10%に消費増税、影響を受ける家・非課税の家。優遇制度はどう変わる?

住宅ローン減税制度は改正されています。
本記事の内容は、一部古い内容を含む可能性があることにご注意ください。

2019年10月に消費税が10%に!不動産取引への影響や優遇制度は?

2019年10月に、消費税が8%から10%へ引き上げられることが予定されています。

これまで消費増税は、景気の減速などを理由に2度(2015年10月・2017年4月)にわたり延期されてきました。一方で、高齢社会がますます進展し財政の健全化の観点からも今度ばかりは増税が実施される見通しです。

もともと、日本の消費税は1989年に税率3%で開始され、1997年に5%、2014年に8%と増税を繰り返し、次は10%となります。

消費税は、商品価格が高くなればなるほどその額が大きくなります。特に不動産取引は、最も高価な取引の一つであり、その影響は大きなものとなります。

一方で、消費税がかからない取引や優遇制度もあります。ここではまず基本的なおさらいをしておきましょう。

消費増税で不動産価格は上がる?下がる?家を買う最適なタイミングはいつ?

【売買価格】消費税は建物部分だけ。しかも売主が課税事業者の場合のみ

消費税に関する基本的な知識を振り返りましょう。

まず、不動産を土地+建物に分けた時、消費税がかかるのは「建物部分だけ」です。土地は腐らず“消費”されないため、非課税と決まっています。消費税がかかりません。

例えば「5,160万円(内、消費税160万円)」で売り出されている物件があったとします。

この場合、土地「3,000万円(非課税)」・建物「2,000万円(税抜)」で、建物部分にのみ8%の消費税160万円(=2,000万円×8%)がかかります。

これが消費税10%になると、建物部分のみ増税され200万円(=2,000万円×10%)と「+40万円」の増税となるわけです。

個人が売主の中古住宅は消費税がかからない!新築やリノベ物件など業者物件は課税

知っておきたいのは、消費税がかかるのは「売主が業者(課税事業者)」の場合だけです。

個人の売主が中古住宅を売買するような場合には、そもそも消費税はかかりません。もちろん建物部分にもかかりません。

ですので、売買価格だけでいえば(理論的には)、個人が売主の不動産を購入する場合には消費増税の影響を受けません。

新築戸建て・新築マンション、リノベ物件は業者が売主であることが多く、消費税が課税されると考えてよいでしょう。

逆に、リノベしていない中古戸建て・中古マンションは個人が売主であることが多く、消費税がかからないことが多いといえます。

ただ、一つ一つの物件について購入を本格的に検討される場合には、不動産屋さんに「この物件は消費税がかかりますか?」と聞いて確認してみてくださいね。

【手数料】住宅ローン手数料や仲介手数料、司法書士報酬なども増税

不動産価格以外にも、家を買う時に消費増税の影響を受ける場面はあります。

例えば、住宅ローンを組む際の(銀行に支払う)融資事務手数料や、(不動産業者に払う)仲介手数料、登記に関する司法書士への報酬などです。

これらは、サービスへの対価として通常通り支払わなければなりません。不動産価格と比べると影響は少額ではありますが、仕方のないことですね。。

また、リフォーム工事を行う場合にも、消費税増税の影響を受けます。

このように、不動産取引にまつわる支出には、その多くに消費税がかかります。この点は頭に留めておきましょう。尚、各種保険料やマンションの管理費などは課税されません。

【時期】いつから増税?2019年9月末までに決済(引渡し)しないと10%

不動産売買契約をいつまでにしておかなければ、消費税が10%課税されるのでしょうか。

実は、契約ではなく引き渡し(決済)の日で判断されます。8%の消費税で契約するなら、2019年9月末までに引き渡しを終えておく必要があります。

不動産取引では、まずは契約を行い、その後に住宅ローンの本審査を行います。本審査が通って、銀行から融資を受けられる状態となり、決済(引き渡し)を行います。

契約~決済までは1カ月ほどの猶予をみておくことが望ましく、2019年9月30日までに引き渡しが行えるよう不動産会社にスケジュールを組んでもらいましょう。

2019年9月の決済は、銀行が繁忙となることも予想されます。8%の消費税で売買したい場合には、なるべく余裕をもって動くことが安全といえます。

リフォーム工事は、2019年3月末までに請負契約をしておけば8%の消費税ですむ

注文住宅やリフォーム工事などの請負工事の場合には、経過措置が認められています。

請負契約を2019年3月31日までにしておけば、たとえ実際の工事の完了が2019年10月以降に伸びたとしても特例として8%の消費税ですみます。

2019年4月以降に請負契約をしても、9月末までに工事完了(引き渡し)が終わればもちろん、8%課税です。10%課税されるのは、4月以降に契約し、工事完了(引き渡し)が10月以降となった場合ですね。

消費増税を意識した動きが加速すれば、工事依頼が殺到します。請負契約までの打ち合わせにも時間がかかったり、職人不足や天候不順などによって、通常よりも工事日程が伸びてしまうことがあるでしょう。

既に工事が決まっている場合には、なるべく早く動くことが望ましいといえます。

尚、追加工事が発生すれば、それは別工事とみなされます。追加工事の完了が10月以降となればその部分には消費税が10%課税されてしまうことに注意しましょう。

【優遇制度】すまい給付金は年収や給付金額が引き上げ!最大50万円お得

消費増税によって、新築住宅やリノベ物件など売主が業者の場合には、売買代金だけで税が数十万円高くなるケースがあります。

そのため、国としても買い控えなどによって景気を冷やさないよう、不動産取引に対する優遇制度を打ち出しています。

その一つが「すまい給付金」です。これは元々、2014年4月に消費税が8%に引き上げられた時に、一定の収入以下の人向けに作られた制度です。

消費税【8%】時消費税【10%】時
収入額の目安(※1)給付基礎額(※2)収入額の目安(※1)給付基礎額(※2)
~425万円30万円~450万円50万円
425~475万円20万円450~525万円40万円
475~510万円10万円525~600万円30万円
(※1)実際には都道府県民税の所得割額による

(※2)共有持分の場合は持分割合を乗じた金額

600~675万円20万円
675~775万円10万円

消費税8%時には、年収「510万円以下」(目安)の人が住宅ローンを組んでマイホームを購入する場合、年収に応じて最大「30万円」の給付が受けられていました。

それが消費税10%となると、給付を受けられる年収(目安)が「775万円以下」、給付額自体も最大「50万円」に引きあがります。

例えば、年収520万円の人は8%時代には給付ゼロです。それが、10%時代には40万円もの給付が受けられることになります(物件の要件など各種条件は事前にご確認ください)。

売主個人の中古住宅は給付ゼロ。現金で買う場合は50歳以上でないと給付されない

注意点として、すまい給付金制度は、消費増税の影響を緩和するためにできているということです。

ですので、個人が売主の中古住宅を購入する場合には、年収などにかかわらずすまい給付金制度を利用できません(給付額ゼロ円です)。

消費税は、売主が事業者である住宅でないとかからないためですね。

また、すまい給付金は住宅ローンを組むことを前提としています。

現金一括で購入する場合には、引き渡しを受けた年の年末時点で50歳以上、かつ、年収650万円(目安)以下でないと給付対象となりません(消費税率が10%の場合)。

年齢の問題から住宅ローンを組みずらい方は例外として、現金一括で買える資産を持っている方は給付の対象としないという考え方ですね。

住宅ローン減税制度も拡充?期間延長やローン残高の引き上げを検討開始

政府は、所得税(住民税)から住宅ローンの残債(ローン残高)に応じて減税される「住宅ローン減税制度」の拡充も検討しています。

現在の制度(消費税8%時)では、一般住宅の場合、10年間で最大400万円(=住宅ローン残高上限4,000万円×税控除率1%×10年間)の控除を受けられます。

消費税10%時の住宅ローン控除の詳細はまだ固まっていませんが、年末の与党税制改正大綱の策定に向け既に動いています。

具体的には、11月上旬にも自民党の部会は2019年度税制改正に向けた議論を本格的に始めており、期間延長やローン残高の引き上げが議論される予定です。

現在「10年で最大400万円」⇒今後「15年で最大600万円」がお得に?※追記参照

どのような形で決着するかはまだ見通せません。

その中で、与党(公明党)の西田実仁税制調査会長は11月16日、住宅ローン控除期間を現在の10年間から15年間に延長する考えを示しています(2018年11月17日付日経新聞)。

5年程度延長すると「中所得者の人が2019年10月以降に(家を)買っても安くなる」との認識を示しています。

一方で、ローン残高(現在は4,000万円が上限)や、税控除率(現在は1%)の引き上げには否定的な考えのようです。

同税制調査会長の考え通りだとすれば、最長15年間で最大600万円(=住宅ローン残高上限4,000万円×税控除率1%×15年間)の控除が受けられることになります。

※追記(2018年12月4日)

2018年12月14日、政府・与党は住宅ローン減税制度を3年間延長する方針を固め、2019年度税制改正大綱に盛り込みました(ラスト3年間の最大減税額は建物購入価格の2%)。

事実上、消費増税の影響がゼロに?新しい住宅ローン減税制度の中身は?

国は消費増税後の景気落ち込みを回避する姿勢。贈与税の非課税枠拡充も

消費増税によって影響を受ける物件の種類、契約や引き渡しのタイミング、優遇制度などをみてきました。

売買価格に影響をするのは、業者が売主の物件だけであり、個人が所有する中古住宅を購入する場合には影響を受けません(そもそも非課税です)。

一方で、住宅購入にかかわる手数料など、数万円程度の費用はいずれにしてもかかってしまいます。また、リフォーム工事を行う場合には、それに応じた消費税がかかります。

その反面、すまい給付金制度や住宅ローン控除などは拡充が予定されており、国としても買い控えや景気の落ち込みを回避する姿勢です。

その他、家の購入や新築のために親や祖父母から資金援助(贈与)を受ける場合の「贈与税の非課税枠」も拡充されます。いろいろと考えているのですね。

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