住宅着工件数が減ってもなぜ空き家が増える?「再建築率」が過去最低に
目次
「再建築率」とは建物を壊して建て直した住宅の割合。国交省が毎年公表
2016年3月、国土交通省は2014年度の「住宅着工統計による再建築状況の概要」を発表しています。
結論からいうと、住宅を取り壊さずに建てる、取り壊して建てる場合でも元より多くの住戸を作る、しかも貸家(賃貸アパート・マンション)が急増している状況が浮き彫りになったのです。そして、その傾向は2015年度の再建築状況でも継続しています。
住宅の再建築とは、「既存の住宅の全部または一部を除却し、引き続き当該敷地内において住宅を着工すること」と定義されています。つまり、既に建ってある住宅を壊して、同じ敷地に新たに居住用の建物を新築したことを指します。
「再建築率」とは、その年に新設された住宅着工戸数に対して、再建築された戸数の割合をいいます(尚、事務所や工場などの住宅以外の建物を壊して新築した住宅や、住宅を取り壊してもすぐに着工されない住宅はこの統計から除外されていますのでご注意ください)。
つまり、新築された建物の内、どれだけが建物を取り壊して建て直したのかを表します。その割合が2014年度に過去最低となったのです。
再建築率は右肩下がりで過去最低水準に。余った土地に住宅を建築している
再建築率は年々下落していることがわかります。
つまり、住宅を建てる場合、すでに中古住宅が建っている場所はそのままにしておき、余っている土地に建設しているのです。
具体的には、2013年度は10.5%だった再建築率が2014年度には9.1%にまで下落しています。10軒に9軒以上が余っている土地を使っているのです。
地域別では、2014年度は首都圏が12.1%(2013年度は13.6%)、中部圏が9.4%(同10.7%)、近畿圏は6.7%(同8.2%)と(土地の余っていない)首都圏ほど住宅のスクラップ&ビルドがなされている状況です。
地域 | 新設住宅着工戸数 (戸) | 再建築後 (戸) | 再建築率 ( )は前年度 |
---|---|---|---|
首都圏 | 309,191 | 37,427 | 12.1%(13.6%) |
中部圏 | 99,112 | 9,288 | 9.4%(10.7%) |
近畿圏 | 133,118 | 8,974 | 6.7%(8.2%) |
その他 | 339,049 | 24,012 | 7.1%(8.6%) |
全国 | 880,470 | 79,701 | 9.1%(10.5%) |
取り壊す前より、再建築された後の住戸が多い。世帯数減少が一因
建て直された住戸に絞ってみても、住戸が増えていることが分かります。
2014年度に、再建築するために取り壊された(除却された)住宅戸数は「約5.9万戸」、その跡地に再建築された住戸は「約8.0万戸」と1.35倍に増加しているのです。
住宅の種類 | 再建築前 (戸) | 再建築後 (戸) | 倍率 |
---|---|---|---|
持家(分譲住宅を含む) | 42,266 | 37,088 | 0.88倍 |
貸家(賃貸戸建て・アパート・マンション) | 15,717 | 38,914 | 2.48倍 |
給与住宅(社宅・官舎など) | 918 | 675 | 0.74倍 |
合計 | 58,901 | 79,701 | 1.35倍 |
同じ敷地に住宅を建て替える際、マンションやアパートなどの戸数(家の数)が2万戸以上も多くなっていることがわかります。世帯の平均人数が減少し、小さな部屋が求められていることが一因でしょう。
また、再建築された住宅の内訳をみると、持家が約0.9倍、貸家が約2.5倍、(社宅などの)給与住宅が0.7倍と賃貸住宅が突出して多くなっていることもわかります。
地域 | 再建築前 (戸) | 再建築後 (戸) | 倍率 |
---|---|---|---|
首都圏 | 23,361 | 37,427 | 1.60倍 |
中部圏 | 8,300 | 9,288 | 1.12倍 |
近畿圏 | 7,284 | 8,974 | 1.23倍 |
その他 | 19,956 | 24,012 | 1.20倍 |
合計 | 58,901 | 79,701 | 1.35倍 |
地域別では、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)が1.6倍、中部圏(愛知県・静岡県・三重県・岐阜県)が1.1倍、近畿圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県)やその他地域が1.2倍と、首都圏に住戸が偏っていることがわかります。
既存建物を壊さないと空き家が増える。国や自治体も住宅の増加を抑制へ
再建築率が低いということは、古い建物をそのままにして、余った土地に新たな住宅を建てていることを意味します。
「住宅着工件数は今後100万件に戻ることはない」といわれている一方で、それ以上に再建築率が下がってしまえばどうなるでしょうか。
結局、古い住宅が残ったまま新しい建物が増え、住宅の総数は増え続けることになります。これは空き家が増加する原因にもなってしまうのです。
そこで、国も住宅施策を「量(戸数)」から「質」、「フロー(壊しては新築)」から「ストック(既存住宅を長く使う)」へと変化させつつ、質の悪い中古住宅は取り壊す方向へ舵を切っています。
【追記】2018年10月時点で、空き家数「846万戸」空き家率「13.6%」と共に過去最高を更新しました。
「住宅ストック循環支援事業」も「立地適正化計画」も住宅の数を抑える施策?!
例えば耐震性がないことをわざわざ確認した上で、それを取り壊してエコ住宅を建てた場合に補助金を出す「住宅ストック循環支援事業」。
これは良質なマイホームだけを残すことで住宅の新陳代謝を促すことを志向しています。
一部の自治体も「立地適正化計画」において、人が住む場所を誘導することを目的に「居住誘導区域」を定め、「土地が余っているからといってどんどん新築しないでくださいね」とメッセージを発信しています。
いずれも、住宅の数を抑えにかかっている政策と考えることができます。
良質な中古住宅は残しつつ新たに建物を建てる場合には劣化した物件を取り壊す、または、将来も人が住む(需要が見込める)場所に新築物件を限定することで使い道のある建物を残そうとしているのです。
再建築率は2015年度のデータが今年発表される予定です。今後も継続的に注目していきましょう!
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