不動産評価の力量は銀行によってピンキリ?!築年数によらない査定を!
銀行の考え一つで不動産購入ができなくなる。リスク評価の向上が急務
不動産取引において、銀行などの金融機関とは、マイホーム購入のための住宅ローンや収益物件の投資ローン付けでつながりを持つことになります。
銀行(または担当者)によってリスクの考え方や評価方法が異なり、なかには稚拙とも思える事例も散見されます。特に投資物件の場合には顕著です。
不動産の素人?登記簿謄本の見方もしらないビックリ支店長も
例えば、不動産登記簿謄本の読み方をしらず、そこに記載されている金額を不動産価格と思い込んで「なぜ今回購入される不動産はこんなに値上がりしているのですか」と言われ耳を疑ったこともあります。
現在の不動産市況における期待利回りも理解せず「表面利回り2%程度取れれば預金するよりお客様にとってお得ですよね」と、リスク・リターンの概念を度外視した発言を当然のようにおっしゃる方もいました。
「中古の投資収益物件ではなく、ハウスメーカーが建てた新築物件しか価値がありませんよ。不動産屋に騙されているんではないですか」と言われた投資家様もいらっしゃいます。事業計画書を作成してもその数値の意味も読み取れないのです。
これらは一例にすぎませんし、これが金融機関の実態を代表しているわけでは決してありません。ただ事実としてこのような状況はあるということです。
尚、上記すべて地銀の支店長クラスの発言です。怒りを通り越して心配になってきます。
西武信金は中古住宅を積極評価。築年数に依存しない評価手法へ
もちろん前向きな銀行やリスク評価、不動産の資産価値をしっかり選別しようとする金融機関もあります。
上記の例は一部の例外ととらえたいものです。事実、すべて他の理解ある銀行で融資付けはできています。
不動産評価を積極的に行う金融機関として、例えば以下のように、西武信用金庫は物件の現況を精査します。
法定耐用年数(築年数)によらない不動産評価を数年前から既に打ち出しているのです。
中古物件を安心して購入するために「建物の寿命を実質年数で見ていくべきだ」
2年以上さかのぼって、2014年7月9日には「持続可能な街づくりシンポジウム」(西武信金主催)においてて、参加パネリストの多くが中古不動産物件に対するファイナンスの問題を指摘しました。
これに対し、西武信金の落合寛司理事長は「鉄筋では50年、木造なら25年以上の物件にはローンを出さないという、融資期間の問題を解決しなければ、中古物件が安心でも購入ができません。そこで西武信用金庫では、建物の寿命を実質年数で見ていくべきだと考えました」と応じています。
西武信金ではリノベーションやリフォームによって創出された価値を算定し融資を行う専用ローンを、業界に先駆けて開発・販売しています。実際に最近もその動きを加速させており、金融機関の中でも(いい意味での)異端児であり、その評価も高まっています。
加えて、このシンポジウムにおいて東京都不動産鑑定士協会の小國敏雄理事は「基本的に、建物の耐用年数について日本で採用されているのは税法上の規定ですが、これを必ず採用しなければならないという決まりもなく、そのような要請もありません」と指摘しています。
その上で、リフォーム済み売買事例を参考に求めた試算価格から、リフォーム済み対象物件の鑑定評価額を算定する私案を提唱し、スクラップ・アンド・ビルド(壊しては作る)からストック・アンド・ディベロップ(いいモノを改善して長く使う)への移行を訴えています。
米国に後れを取る日本の不動産市場。評価法を考え直す時期
日本の銀行の住宅評価は、築年数などわかりやすい指標を用いることに未だ固執しています。「一戸建て住宅は土地評価額」と明記するメガバンクもあります。
一方で、米国の不動産鑑定においてはリフォームの有無を資産価値に反映させ、浴槽や寝室の数など内装も具体的にみて細やかに、かつ積極的に住宅価格や担保能力を算定します。
日本は不動産市場全体の含み損が▲500兆円以上?!
これまで日本が不動産市場に投下したおカネは約900兆円に対して、現在の価値は350兆円程度、その差約▲550兆円は日本の不動産が失った価格(含み損)なのです。
木造の場合に法定耐用年数22年を経過したら一律に建物評価額をゼロと評価する日本の不動産ではこうなってしまうのです。
一方でアメリカは投資額に対して現在の住宅価値はそれを上回ります。
銀行のみならず私たち自身も住宅を資産とみなし、リフォームした分、価値を積極的に見出す評価をしていき、良質な中古住宅をそれに応じた値付けをしていく必要があると考えます。
住宅施策が「量(戸数)」から「質」、「フロー(壊しては新築)」から「ストック(既存住宅を長く使う)」へと変化する中、国交省も進める「良い住宅をメンテナンスしながら長く使う」社会の実現に向け、実態に見合った不動産の評価がなされることを切に願います。
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