省エネ住宅の義務化が見送り?!今後、新築戸建てを買う場合の注意点とは?

2020年から予定されていた省エネ住宅の義務化を撤回する方針を固めた

2018年12月3日、国交省の部会(有識者会議)で、2020年から義務化が予定されていた「省エネ住宅の義務化」を白紙撤回する方針案が了承されました。

もともと、大規模な建築物から省エネを進め、最終的には2020年以降に新築されるすべての家は省エネ性能(断熱性)を持っている住宅のみ建築されることになっていました。

これはパリ協定など地球温暖化対策の一環とも位置付けられており、また、2010年6月の「新成長戦略」や2012年7月の「日本再生戦略」など過去には同様の方針が閣議決定されるほど重要な位置づけでした。

最近では、2016年5月13日に「2020年までに新築住宅・建築物について段階的に省エネルギー基準への適合を義務化する」と確認(閣議決定)されていました。

それが国交省の社会資本整備審議会 建築分科会 建築環境部会において、延べ床面積300㎡未満(約90.75坪未満)の小規模住宅(建築物)、つまりほとんどの新築戸建て住宅は省エネの義務化を見送るという考えで固まったのです。

これをもって、2019年1月から召集される通常国会で省エネの改正法案が提出される予定です。

【理由】事業者や行政の能力が不足し、省エネ適合住宅も6割に留まるため

見送られた主な理由は以下の表の通りです。これは、業界団体のヒアリングなどを基にまとめられたものです。

これらを基に、先の有識者会議では「2020年時点で、全ての住宅に対して大規模建築物と同様の義務化を課すことは、影響が甚大であり現実的ではない」と結論付けています。

2020年以降すべての新築住宅の省エネ義務化を見送った主な理由
  • 小規模新築住宅の省エネ基準への適合率が約6割(57~69%)と比較的低水準に留まっている
  • 省エネ基準に習熟していない中小工務店や設計事務所などが相当数存在
  • 新築件数は多いため、事業者側・審査側の両方に事務負担などが過大になる恐れ
  • 省エネ住宅化への追加コストを光熱費の低減で回収する場合、比較的長期間(14~35年)と試算
  • 省エネ住宅で、建築主個人の価値観を踏まえたデザインなどの設計自由度を狭めることを懸念
  • エネルギー消費量が住まい方・使い方に大きく依存
  • 2019年10月に消費増税であり、同時期に省エネ義務化した場合、住宅投資が冷え込む懸念

一方、床面積300㎡~2,000㎡の中規模建築物(住宅以外)は、省エネ適合率が91%(2017年度)で事業者も省エネ基準に習熟、新築件数も少なく行政の対応能力もあるなどとして、問題なしとの判断で新たに義務化されます。

つまり、小規模な住宅(戸建てなど)に限っては、義務化するとついていけないハウスメーカーや工務店、設計事務所があるため、やっぱり白紙撤回しましょうと提案しているということです。

これまで長きにわたり省エネ化について義務化することを前提として動いてきており、省エネ住宅化の工程表に従って、中小工務店・大工の省エネ施工技術修得支援(5カ年計画)も実施してきました。

それが今になって、中小工務店や行政側の対応能力がないという理由で、事実上の中止(無期限延長)を決めるという事態になっているのは少々お粗末といえる状況ですね。。

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【省エネ基準】外皮(断熱)と一次エネルギー消費量(設備)を総合判断

日本の住宅における省エネ基準は、以下の表のように変わってきました。

2020年から義務化が予定されていたのは、平成25年(2013年)に定められた改正省エネ基準(H25省エネ基準)と、その後定められたH28基準です(ここではH25基準を基に説明しています)。

基準・法律住宅性能
1979年(昭和54年)省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)施行
1980年(昭和55年)省エネ基準(旧基準)断熱等級2
1992年(平成4年)新省エネ基準断熱等級3
1999年(平成11年)次世代省エネ基準(全面的な見直し)断熱等級4
2013年(平成25年)改正省エネ基準(断熱(外皮)+一次消費エネルギーを評価)断熱等級4
2016年(平成28年)改正省エネ基準の一部改正断熱等級4
2016年(平成28年)建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)施行
建築物省エネ法のH28基準
断熱等級4
2017年4月省エネ法が廃止、建築物省エネ法に統一

この改正省エネ基準では、壁や窓など外気を仕切る部分の「外皮の熱性能」と設備機器などの「一次エネルギー消費量」の両方を計測、建物と設備機器を一体化して総合的に評価するものです。

省エネ基準の概要 【出展】住宅・建築物の省エネルギー施策の施行状況(国交省)

外皮の熱性能では、外壁・窓、屋根、床といった「建物の表面積」あたりの熱の損失量を一定の基準以下に抑えることを求めます。

一次エネルギー消費量では、冷暖房など空調設備や、換気、照明、給湯、昇降機設備などに加え、太陽光発電の創エネ量やエコキュートなどの省エネ効果も、すべて一次エネルギーに換算して評価します。

この省エネ性能を満たすためには、断熱材はもちろんのこと、ペアガラス・二重サッシ、LED照明化、ソーラーパネルの設置など多くの手段があります。

義務化予定だった省エネ基準は、断熱等級4(最高等級)相当。でも1999年レベル…

改正省エネ基準(H25基準)は、住宅性能でいえば断熱等級4(最高等級)に相当します。最高等級といえば、非常に優れた住宅と思いがちですね。

そうすると、「断熱性能で最高等級が取得できるレベルの省エネ化を、すべての新築住宅に義務化するのは確かに難しいかも…」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。

例えば、H25基準の断熱性能(外皮性能)はH11基準(次世代省エネ基準)と変わっていません。事実、H11基準(次世代省エネ基準)であっても、断熱性能は最高等級の4に相当します。

日本では未だに1999年の基準で断熱性の最高レベルの住宅性能の認可が下り、諸外国と比べても遅れているという指摘は多くあります。また、H25基準には断熱性能と密接な関係のある気密性能の基準もありません。

これからの新築住宅であれば、H25基準は当然にクリアすべき「最低基準」ともいえ、実際に大手のハウスメーカーであればほとんどこの基準を満す新築戸建てを建てています。

2020年の省エネ義務化が白紙撤回した理由として「現状で省エネ適合率が約6割」とのことでしたが、逆にいえば、現状でも過半数の新築住宅の断熱性は最高等級です。これをどう捉えるか、今一度考えたいですね。

【代替案】建築士が省エネ基準の適合可否を説明することを義務化する制度

かなり遠のいた省エネ住宅の義務化。それと引き換えに、異なるアプローチで省エネ住宅の普及を進める方針も示されています。

具体的には、今後新築住宅を建てる場合には、建築士が施主(建築主)に対し、設計段階で「省エネ基準に適合しているかどうか」の説明を義務付ける制度を創設する方針も示しています。

つまりこういうことです。中小工務店やハウスメーカーなどに負担がかかるため省エネ住宅の義務化は見送りたい。

一方で、施主(個人のお客さん)に省エネ住宅に関する説明を行うことで「ぜひ省エネ住宅を作りたい!」と心境を変化させ、お客さんから事業者への依頼を促す狙いがあります。

背景には、消費者理解の不足もあります。例えば「施主(お客さん)が省エネ性能の向上に対するメリットをどれだけ理解しているか?」というアンケートでは、約4割は理解していないという結果もあります。

住宅の省エネ性能の向上に係るメリットに対する施主の理解 【出展】リビングアメニティ協会によるアンケート(インターネット調査(回答率0.4%))

有識者会議でも、個人の建築主(施主)へ省エネ基準や快適性などのメリットを十分に理解させる必要性や、「丁寧な情報提供は消費者が納得して購入するためには非常に大事」といった意見が多く出されました。

省エネ性能は目に見えるものではなく、理解しがたいところがあります。コストが増えるネガティブなイメージだけでなく、そのメリットも含め、消費者に理解を深めてもらうのです。

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建築士から提案があれば省エネ住宅を検討したい潜在顧客は多い?丁寧な説明が課題

さらに、省エネ住宅を検討したい個人のお客さんは少なくないとのアンケート結果もあります。

国交省の補助事業により実施したアンケートでは、今後3年以内に住宅の新築・購入を検討している方の約9割以上が、住宅の建築・購入時に省エネ性能について検討したいとの意向があるようです。

約3割は住宅の省エネ性能について建築士等から具体的な提案があれば検討したいとの意向です。こういう潜在需要をきちんと掘り起こせられれば、中小工務店にとってもいい話です。

住宅の新築・購入時の省エネ性能の検討の意向 【出展】住宅性能評価・表示協会が実施(インターネット調査(新築・購入検討者3,194件))

一方で、「説明が困難」「メリットを建築主に説明できない建築士が存在する」との意見も有識者会議で出されました。

コスト増を伴う話であり、どうしても営業トークと受け取られてしまう恐れもあります。説明の趣旨が伝わらなければ「よく分からない。高い家を買わせようとしてるのか!」となりかねませんね。。

現状では、建築士の説明義務化がどれほど有効に働くかは不明です。ただ、この取り組みが成功し、お客さまとハウスメーカー双方にとっていい結果をもたらすことを期待したいです。

住宅トップランナー制度の適用事業者を拡大、小規模住宅の省エネ化を促進

建築士による施主への説明義務化とともに、省エネ性能の引き上げ施策として「トップランナー制度」の拡充もあります。

トップランナー制度とは、(H28省エネ基準よりも厳しい)トップランナー基準と呼ばれる省エネ性能の目標をクリアするよう求める制度です。

日本の住宅市場のうち、小規模の住宅は新築住宅の9割を占めますが、(年間150戸以上を共有する)大手建売事業者が供給している住宅は1割程度です。

現在は、この大手の建売事業者に対してトップランナー制度を適用しています。これを今後は対象事業者を広げることで、小規模住宅市場の5割程度を省エネ住宅化していく考えです。

すべての義務化は見送る半面、小規模住宅の5割程度をトップランナー基準でカバーするという落としどころを見出した格好ですね。

事業者間でも省エネ住宅の普及には温度差。高性能化に取り組む業者が倒産する?

前向きな制度拡充の裏で、実は事業者の中では、省エネ住宅に対してかなりの温度差もあります。

いわゆるローコストビルダーの中には、省エネ住宅の義務化がされていないことを“利用”して、性能の悪い家を建てることで価格競争力を保つ業者もいます(これが悪いわけではありません)。

しかし一方で、省エネ化含む住宅の高性能化に真摯に取り組む事業者はコスト増となり、淘汰の危機に陥る懸念も指摘されています。

最低限の省エネ性能を持つ住宅の普及のためにも、やはり国が(最低基準としてH28基準の)義務化の音頭を取って、公平な市場環境を創り出す必要があるのかもしれません。

強制的な義務化ではなく、トップランナー制度やZEH/LCCMなどで省エネを浸透

だからこそその一環として、(2020年の義務化は一旦見送る一方で)トップランナー制度など別の枠組みで省エネ化への圧力をかけていくという考えもみてとれます。

加えて、ZEH(ゼッチ:ゼロ・エネルギー住宅)、ZEB(ゼブ:ゼロ・エネルギー・ビル)、LCCM住宅(ライフサイクスカーボンマイナス住宅)など、より高性能な住宅も、供給事業者が増加し普及が進んでいます。

2030年までに建売戸建てや集合住宅を含む新築住宅の平均でZEHの実現を目指す動きもあります。

まとめると、家余りの時代、政府としては質の高い住宅ストックを普及させる方針であり、市場全体で今後も省エネ化を進めていく方向には変わりないといえるでしょう。

義務化という真正面からのアプローチではなく、異なる枠組みも使いながら、消費者や事業者に対して徐々に省エネ化の必要性を浸透させていく狙いがありそうです。

省エネ化の流れは変わらない。新築戸建てを買うなら将来の資産価値も検討

今回、後退した日本の省エネ住宅化。強制的に義務化することが必ずしもよいとは思いませんが、一方で海外比較においても日本の省エネ化は出遅れています。

先に述べたように、そもそも省エネ基準が低く、小規模住宅の適合義務もなく、性能表示も努力義務に留まるなど、まだまだ先進国と肩を並べる水準には遠い状況です。

諸外国における住宅・建築物の省エネ基準適合義務化等の状況 【出展】国土交通省

また、光熱費削減のみならず、健康増進や建物の長寿命化、温熱環境の変化、ヒートショックの予防など、省エネ住宅には有形無形のさまざまなメリットもあります。

今後、ますます省エネ性能は求められることは容易に想像できます。将来の売却を見据え、資産価値の観点からも耐震性と同様に、住環境の快適さも重要な指標となるでしょう。

今回は見送る提案がなされた一方、継続的に制度を見直ししていくことも確認されています。どこかのタイミングで義務化された時には、省エネ住宅ではない家は「既存不適格」の家となってしまいます。

そうなると資産性の観点からも、将来売りづらい家となる可能性が高いです。今後、新築戸建てを購入検討される場合には、この点からも検討し「資産価値のある家」を購入くださいね。

現状、省エネ化は買主が判断することに。今後の住まい方の変化も含め検討を!

最後に今回の件をまとめると、省エネ住宅の義務化が見送られる一方、建築士による省エネ適合可否の説明義務が創設されたということです。

つまり、今後、建売住宅や注文住宅など新築戸建てを購入しようとされる場合には、買主自身が省エネ性能を付けるかどうかを判断し、選ぶことになります。

一般的に省エネ化には(小規模住宅の売)建物価格の約4~5%程度コストがアップするといわれます。どちらを選ぶかはもちろん買主の判断ではあります。

一方で、トップランナー制度など別の枠組みで引き続き省エネ住宅の普及を進める流れは強く、将来的に省エネは必須化される可能性は小さくありません。

義務化がされなかったとしても、今後ますます社会的な関心事項となっていけば、(耐震性を多くの方が気にするように)事実上スタンダードとなっていくことも予想されます。

現状では、省エネかするかどうかを施主(買主)の判断に委ねられた格好です。今後の住まい方の変化も含め、どうか慎重に判断してくださいね。

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