値で分かりやすく住宅性能表示制度。

家が建った後からはみることができない箇所も、建築中や竣工時に検査するため、図面通りに建てられたかも確認でき安心です(建設評価の場合)。

ここにきて、住宅性能評価書を取得する新築住宅は増えており、7項目において最高等級を取得することを義務付けた大手ハウスメーカーも出てきました。

マイホームとして新築戸建てを買うことが決まっているのであれば、住宅性能評価書を取得する物件を選ぶと、将来の売却においても差別化でき有利になる可能性があります。

空き家が増え続けている現在、今後は家の数より質がますます問われます。住宅性能表示制度を理解して、資産価値のある家を手に入れましょう!

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