【回答】Re: このニュースには誤解が…|安心R住宅における専任媒介契約の問題

モグさんが「安心R住宅」の記事へ貴重なご意見。ありがとうございます!

先日、『「安心R住宅」が一転、売主に不利な制度へ。事実上、専任媒介を強制』という記事を執筆しました。

これについて、「夢のマイホームを悪夢にしないために!」というブログを運営されていらっしゃる「モグさん」が「違和感を感じました」とのコメントを公開されています(教えてくださったSさん、ありがとうございました)。

コメントを拝見すると、ありたい不動産取引の姿は同じですが、考え方(アプローチ)が少し違うのかもしれないと感じました。違った言葉でいえば、性善説と性悪説に立つかといった違いかもしれません。

せっかくの機会ですので、少し丁寧にお話させていただければと思います。

尚、こういったコメントを発信いただいたモグさんにまずは深謝申し上げます。ありがとうございます!

安心R住宅を使いたい売主は、不動産会社と専任媒介を結ぶことが必須

私の書いた記事原文の趣旨の要点をあらためてご説明すると、以下の通りです。

  • 安心R住宅」制度を使う場合には、売主は不動産仲介業者と専任媒介契約を結ぶことが必須(一般媒介契約を使いたい売主は「安心R住宅」を使えない)
  • 専任媒介契約に限定する合理的な理由も見当たらない(国交省に問い合わせても「買主が混乱する」といった説明しかない)
  • 安心R住宅は育てていく制度。実際の運用を見て、今後は一般媒介でも可能となる可能性はある
通常、売主が自宅を売りたいと思った場合には、不動産会社(仲介業者)と「媒介契約」というものを結びます。この媒介契約は、大きく①一般媒介と②(専属)専任媒介の2種類に分かれます。

一般媒介契約の場合には、複数の不動産屋に売却依頼を依頼を出すことができ、競争を促すことができます。

一方で、専任媒介は1社に限定して依頼する方法で、その分、不動産屋さんも一生懸命売却活動をしてくれることが期待できます。

いずれにせよ、売主はこの2種類の売却依頼の仕方があるのです。

それなのに「安心R住宅」として売り出す場合には、一つの方法に限定するという一方的な国交省の考え方に疑問を呈したのが記事の趣旨です。

売主に選択肢を!納得した上で専任媒介契約を結ぶ場合にはなんら問題がない

単純に考えて2つの選択肢があるのと、1つの選択肢しか与えられないのとでは明らかに後者の方が不利になるということです。

しかも専任媒介契約は、囲い込み」という不動産業界の大きな問題の温床(キッカケ)となりかねない契約方法です。

一般媒介契約は専任媒介契約よりも、売主と不動産屋の間の取り決めが少ない(制限が緩い)契約方法です。言い換えれば、専任媒介契約は不動産屋と売主の距離がとても近い契約(お互いを縛る契約)です。

一般媒介契約という緩い契約を結びながら、それにプラスして制約をつけることもできます。まずは売主に選択肢を与え、納得する方だけが専任契約を結ぶというのが正しい姿勢ではないでしょうか。

なにも専任契約までの制限を強制的に課すのでは、売主が戸惑ってしまうのではないか、ということをお伝えしたものでした。

一般媒介は不動産屋同士の競争が働く。義務付なくてもREINS登録が期待

モグさんのお考えでは、専任媒介よりも一般媒介の方が危険性があるというお考えです。ここに少し考え方の違いがあるのかなと思いました。

専任媒介契約を結ぶと、その不動産を「指定流通機構(レインズ)」に登録せねばなりません。
合わせて、2週間に1回以上の文書での報告もせねばなりません。

…(中略)…

媒介手数料の両手が欲しければ、レインズへの登録は避けたいと考えます。
一般媒介契約では情報を公開しないで、自社のお客さんにだけ売ることは可能です。
その方が秘密裏に売買相手を探すことができる事に。

確かに、一般媒介の場合にはREINSへの登録義務や業務報告義務はありません。そうすると、REINSに登録しないことで両手仲介を実現することは「理論上は」可能です。

ただ、「実際に」囲い込みが可能になるのは、元付業者(売主から売却依頼を受けた不動産屋)が一社の場合、つまり専任媒介のケースです。

一般媒介ならREINS登録や報告義務がなくても、自発的にREINS登録や状況報告が期待できるのが実態です。なぜなら一般媒介は売主が複数の不動産屋に依頼するため、不動産会社同士、競争原理が働くからです。

むしろ、(専属)専任媒介契約は、売主は依頼した不動産会社以外の不動産屋さんを通じて売却できないというかなり強い制約が課されます。

だからこそ、専任の場合には依頼を受けた不動産屋が「売主はうちしか頼れない」と殿様商売にならないよう、あえて登録や報告といった基本的な行為を義務付けているに過ぎません。

どうして一般媒介契約なら、不動産屋はREINS登録や報告を自発的にするの?

もう少し丁寧に説明します。売主と一般媒介を結んだ不動産会社は、「この売主さんは、うちだけでなく、他の仲介業者とも売却依頼を結んでいる(結ぶ可能性がある)んだな」と考えます。

そうすると、自社だけREINSに登録しないとしても、他社がREINSに登録する可能性は大きいのです。ゲーム理論でいうところの「囚人のジレンマ」問題に近い状況かもしれませんね。

さらに言えば、一般媒介はREINSに登録する義務はありませんが、登録してもいいのです。売主から「御社と一般媒介を結ぶ代わりに、REINSには登録してくださいね」といわれれば登録せざるを得ません。

業務の処理状況報告についても、一般媒介では義務ではありませんが、これも同様に「他の不動産会社よりも頑張っていることを見せて、うちを通じて売却してもらおう」と思うものです。

なにより、売主から定期的に連絡して「今週はどんな感じでした?」と聞けば報告を受けることができます。

結局、一般媒介では他の不動産屋がREINSに登録する動機付けが強く、秘密裏に売買相手を探しにくいのですね。

専任媒介のREINS登録や報告義務。業者全てが法律を守るなら売主も安心

モグさんは、専任媒介であればREINS登録が必須であるため、購入申し込みが入る可能性が高まることもご指摘されています。

「安心R住宅」は物件の囲い込みを不動産業者が行わないように、レインズへの登録を義務付けるために専任媒介を必須にしたとみるべきです。
「買主をみつけた客付業者からの問い合わせに対して「既に申し込みが入っています」と伝え、自社で買主を見つけることにこだわる」事はできず、報告の義務が発生しますので、これはすでに違法です。
レインズで、情報が公開されれば、よその不動産業者から買い付けの可能性が増すことになります。
そして、その情報は売主に必ず伝えなければなりません。
売主は、片手とか、両手とかには興味が無いので、早く買ってくれる等の条件のいいところと契約したい訳なので、専任媒介業者は両手を得れない可能性が増えますよね。

この点、モグさんのおっしゃる通りだと思います。ただ、前提として不動産会社が法律を守るなら…という条件付きなのです。

社会問題となっている「囲い込み」は、(専属)専任媒介契約を結び、自社を通じてのみ売却できるという状況をまず初めに作ります。

そしてREINSに登録しますがそれに対する問い合わせに対しては「現在、他の申し込みがすでに入っておりまして…」と断るという手法を取り自社で買主を見つける時間を稼いでいます。

もちろん売主に対して正直に申告もしません。買付の申し込みが入ったとしても、それを不動産屋(元付仲介)が握りつぶすしている実態があるのです。

不動産取引の現場で横行する囲い込み。違法であることとそれが行われないことは別

モグさんがご指摘される通り、もちろんこれらは違法行為です。

他の業者からの問い合わせに対して虚偽の説明をし、さらに売主への「報告の義務」があることを知りながら伝えないのです。本当に残念なことですが、違法であることと、それが行われていないことは同じではないのですね。

そもそもすべての不動産業者が法律を遵守していれば、「囲い込み」という問題は起こりません。性善説に立てば、囲い込みの問題は存在しないのです…(本当はそうであって欲しいですよね)。

仕組みがあることとそれがうまく機能していることは別なのですね。極めて残念なことですが、不動産取引の現場では少なからず違法行為が行われている実態があるのです。

そして、この違法行為である「囲い込み」を外から客観的に立証するのは難しいという点もこの問題をさらにややこしくしています。

だからこそ、国交省も専任媒介契約を結んだ物件であれば、個人の売主が自ら「REINSに登録したかどうか?」を確認できる仕組みを導入したりと少しずつ改善していこうとしています。

一般媒介が正しいわけではない!売主に選択肢を残すことが不利益防止に

私の記事では一般媒介が正しいと言いたいわけでは決してありません。

一般媒介と(専属)専任媒介、どちららにもメリット・デメリットがあり、状況に応じて使い分けるのがよいと考えます。

ここでは、どちらがいいとか悪いとかという議論を置いておいて、それを選択するのは売主の判断を委ねるのが良いのではないかということです。

国が無理やり専任媒介を売主に強要して、一つの選択肢しか残さないのは不利益であると考えているものです。

記事の原文でも指摘しましたが、国交省としても実態を見ながら運用を見直す方針です。今後の改善に期待しましょう。

最後に、あらためてモグさんのご指摘に感謝申し上げます。ありがとうございます。さらなるご指摘やご意見などありましたらまた一緒に考えたいですので、ぜひお声がけください!⇒お問い合わせ窓口

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