国交省のアンケート調査結果がおかしい?調べてたどり着いた重要な教訓

調査結果・データを鵜呑みにすると危険?意味や背景を見落とさない!

今や不動産業界に限らず、膨大な量のデータや調査結果が公表されています。

綺麗に加工されたデータを日々眺める中、いつも気を付けていることがあります。それは「データの意味・背景を見落とさない」ということです。

国や地方公共団体が公表するものであっても、特にアンケート調査では、一見すると実態とかけ離れた結果にみえてしまうケースがあります。

例えば、2019年4月16日に国交省が発表した「2018年度の住宅市場動向調査報告書」においても、気になる調査結果がありました。

国交省へも問い合わせたところ、やはりかなり誤解を生む表現になっていた旨の説明もありました(後述)。

ここでは上記の住宅市場動向調査を例にとって、調査結果を読み解く際の注意点を考えてみましょう。

どうも違和感がある…インスペクション・瑕疵保険に関するアンケート結果

今回、住宅市場動向調査報告書を読み進める中で、強い違和感を覚えたのが以下の結果です。

これは、中古戸建て・中古マンションを購入した世帯に、「インスペクション(建築士による建物状況調査)を実施したか?」「既存住宅売買瑕疵保険に加入したか?」を聞いたものです。

インスペクションの実施有無 ※出典:国交省「2018年度住宅市場動向調査」

既存住宅売買瑕疵保険への加入有無 ※出典:国交省「2018年度住宅市場動向調査」

結果だけみれば、2016年度から2018年度に向け、特にインスペクションを実施する割合が戸建て・マンション共に増え続けている傾向を示しているものです。

具体的には、2018年度における中古戸建てのインスペクション実施率は「17.3%」・中古マンションでは「12.2%」となっています(売主実施・買主実施の合計)。

また、瑕疵保険は過去3カ年度で増減はあるものの、2018年度における中古戸建ての瑕疵保険の付保率は「20.0%」・中古マンションでは「22.3%」となっています。

「インスペクション実施率>瑕疵保険の加入率」となるハズなのに逆転?

さて、以上の結果におかしな点があることに気づかれるでしょうか。

既存住宅売買瑕疵保険の制度上、瑕疵保険に加入するためにはインスペクションの実施が必要です。つまり、瑕疵保険に加入した人であればインスペクションを実施しているハズということです。

そうであれば「インスペクション実施割合」>「瑕疵保険加入割合」となるべきです。

一方で上述の調査結果では、中古戸建てではインスペクションの実施率「17.3%」<瑕疵保険の付保率「20.0%」と逆転現象が起きています。中古マンションでも同様です。

調査結果を額面通り受け取れば、インスペクションを実施せずに瑕疵保険に加入できた(本来存在しない)人が相当数いることになるのです。

しかも、インスペクションを実施した人のほぼすべてが瑕疵保険に加入していることも伺え、少し非現実的な結果となっています。

国交省「アンケートの回答者・回収者の知識不足や記憶の曖昧さが原因」

先に結論を述べておくと、このグラフ自体の数値に誤りはないとのことです(国交省)。

このような結果となった原因は、アンケートの回答者や回収者(訪問調査)の知識不足や記憶の曖昧さがあるのではないかとのことでした。

それぞれの項目には「分からない」という分類があります。

実際にインスペクションを実施した(または瑕疵保険に加入した)ものの、記憶が定かではなく「分からない」という回答をしたケースなどがあると推察されるということです。

具体的には、以下のような回答・分類が行われている可能性があるようです。

  1. インスペクションを実施したのを知らずに「瑕疵保険に加入した」とのみ回答
    ⇒インスペクションは「実施していない」または「分からない」、瑕疵保険は「加入した」に分類
  2. 瑕疵保険に加入しているのを知らずに「インスペクションを実施した」とのみ回答
    ⇒インスペクションは「実施した」、瑕疵保険は「加入していない」または「分からない」に分類
  3. インスペクションも瑕疵保険も実施・加入していることを知らない
    ⇒インスペクションは「実施していない」または「分からない」、瑕疵保険は「加入していない」または「分からない」に分類

確かに「分からない」という項目が4~5割を占めており、また、インスペクションや瑕疵保険制度の認知度も低いといわれる状況でもあるため仕方のない側面もあるかもしれません。

実際の率はうやむやに…“インスペクション”や“瑕疵保険”にも複数の種類がある

そもそも「インスペクション」と一口にいっても、改正宅建業法に則った建物状況調査もあれば、そうでないものも複数あります。

「インスペクション」と名の付くサービスにもそのレベルによって、さまざま存在します。

同じことは瑕疵保険にもいえ、例えば民間不動産会社が独自に行う設備保証なども「瑕疵保険」と誤解された上で個人消費者が答えている可能性も否定できません。

「インスペクションの実施率<瑕疵保険の加入率」というあり得ないデータが公開されている以上、この項目の調査結果自体の信ぴょう性が極めて疑わしいものになってしまっています。

実際のインスペクションの実施率や瑕疵保険の加入率はこのデータからは判断がつかないといえるでしょう。

「住宅制度の理解がまだ浸透していない」という重要な教訓が得られた!

アンケート調査においてはその意味・背景を見落としてしまうと、実態とかけ離れた解釈をしてしまうことがあることが分かりました。

例えばその他に注意すべき点として、そもそもアンケートに回答する世帯は住宅に対する意識の高い世帯ともいえ、全国の平均をそのまま映し出しているものではない可能性もあります。

また、今回の調査でアンケートが回収できたのが3,944世帯であることや、調査地域に偏りがあることも注意したいところです(注文住宅は全国、それ以外は三大都市圏での調査)。

一方で、今回の公開データ自体には誤りはありませんでした。データをどう読み解くか、その解釈をしっかりしないと自分で自分をミスリードしかねいと感じました。

そして今回浮き彫りになったのは、住宅制度に対する理解が個人消費者にはまだまだ浸透していないという重要な示唆・教訓です。

インスペクションや瑕疵保険を説明・浸透できていない課題が浮き彫りになった

インスペクションは売主にとっても悪い話ではないのですが、さまざまな理由から建物調査を拒否するケースも少なくありません。

インスペクションの重要性を理解している不動産業者であっても、売主さん・買主さんが拒否すればそれ以上踏み込めません。

また、建物調査を手間と考えたり、契約が遠のくため避けたがる業者も存在します。

こられの理由から、買主さん・売主さんに対して、不動産業者が分かりやすくインスペクションや瑕疵保険の説明をしていない可能性があります。

そうすると正確な知識が十分に浸透せず、このような理解不足という現象がアンケート結果を通じて表面化しているのかもしれません。

これら教訓を生かし、今後も難解にみえる住宅制度をできるだけ分かりやすくお伝えしていきたいと改めて感じました。ご不明点があればいつでもお問い合わせくださいね!

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