上場株式の相続税評価は変わらず100%時価評価。物納では軟化

政府与党は、株式の相続税評価引き下げを拒否。物納順位の上昇で妥協

政府・与党は、上場株式の相続税評価を90%まで引き下げて欲しいという金融庁の要望を、2017年度税制改革で見送る方針のようです。

ダメ・NO・男性_s金融庁は昨年度の税制改革で、時価の70%程度まで株式評価額を引き下げる要望を出していましたが、それも与党の税制調査会は見送った過去があります。

今回は「70%までは無理でもせめて90%の評価額に抑えてくれないか」と金融庁が要望を再提出したものでしたが、その妥協案に対しても政府はNOを突き付けた格好となりました。

時価評価の原則は変えなかったも、政府・与党は株式の物納順位を引き上げ

金融庁の要望にゼロ回答というわけではなく、相続時に株式を時価で物納できる順位は引き上げることで、株式での納税をしやすくする模様です。

相続税は原則金銭で支払います。それが困難な場合には分割支払い(延納)が認められる場合がありますが、さらにそれでも難しい理由がある場合はモノで納めることが認められています。

ranking_rank-order_first_sその際、モノに順位が付けられており、国債や地方債、不動産などが第一順位でありこれらを持っている場合は優先的にそれによって物納しなければなりません。

株式は社債と同じく第二順位でしたが、この株式の順位を第一順位に繰り上げて株式を相続に使いやすくするという歩み寄りを政府・与党がみせたわけですね。

「貯蓄から投資へ」の流れを加速したい金融庁。不動産だけ優遇?

金融庁が相続時の株式評価額を引き下げたい要望の裏には、「不動産が相続税評価額で優遇されているから、みんな物件を買ったり建物を建てたりして、家計の貯蓄が株式などの金融分野に流れていない」という想いがあります。

相続資産として、被相続人が不動産を保有していると、実際の価格より50~80%程度に割り引いて評価されるため、相続税が少なく済みます。

real-estate_appraise_valuation_sこれは、相続発生から10カ月後の相続税納付期限までに不動産価格が下落するリスクを織り込んでいるためであるといわれます。

また、路線価の評価が年に1回しかないので経済状況を適切に反映しておらず、評価の基準となる路線価が割高になっている可能性を踏まえて安く設定しているなどともいわれ、複数の理由がささやかれています。

一方で、株式は相続日の時価(取引所終値)をそのまま100%で評価するため、相続税が株式への投資を拒んでいるとみているのです。

【賛成派】株式の相続税評価額を割り引けば株式市場が盛り上がる?

金融庁は、資産形態に関わらず、相続発生から資産譲渡・納税まで時間がかかり価格変動するリスクには変わりないのに、不動産だけそれを考慮するのは優遇だと指摘しているのです。

stock-market_exchange_smart-phone_s例えば、相続税額を小さくしようと、保有していた株式をすべて売り払って(相続税評価額が小さくなる)不動産を購入することも行われているのです。

逆に、株式の評価額も不動産と同様に割引されれば、不動産を買うのではなく株式を買うインセンティブが生まれ、株式市場におカネが流れ込むと考えています。

【反対派】売買が容易な株式は過度な節税を誘発?富裕層優遇との批判も

一方で、被相続人が死亡する直前に現金を株式に変えることで租税回避を生む懸念があるとしたのが政府・与党です。政府としては税収を落ち込むことをやはり嫌うのです。

確かに、不動産は基本的には長期的に付き合っていく資産であるのに対し、株式はすぐに購入・換金ができます。売買コストも証券会社に支払う手数料などは、不動産取引時に仲介業者に払う手数料とは比べ物にならないくらい安価です。

%e6%87%b8%e5%bf%b5%e3%83%bb%e6%82%a9%e3%82%80%e3%83%bb%e8%80%83%e3%81%88%e3%82%8b_sそして不動産のように5年以内に売却した場合に税率が高くなる短期譲渡税もありません。相続税の租税回避の為だけに、上場株式の短期売買を実施したとみなされる取引が横行することは容易に想像できます。

また、(日本の評価制度では緩やかに価値が下落しやすい)不動産と比べて、株は下落も上昇もしやすい性質があり、納税時点で株価が上がった人は益税が発生しているのだから価格下落リスクだけ織り込むのは不公平だという声もあります。

さらに、大量に株式を保有する富裕層を優遇するものだ、との批判もあるようです。

変化する税制に振り回されず、長い目でみて堅実な投資を!

毎年、税制改正が実施されています。税というのは多くの利害関係がぶつかり、政治色が強いもので、業界団体や各省庁の要望を基に、与党が「大綱」を策定して翌年の通常国会に提出、改正法案の成立を目指します。

今回は上場株式評価は据え置き(100%評価)ということとなりましたが、だからといって「だったら不動産投資しよう」という短絡的な話でもありません。

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不動産は現行の評価制度において大きく上昇することはない(緩やかに下落する)と考えられているからこそ、評価割引がなされているともいえます。お得な分、リスクがあるともいえるのです。

一次的な目先の利益を追求するのではなく、長きにわたり不動産運用をして投資回収をしなければならないことをしっかり意識して健全に資産形成してください!

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