進む立地適正化計画。全国初、民間の改修計画を国交省が認定(鶴岡市)

コンパクトシティ実現に向け、国が民間の街づくりを支援(山形県鶴岡市)

2017年4月1日、山形県鶴岡市の民間事業者(株式会社庄交コーポレーション)が策定した「民間誘導施設等整備事業計画」(事業名称:東京第一ホテル鶴岡他改修事業)を、国交省が全国で初めて認定しました。

鶴岡市は立地適正化計画(コンパクトシティ推進に向けたマスタープラン)を策定しており、効率の良い街づくりを推進しています。コンパクトシティ実現に向け、民間業者によるまちづくりを国が支援するものといえます。

東京第一ホテル鶴岡他改修事業の概要
申請事業者株式会社庄交コーポレーション
事業施行期間2017 年1月16日~2018年4月30日
事業区域山形県鶴岡市錦町2-21ほか
大規模改修の対象施設
  • 東京第一ホテル鶴岡(集会機能を備えたホテル)
  • S-MALL(バスターミナルを備えた商業施設)
  • プラスワンつるおか(スポーツ施設)

都市再生整備事業の位置(山形県鶴岡市)(出展:国土交通省「民間誘導施設等整備事業計画の内容の公表」

具体的には、鶴岡市の立地適正化計画で定められた「都市機能誘導区域」内で「誘導施設」として設定されている上記の3つの施設について、老朽化が進んでいることから大規模改修工事を行うものです。

これによって、「各施設の機能の維持・強化による生活利便性の向上、中心部の賑わいの創出、公共交通のネットワーク強化、さらには耐震改修による防災性の向上が期待」されるとしています。

「都市機能誘導区域」の施設を改修することが、都市機能の集約に寄与すると認定

立地適正化計画とは、住む場所や商業施設などを集約したい自治体が、人の住む場所や施設の立地場所を誘導する「居住誘導区域」や「都市機能誘導区域」を定める計画書です。

今回の事業認定は、鶴岡市が作成したその「立地適正化計画」における「都市機能誘導区域」内で、誘導施設にあたるホテルなどを改修する計画(民間誘導施設等整備事業計画)を民間業者が提出、国土交通大臣に認定されたものです。

居住地域や、医療・商業・交通などの都市機能を集約させることで、(分散して居住するよりも)利便性の高い暮らし方が実現できるというメリットがあります。

また、自治体の財政状況からいえば、人口減少や少子高齢化が進む中、“散らばって住む”と生活インフラの提供など行政コストがかさみます。そのため自治体としては、住民にかたまって住まわせることで効率的な住環境を整備したい思いもあります。

例えば水道事業について、人口減少を受け利用者が減る一方、インフラ更新の費用がかさみ収支が極端に悪化しています。日本政策投資銀行は、水道事業で利益を確保するには、30年後に現状の1.6倍の料金が要るとの試算をまとめています(2017年4月6日付日本経済新聞朝刊)。

国交省は今回の民間事業者による計画が、都市機能の誘導に寄与すると判断したのです。これに対して、都市再生特別措置法に基づく特例(金融支援など)や租税特別措置法・地方税法に基づく税制上の支援措置も認めています。

住むエリアを市町村が限定する立地適正化計画!家の資産価値に大きなインパクト

立地適正化計画は100近い団体が公表済み。実行に移す段階にきている

今回認定された計画は、外見上は施設の大規模修繕工事に過ぎません。

しかし、事業内容そのものよりも、コンパクトな街づくりが実際に動き出していることに大きなインパクトがあるといえます。

居住誘導区域・都市機能誘導区域・生活拠点地区(山形県鶴岡市:鶴岡市都市再興基本計画)

立地適正化計画は、2017年3月末時点で全国の93団体が立地適正化計画を作成・公表しています。

鶴岡市も持続可能でコンパクトな街づくりを推進することを目的に「鶴岡市都市再興基本計画(都市計画マスタープラン・立地適正化計画)」を策定、2017年4月1日から発効されています。その中で、上図の通り、居住誘導区域・都市機能誘導区域の範囲も定めています。

今回の認定は、定められた都市機能誘導区域において、民間事業者が実際にアクションを起こしたのです。立地適正化計画は計画に留まらず、それを実行する段階に来ているということです。

「見捨てるエリア」が策定される。住み替えに備え、資産価値の高い住宅購入を!

立地適正化計画は、住む場所やそのエリアの施設などを集約させていく目的の計画ですが、より強い言い方をすれば「見捨てる地域」を定めるものともいえます。

区域外において、一定規模以上の建築行為や開発行為を行う場合には、着手する30日前までに届け出が必要となるなど、今後、民間企業も積極的に区域「外」で開発を行うとは思わないでしょう。

そうなると、誘導区域外となったエリアでは、学校や病院、商業施設が撤退したり統廃合されるなど、利便性が大きく悪化することが予想されます。

居住誘導区域や都市機能誘導区域の外にマイホームを購入した場合には、将来の売却時に売るに売れないリスクがあります。資産価値が下落し続ける可能性があるということです。

将来の住み替えに備え、資産価値にこだわった住宅購入をしましょう。

【参考】鶴岡市は中心部から郊外へ人口が拡散。ドーナツ化を食い止め集約

2005年10月に1市4町1村が合併して誕生した山形県鶴岡市は、東北地方で最大の面積を誇る市となりました。

それから10年超が経過、人口減少や少子高齢化が一層深刻化し中心市街地の高齢化も進み、空き家の増加や郊外の過疎化が進展しています。例えば、2005年の人口143,994人から2016年には132,313人と、11年で▲11,681人(▲8%)も減少しています。

人口と高齢化の推移(山形県鶴岡市:都市再興基本計画)

また、建物の平均築年数および高齢化率マップなどからわかる通り、同心円状に新しい建物が外側に建ち並び、高齢者や(約半数の)空き家が中心部に集中している特徴があります。中心市街地の地価は20年間で半減するほどです。

平均築年数と高齢化マップ(山形県鶴岡市)

市内には大きな土地も余っていないことなどから、中心住宅地から外側の郊外に向けて人口が増加、市が発展してきた経緯があります。人口減少と高齢化により中心市街地はドーナツ化(空洞化)し、老朽化した建物が多く存在しています。

分散して人が住み、このままではますます散らばって住環境が形成されてしまうため、市としては集約の方向にもっていきたいのです。

中心部と西部・南部・北部を交通機関でつなぎ、コンパクトな都市の形成を目指す

鶴岡市は、医療機関や福祉施設の多くは市街地に集中、一方で、西部・南部・北部にはスーパーやショッピングセンターなどが集中し、拠点化が図られています。

例えば、店舗面積1,000㎡を超える大規模小売店舗は、中心市街地に少なく、郊外に分散して立地しています。

大規模小売店舗の所在地(山形県鶴岡市)

これらの特徴を生かしつつ、それぞれ既に形成されている生活拠点を公共交通機関などで結び、コンパクトシティ+ネットワークを目指すのです。

具体的には、「都市機能の集積とライフステージに応じた居住サイクルによる再編」「先端研究産業との連携による多様な住環境・賑わい機能の整備」「幹線道路と地方路線バスによるネットワーク形成と生活拠点の構築」という三本柱でコンパクトな都市形成を目指します。

将来都市構造図(山形県鶴岡市:鶴岡市都市再興基本計画)

それぞれの拠点の強みを生かしつつ、拠点と拠点を結ぶ交通機関を再編・統廃合し、持続可能な街づくりを行っていこうとしているのですね。

その裏には、拠点維持が困難な地域は事実上切り捨てるということでもあり、今後はどんな家に住むかよりも、どこに住むかがますます重要になる時代といえるでしょう。

【P.S.】失敗しない家の買い方を2時間でマスター!【大好評セミナー】

現在「家の買い方セミナー」(無料)を開催中です。

多くの方から高い評価を得ているこのセミナー。まだ家を買うかどうか決まっていない方から、既に取引を進めている方までぜひお気軽にご参加ください!

不動産屋の選び方・物件の見抜き方
物件サイトに潜むリスク・落とし穴
【実例】危険な取引/住宅購入の失敗
取引を有利に進める3つのコツ etc…

※【実績】最高評価“来て良かった!”が98%超!