空き家率が最悪の13.6%…どんな住宅・エリアで増えてる?その原因は?

5年ぶりに住宅土地統計調査が発表。空き家が増えている実態が浮き彫り

総務省は2019年4月26日、住宅・土地統計調査(速報値)を発表しました。

この調査結果によると、住宅総数は6,242万戸と増加を続けており、空き家数・空き家率(=空き家÷住宅総数)は共に過去最高(最悪)の「846万戸」「13.6%」となっています。

住宅総数・空き家数・空き家率ともにその伸び率自体は下がっているものの、依然として特に人口減少が続く地方エリアで空き家が増えている実態が浮き彫りになっています。子どもの数も過去最低を更新し続けています。

尚、今回の調査時期は2018年10月1日、調査対象は約22万調査区/約370万住戸・世帯に上り、調査は1948年(昭和23年)から5年ごとに実施されており今回で15回目です。

これまでの推移を含め、2018年10月時点の住宅の状況をあらためて見つめ直しましょう。

空き家数は846万戸・空き家率は13.6%と共に過去最高(最悪)を更新

空き家数(総住宅数に占める空き家の割合)は820万戸(2013年)⇒「846万戸」(2018年)と、この5年間で+26万戸(+3.2%)増加しています。

総住宅数の伸び率(+3.0%)よりも、空き家率の伸び率(+3.2%)の方が高い結果となっており、住宅の需給バランスが崩れ供給側が多くなっていることがうかがえます。

空き家数及び空き家率の推移(1963年~2018年) 【出典】総務省統計局

空き家率は13.5%(2013年)⇒「13.6%」(2018年)と+0.1ポイント上昇し、過去最高を更新しました。

平成時代だけで、+452万戸(+114.7%)の増加となっており、右肩上がりの伸びが続いています。

空き家は賃貸物件と使用目的が不明な住宅で9割超。放置される家が急増

空き家の分類(内訳)をみると、空き家が“嫌な増え方”をしていることも分かります。

空き家の内、賃貸用の住宅が431万戸と全体の半分以上(50.9%)、売却用の住宅が29万戸(3.5%)、二次的住宅が38万戸(4.5%)、その他の住宅が347万戸(41.1%)となっています。

つまり、空き家のボリュームをみると、賃貸用の住宅とその他住宅で合わせて「92%」とほとんどを占めていることが分かります。

空き家の種類別割合の推移(1978年~2018年) 【出典】総務省統計局

空き家の分類2018年10月の住宅数
(2013年比増減)
定義
賃貸用の住宅431万戸
(+2万戸・+0.4%)
賃貸のため空き家になっている住宅(新築・中古問わず)
売却用の住宅29万戸
(▲1万戸・▲4.5%)
売却のため空き家になっている住宅(新築・中古問わず)
二次的住宅38万戸
(▲3万戸・▲7.3%)
普段は人が住んでいない・たまに寝泊まりする程度の住宅

※避暑・避寒・保養などの目的で使用される別荘や、残業で遅くなった時などに寝泊まりする一時利用目的の住宅など

その他の住宅347万戸
(+29万戸・+9.1%)
上記以外の人が住んでいない住宅

※転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えなどのために取り壊し予定の住宅、空き家の区分の判断が困難な住宅など

賃貸住宅は、融資の緩みなどから特に需要の小さい地方においてもアパート・マンションが建築され過ぎるなど、供給過剰な状況にあります。

最も懸念されるのは「その他の住宅」に分類される空き家です。この中には「建て替えなどのために取り壊し予定の住宅」もあるものの、基本的には使用目的がはっきりしない住宅です。

廃墟や所有者不明の家屋も含まれており、この分類のボリュームを減らしていくことが喫緊の課題といえるでしょう。

健全な空き家は減る一方、所有者不明の家など“その他住宅”が増え続けている

増減をみても、やはり不健全な形で空き家が増えていることが分かります。

空き家が増えたのは「賃貸用の住宅」(2013年比+2万戸・+0.4%)と「その他の住宅」(同+29万戸・+9.1%)、減ったのが「売却用の住宅」(同▲1万戸・▲4.5%)と「二次的住宅」(同▲3万戸・▲7.3%)です。

賃貸物件や売却物件は、次の利用者を積極的に見つけている物件ともいえ、ある意味まだ“健全な空き家”といえます。

また、二次的住宅は年間を通じて利用される期間は短いものの、セカンドハウスとして所有者がはっきりと家を認識している点で、空き家とはいえ必要な家といえます。

やはり問題なのが「その他の住宅」です。この5年間で、将来どのように使っていくか不明な家や所有者不明の住宅が+9.1%(+29万戸)も増加しています。

著しく老朽化したまま将来誰も済まなくなる可能性が高い「潜在的な放置物件」が急増している状況であり、不健全な住宅が増えていることが分かります。

空き家率が高いのは甲信・四国地方など。低いのは人口流入が多い都市圏

空き家率の高い・低い都道府県は以下図表の通りです。

空き家率の高いエリアは、甲信地方(山梨県・長野県)や四国地方(徳島県・高知県・愛媛県・香川県)、その他和歌山県・鹿児島県・山口県・栃木県がワースト10に入っています。

人口減少が進む地方エリアで空き家が増えていることが分かります。(ただ、地方には別荘地も多く、例えば山梨県は二次的住宅(別荘など)を除けばワースト10には入りません。)

空き家率・都道府県ベース(2018年) 【出典】総務省統計局

空き家率の高い都道府県(悪い順)空き家率の低い都道府県(良い順)
No都道府県2018年2013年No都道府県2018年2013年
1山梨県21.3%22.0%1埼玉県10.2%10.9%
2和歌山県20.3%18.1%2沖縄県10.2%10.4%
3長野県19.5%19.8%3東京都10.6%11.1%
4徳島県19.4%17.5%4神奈川県10.7%11.2%
5高知県18.9%17.8%5愛知県11.2%12.3%
6鹿児島県18.9%17.0%6宮城県11.9%9.4%
7愛媛県18.1%17.5%7山形県12.0%10.7%
8香川県18.0%17.2%8千葉県12.6%12.7%
9山口県17.6%16.2%9福岡県12.7%12.7%
10栃木県17.4%16.3%10京都府12.8%13.3%

一方、空き家率の低いエリアは、関東地方(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)、沖縄県、愛知県、福岡県など、人口流入が多い都市圏(転入超過となっているエリア)と概ね一致します。

ただ、最も空き家率が低い埼玉県でも1割を超えており、空き家率のさらなる抑制が期待されます。

空き家増加の主因は住宅の増加。人口減も住宅総数は6,242万戸(+3%)

このように、空き家が“嫌な形”で増えている大きな原因は、人口減少時代にも関わらず住宅の供給が止まらないことです。

実際、(100万戸は下回っているものの)いまだに住宅着工戸数は約95万戸と、人口減少時代にも関わらず前年度+0.7%の増加をみせています。

その結果、総住宅数(住宅の数の合計)は6,063万戸(2013年)⇒「6,242万戸」(2018年)と+179万戸(+3.0%)増加しています。

総住宅数及び増加率の推移(1963年~2018年) 【出典】総務省統計局

調査が始まった1948年から右肩上がりに住宅総数は増え続けており、平成時代の30年だけでも+2,041万戸(48.6%)も増加しています。

ただ、増加率自体は2003年以降減少に転じており(単純にこのままのペースでいくと仮定すれば)2025年前後には住宅総数がマイナスに転じるとみられます。

中古住宅の取引が増えてきたとはいえ、まだまだ新築住宅の売買が盛んな日本。活用できる潜在的な中古住宅も多いことも指摘されており、建設的な需給バランス調整が求められます。

1都3県は住宅増加数の4割を占めるも、人口流入で空家率は低め。問題は郊外住宅

都道府県別でみると、東京都が最も多く767万戸(12.3%)、大阪府が468万戸(7.5%)、愛知県が348万戸(5.6%)、埼玉県が339万戸(5.4%)となっています。

増加数を地域別にみると、関東1都3県だけで+72万戸(=東京都31万戸+神奈川県15万戸+埼玉県12万戸+千葉県14万戸)と、増加数の40%(=72万戸÷179万戸)を占めます。

その背景には、都心回帰が急速に進んでいることがあります。高齢者世代も、郊外住宅から都心の駅や病院の近くなど、利便性のよいエリアへ人が集まっています。一部では、保育所や学校などが不足しているエリアもあります。

総住宅数の増減数・都道府県ベース(2013年⇒2018年) 【出典】総務省統計局

つまり、都市部は住宅総数が増えても、人が集まるため空き家率は(10%は上回るものの)全国的に見れば低い状況を維持しています。

住宅数も増加数も都心部が多い一方、問題は地方の郊外住宅です。不便なエリアで将来の使い手がいなくなったり、戸建てや(空き家が多くなった)マンションの管理が負担となり放置される住宅が少なくありません。

郊外では住宅総数が増えずとも人が減り続け、空き家が増える状況ができあがっているのです。

空き家対策も現状では成果なし。不動産取引は令和時代にどう変わる?

空き家が止まらない日本の住宅市場。国や自治体もただ傍観しているわけではありません。

不動産事業者、物件情報サイト運営事業者、NPO法人なども含め、税制改革や財政支援、空き家サービスなどさまざまな空き家対策を行っています。

例えば、空き家対策特別措置法の施行や空き家バンクの創設、古民家の有効活用、民泊活用など多くの試みなどです。

特に象徴的なのが、著しく老朽化した住宅の所有者に対して自治体が修繕や取り壊しを勧告したり解体したりできる「空き家対策特別措置法」です(2015年施行)。

勧告した物件は2018年10月までで700件を超え、取り壊しの行政代執行を行った物件は約120件あります。ただ、所有者不明で解体費用が事実上自治体負担となるなど財政面のハードルもあり、大きな成果は現状期待できません。

平成時代に残した大きな空き家という課題。これを踏まえ、令和時代には不動産取引はより一層「資産価値」を重視した家探しとなっていくでしょう。

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