急増する空き家。その中には「売れる中古マイホーム」が約50万戸も眠ってる?

賃貸用でも売却用でもない「売り(貸し)だされない空き家」が急増

空き家が増えているといわれています。総務省などの統計によれば、空き家全体の総数では2003年~2013年の間に1.2倍(659万戸 ⇒ 820万戸)となっています。

さらに長期の35年スパン(1983年~2013年)でみると実に2.5倍(330万戸 ⇒ 820万戸)にまで増えています。

空き家の種類別の空き家数の推移(1983-2013年)【出展】住宅・土地統計調査(総務省)より国交省作成

  • 賃貸用又は売却用の住宅:新築・既存を問わず、賃貸または売却のために空き家になっている住宅
  • 二次的住宅:別荘及びその他(たまに寝泊まりする人がいる住宅)
  • その他の住宅:上記の他に人が住んでいない住宅で、例えば転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など
空き家の種別ごとにその中身を見ればさらにその実態がよく分かります。

賃貸用または売却用の住宅は1.16倍に留まるのに対して、人が住んでいないのに市場にも出ていない「その他の住宅」が10年間(2003年~2013年)で1.5倍(212万戸⇒318万戸)に急増しています。

20年スパン(1993年~2013年)でみれば、2.1倍(149万戸→318万戸)にも増加している状況です。

空き家でも「市場に出せる物件」は15%もある?中古の取引件数の約3年分に相当

2013年時点を抜き出してその内訳をみると、その状況がより具体的にわかります。

まず2013年の空家の内、その半数以上は賃貸用または売却用の住宅で56%超(460万戸)を占めており、これは「市場に出ている物件」といえます。

特に問題となるのが約4割(318万戸)を占める「その他の住宅」です。これは、市場に出ずに「放置されている物件」といえます。

空き家の種類別内訳(2013年)【出展】平成25年度住宅・土地統計調査(総務省)より国交省作成

この「その他の住宅」の内、耐震性があり、かつ、腐朽・破損がなく、かつ、駅から1km以内(徒歩12.5分以内)の物件を概算すると「約48万戸」という試算になります(国交省)。眠っている中古住宅318万戸のうち、実に15%程度が市場に出せる物件といえます。

同時期の2013年の中古住宅の取引件数が約17万件ということを考えれば、実に約2.8年分のストックがすでに市場に出ずに埋もれているという計算になります。

もちろん実際には、立地やそのエリアでの需給バランスなど「実際に売れるか?」は別問題ではありますが、しかし空き家の中にも適正住宅とみられる物件が15%もあるのはもったいない状況ともいえます。

欧米に比べ中古住宅の取引が圧倒的に少ない日本。リフォーム割合も小さい

「日本は新築志向」と未だにいわれています。新築と中古を合わせた家の数に対して、中古住宅(既存住宅)が占める割合の推移は以下の通りです。

2013年の流通シェアは約「14.7%」であり、長期的に振り返ると徐々に中古の割合が多くなってきていることがわかります(2008年のリーマンショックのあおりを受け、2009年には一時的に新築着工件数が急落(中古の流通シェアは急上昇)しています)。

既存住宅流通シェアの推移(1989-2013年)【出典:住宅・土地統計調査(総務省)・住宅着工統計(国土交通省)より国交省作成

※1993年・1998年・2003年・2008年・2013年の既存住宅流通量は1~9月分を通年に換算したもの

中古住宅の流通が少しずつ増えており、買主の心理面でも国の制度面でも徐々に中古住宅にも目が向けられつつある状況になっています。

しかし、現状を切り取ってみると日本の中古流通割合はまだまだ新築の取引が根強い印象を受けます。欧米が70~90%程度が中古住宅という状況であることを考えると、欧米諸国に比べて未だに1/6~1/5と低いままです。

既存住宅流通シェアの国際比較(2013-2014年)【出展】総務省「平成25年住宅・土地統計調査」・国土交通省「住宅着工統計(平成26年計)」などより国交省作成

新築マイホームの建設費に比べて、中古住宅のリフォーム費用は3割未満に留まる

リフォーム市場に目を向けても同じことがいえます。

日本の市場規模をみてみると、上下はあるものの、おおむね7兆円程度で推移しています。中古住宅の取引が活性化すればリフォームを実施する機会も大きくなっていくことが期待されています。

住宅リフォームの市場規模(推計)の推移(1985-2015年)【出典】(財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターによる推計より国交省作成

※推計には、分譲マンションの大規模修繕等共用部分のリフォーム、賃貸住宅所有者による賃貸住宅のリフォーム、外構等のエクステリア工事は含まれない
※「広義のリフォーム」は、戸数増を伴う増築・改築工事費と、リフォーム関連の家庭用耐久消費財、インテリア商品等の購入費を加えた金額

住宅投資(新築を作るために使った費用とリフォーム費用の合計)に占めるリフォーム割合でみると「26.7%」(2015年)と推計されており、これも海外と比較すると低い水準にとどまっています。

新築を多く作ってきた日本だからこそ、修繕費用よりも新築する費用の割合が大きくなっていることは当たり前の結果ともいえます。

住宅投資に占めるリフォーム投資の割合の国際比較(日本2015年・イギリス・フランス・ドイツ2012年)【出典】国民経済計算(内閣府)・ユーロコンストラクト資料などより国交省作成

※住宅投資は、新設住宅投資とリフォーム投資の合計額

今後、欧米並みに中古住宅が当たり前に売買されるようになれば、リフォーム市場も倍以上に拡大する可能性は小さくありません。

中古住宅の購入を踏みとどまる原因は品質や性能に対する「不安」が大きい

現時点では売主側からみれば中古住宅を売り出さずに放置し、買主がからみれば新築マイホームを求めるという構図ができあがっているといえます。

「新築を好む民族性」などといわれ、中古住宅に抵抗がある理由として、半数以上の人が「新築の方が気持ちがいいから」と答えている消費者アンケート(国交省)もあります。

つまり、反対解釈すれば「中古を嫌っている」といういい方もできます。特に、品質や性能のみえない不安が多いことは国交省の独自アンケート(2016年10月実施)でもみてとれます。

それに対応しようと、2018年4月から契約前にインスペクション(建物状況調査)を当たり前に行うようになる改正宅建業法が始まっています。

また、国が基礎的な品質を認めた中古物件に対して「安心R住宅」というロゴマークを付けることができる制度が始まります。

これらは売主は自宅を売りやすく、買主も不良住宅を避けやすくなる制度といえ、50万戸も眠っている空き家を含め、中古住宅がスムースに売買される仕組みがうまく機能していくことを期待します。

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