太陽光発電の買取価格が大きく値下げ!売電から自家消費へ。入札方式でコスト重視

再生可能エネルギーの買取価格が総じて下落し始めた

2016年12月13日に、経産省の有識者は2017年度以降の再生可能エネルギーの買取価格を決定しました。今後、経産省が年度内に価格を最終決定する見通しです。

太陽光発電(ソーラーパワー)の買取価格は年々下落しており、特に10kW未満のいわゆる家庭用は固定価格買取制度(フィードインタリフ制度)が始まった2012年から7年連続下落することとなりそうです。風力も初めて価格が下落(22円/kWh)しました。

年度10kW未満(家庭用)
※余剰買取のみ
10kW以上(産業用)
※余剰買取・全量買取の選択
単独発電ダブル発電
調達期間10年間20年間
2012年度42円/kWh34円/kWh40円/kWh+税
2013年度38円/kWh31円/kWh36円/kWh+税
2014年度37円/kWh30円/kWh32円/kWh+税
2015年度33円/kWh
(出力制御義務なし)
35円/kWh
(出力制御義務あり)
27円/kWh
(出力制御義務なし)
29円/kWh
(出力制御義務あり)
29円/kWh+税
(4月1日~6月30日)
27円/kWh+税
(7月1日~)
2016年度31円/kWh
(出力制御義務なし)
33円/kWh
(出力制御義務あり)
25円/kWh
(出力制御義務なし)
27円/kWh
(出力制御義務あり)
24円/kWh+税
2017年度28円/kWh
(出力制御義務なし)
30円/kWh
(出力制御義務あり)
25円/kWh
(出力制御義務なし)
27円/kWh
(出力制御義務あり)
21円/kWh+税
2018年度26円/kWh
(出力制御義務なし)
28円/kWh
(出力制御義務あり)
25円/kWh
(出力制御義務なし)
27円/kWh
(出力制御義務あり)
18円/kWh+税
2019年度24円/kWh
(出力制御義務なし)
26円/kWh
(出力制御義務あり)
24円/kWh
(出力制御義務なし)
26円/kWh
(出力制御義務あり)
14円/kWh+税

太陽光発電については、天候に左右される不安定な電力が増大することへの懸念や、景観の問題でもトラブルが起こっています。

しかし、やはり最大の懸念事項は電気料金の値上がりでしょう。

電力会社が買い取った電気は国民全体で支払う。今後も重い負担は続く

発電した電気は電力会社が買い取りますが、それは電気料金に「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という形で上乗せされ、広く一般消費者(国民)が負担しています。

「太陽光発電分の上乗せ価格を負担したくない!」といっても選ぶことができません。

つまり、買取価格が下がらないまま太陽光発電の導入が増えると、(ソーラーパワーに無関係な人も含め)国民全体の負担が増える構図です。

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年々、この賦課金の負担がズシリと重くなってきており、買取価格を下げ始めたのです。電力自由化でも期待ほど電気代が下がっていません。

固定価格買取制度(フィードインタリフ制度)は10年(10kW未満)または20年間(10kW以上)という長期の契約であり、(今後太陽光発電の買取価格が下がっても)買取価格が高かった時代に発電を開始した太陽光の負担は今後も重くのしかかるのです。

【家庭用】買取価格の決め方に変化。コスト積み上げから目標値へ

この状況に鑑み、今回の買い取り価格の決定会議では(10kW未満の家庭用ソーラー発電は)3年先まで価格案を発表している点が大きな方針転換といえます。

これまでは、来年度の価格を決めていたに過ぎず、調達価格(買取価格)や調達期間(何年間買い取り続けるか)を、経産省が通常必要となるコスト(太陽光パネル、パワーコンディショナー、架台、工事費用など)を基礎に適正な利潤などを勘案して決めていました。

つまり、太陽光発電に必要な現状のコストを積み上げて算出していたのです。

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これまで買取価格が下がってきた理由は、太陽光発電が普及する中で、設置コストやランニングコストの低減と発電効率の向上によって低コストで多くの電気を生み出すことができるようになったためです。

しかし今回は、3年先まで買取価格を示すことで「3年後にはこの価格で適正な利益が出るよう、発電効率の向上と導入コストの削減をしてください」と価格の誘導目標をたてた格好です。

太陽光が広く普及するに伴い、太陽光パネルなどの大量生産で規模の経済が働き、発電効率を向上させる研究開発も進んできたことを踏まえ、メーカーや設置業者のさらなる技術改良を促しているのです。

目標は、2019年度に現在の家庭用電気料金並みの「24円/kWh」

2019年度の家庭用(10kW未満)の買取価格は「24円/kWh」としており、これは現在の家庭用電気料金の水準と同レベルです。

震災以降、家庭向けの電気料金(電灯料金)の平均単価は約25%(2010年度約:約20円/kWh→2014年度:約25円/kWh)、工場・オフィスなどの産業向けの電気料金(電力料金)の平均単価は約40%(2010年度約:約14円/kWh→2014年度:約19円/kWh)上昇しています。

fuel_petrochemical-industrial-complex_sこれには、東日本大震災後の燃料の急騰や原子力発電所の停止、発電所の廃炉などの環境変化があり、電力会社の発電コストが上昇していることがあります。

今後の値上がりがどのようになるかは、原油価格など燃料価格、為替の影響、二酸化炭素排出抑制コスト、電力自由化など新電力との競争など複雑な要因が絡むため、正確な予想は難しいですが、大幅な値下がりは期待できないでしょう。

電力会社から買うよりお得?!「売電で稼ぐ」から「自家消費で出費抑制」へ

ソーラーパネルを設置している家庭は、まず家庭内でそれを消費し、余った電気を電力会社に売っています(余剰買取)。

なるべく家庭内では節電することで余剰電力を生み出し、高い値段で買い取ってもらうことで投資コストを回収していました。

今後は、現在の家庭用電気料金並みまで引き下げることで、新規に発生する「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を抑制して国民負担を軽減します。

solar-power-system_roof_panel_sさらに、電力会社から買う電気よりも、太陽光発電システムを導入して発電するコストの方が安くなれば、電気を自家消費しただけで得になります。

今後も石油や天然ガスなどの燃料高で電気料金が上昇し続けても、それらの値上がりに左右されなくなるのです。

そうすると、(余剰電力を生み出し)電気を売って儲けを出すというより、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)など「自家消費」する方向へ促されるでしょう。

【産業用】メガソーラー(大規模発電)には入札方式も検討!

産業用(10kW以上)の太陽光発電については、今まで通り資源エネルギー庁(経産省)などが、翌年度の買取価格のみ決定することとなっています。

大きな変更点としては、メガソーラーなど特に規模の大きい発電事業者については固定の価格ではなく、入札方式が検討されていることです。

電力会社が「これだけの量をこの価格なら買う」と入札し、それに応じる大規模発電事業者を募るということです。

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政府の方針としてはコスト重視で買取価格を決めていきたいという想いがあり、買取価格を抑制したい狙いがあります。

一方で、応札する事業者がどれほど現れるかなど不確かな部分も少なくありません。

特別償却50%または税額控除4%が可能な「生産性向上設備投資促進税制」も2017年3月末で終了し、太陽光発電投資の駆け込み需要も予想されます。引き続き、今後の動向に注目です!

【追記】

その後、政府は入札制の対象事業者は出力2,000kW以上と決定しました。さらに、2019年には500kW以上と対象事業者を広げコスト重視を徹底する姿勢を鮮明にしています。

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