太陽光発電の固定買取制度が廃止?10年後の土地活用が不透明

再生可能エネルギー普及の主役「太陽光発電」

エネルギー資源の乏しい日本。地球温暖化対策やエネルギー源の多様化に向け、さまざまな施策が打ち出されています。

その中でも、(自然界からのエネルギーを使って電力を創り出す)再生可能エネルギーを普及に国は力を入れています。

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光が届けばどこでも始めることができ、周囲に高い建物のない郊外や地方の土地の方がむしろ有利な事業という独特の特徴もあり、太陽光発電は土地の有効活用法としても注目されています。

発電した電気を電力会社に強制的に買い取らせる。多くの事業者が参入

太陽光発電を支えるのは、2012年7月1日にスタートした固定価格買取制度(フィードインタリフ制度)です。

これは、東日本大震災や原子力発電所の事故を受けて始まったものでした。

段々下がる買取価格。早く始めた人に利益が大きいフィードインタリフ制度

この制度は、太陽光発電を開始した年に応じて決まっている固定価格(1kWh当たりの価格)で、その後10年~20年間、電力会社が買い取ってくれることを保証する制度です。

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年度10kW未満(家庭用)
※余剰買取のみ
10kW以上(産業用)
※余剰買取・全量買取の選択
単独発電ダブル発電
調達期間10年間20年間
2012年度42円/kWh34円/kWh40円/kWh+税
2013年度38円/kWh31円/kWh36円/kWh+税
2014年度37円/kWh30円/kWh32円/kWh+税
2015年度33円/kWh
(出力制御義務なし)
35円/kWh
(出力制御義務あり)
27円/kWh
(出力制御義務なし)
29円/kWh
(出力制御義務あり)
29円/kWh+税
(4月1日~6月30日)
27円/kWh+税
(7月1日~)
2016年度31円/kWh
(出力制御義務なし)
33円/kWh
(出力制御義務あり)
25円/kWh
(出力制御義務なし)
27円/kWh
(出力制御義務あり)
24円/kWh+税
2018年度26円/kWh
(出力制御義務なし)
28円/kWh
(出力制御義務あり)
25円/kWh
(出力制御義務なし)
27円/kWh
(出力制御義務あり)
18円/kWh+税
2019年度24円/kWh
(出力制御義務なし)
26円/kWh
(出力制御義務あり)
24円/kWh
(出力制御義務なし)
26円/kWh
(出力制御義務あり)
14円/kWh+税

例えば10kW以上の産業用太陽光発電の場合、2012年度に開始した人は40円/kWh(税抜)でその後20年間買い取り続けてくれます。一方で、2019年度に開始した人は、14円/kWh(税抜)で20年間買い取り続けることを国が保証しています。

つまり、2019年度に開始した人は、2012年度に開始した人の約1/3しか稼げません。(もちろん、昔に設置した太陽光発電は効率も悪く設備・設置費用も高いため、単純計算に過ぎないことにご注意ください。)

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さらに、太陽光以外の再生可能エネルギーとの整合性もとらねばならず「なぜ太陽光ばかりにおカネを使うんだ!」という批判もあります。

開始当初は太陽光発電の普及に向け高値で始めたところがあり、今となってはボーナスのような買取価格です。早く始めた方が利益が多いといえる制度ですね。

太陽光発電の買取価格が大きく値下げ!売電から自家消費へ。入札方式でコスト重視

電力会社が買い取った電気は、電気消費者に転嫁。電気代が下がらない構造

発電した電力は電力会社が買い取り、火力や水力、原子力など他のエネルギー源より発電されたものとあわせて、私たちは日常で電気を利用しています。

あまり普段は意識しないかもしれませんが、電気料金の明細に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という欄があります。

悩む・困る・ご近所トラブル_sこれは、利用料に応じて私たち電気消費者がフィードインタリフ制度を支えている(太陽光発電をしてもしなくても、太陽光のためにお金を払っている)ことを示しています。

「私は太陽光によって発電された電気を使いたくない!」といっても選ぶことができません。

そして年々、この賦課金の負担がズシリと重くなってきており、電力自由化でも期待ほど電気代が下がっていないという実態があります(2018年度の電気代上乗せ額は約2.4兆円)。

長期間にわたり電気消費者に重たい負担がのしかかる

問題は、特に買取価格の高かった2012年度~2013年度あたりに導入された太陽光発電です。

個人も法人も一気に太陽光発電事業に参入し、その当時の高い固定買取価格がまだ今後も十数年(2012年開始したものでも2032年まで)続きます。

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安定的な収益を国が保証してくれ、海外より高い水準の買取価格であるなど、この制度の旨味につられて多くが参入しました。

一方で、今後じわじわと負担がのしかかってくることが予想され、そのツケは消費者に回ってくるのです。

【参考】普及促進のために認定も取りやすかった。参入業者が殺到

固定買取制度による安定的な収益が魅力であったことなどから、太陽光発電を開始する事業者が急増しました。

その意味で、再生可能エネルギーの普及は推進されたといえるでしょう。

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しかし中には国の認定を受け、電力系統への接続申し込みを行った時点で買取価格が決定していたため、そこまでの手続きを終えて放置する(発電しない)事業者も多発しました。

買い取ってもらう権利だけ押さえておき、転売や、将来ソーラーパネルや設置コストが安くなった時に発電を開始して収益を増加させようとしたのです。

国はこの事態を重くみて、これら業者の認定の取り消しを行うまでの事態になるほど、それだけオイシイ事業であったことがうかがえます。

買取期間が終わった後は買取価格10円/kWh?制度廃止??

太陽光発電事業を行っている個人・法人は、このフィードインタリフ制度が続く10年間(産業用は20年間)は強制的に売電できるため、安定収益を確保できます。

固定価格の決定は経済産業大臣が行います。調達価格(買取価格)や調達期間(何年間買い取り続けるか)は、収支の実態を中立的な調査機関の声を参考に、おおむね10年間でコストが回収できる水準の価格を決定します。

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あらためて10年間買い取ってくれるのか、それとも制度自体が廃止されることになるのか、まだ誰にもわかりません。

約10円/kWh程度まで落ちるのではないかという意見もあります。制度廃止は軽々しくはできないものですが、ただ実際に海外では廃止された例もあり、長期的には不透明な状況です。

再生可能エネルギー先進国のスペインでは買取制度が廃止に

年間電力消費のうち4割近くを再生可能エネルギーでまかなうスペインでは、2013年にはフィードインタリフ制度が廃止されました。

風量や日照量に恵まれている環境があったことなどから、太陽光発電などの急拡大に伴って、電気料金が跳ね上がったためです。

また、ドイツやイタリアでも再生可能エネルギー政策の見直しが続いています。ドイツでは、固定買取価格が約8.3円/kWh(2018年)にまで下がっています。

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環境面を度外視すれば、経済的には火力発電など既存の発電が優れており、環境面と経済面、両方のいいとこどりは極めて難しい現状があります。

最終的には電気消費者が割高なコストを負担し、発電事業者の補助をしている構図である太陽光発電。経済と環境という、現状では相反する(トレードオフの関係にある)課題と今後も長期的に付き合っていくこととなりそうです。

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