おとり物件がなくなる?ポータルサイトが広告掲載を拒否!
それでも増えるおとり広告。ポータルサイト各社が悪質業者を締め出し
実際には取引できないにも関わらず、極めて好条件の不動産広告を打ち出しお客様からの問い合わせを誘う「おとり広告」。
古くからあるこの由々しき問題がインターネットの普及とともに急増、社会問題となっています。
そんな中、物件ポータルサイトの大手5社である「at home」「CHINTAI」「HOME’S」「マイナビ賃貸」「SUUMO」は2012年3月に「ポータルサイト広告適正化部会」を発足、広告表示の適正化に乗り出しています。
その一環として2014年4月からは違反物件情報を共有し、上記5つのポータルサイトから違反広告を削除するなどの対応をしてきました。
不動産公取協によると、2014年度に共有された全国の違反物件数は2,184件、2015年度は3,619件にのぼり、それらは速やかに削除されています。
しかしそれでも増加の一途をたどるおとり広告。いたちごっこが続くこの状況に業を煮やし、ここにきて対応強化策を矢継ぎ早に打ち出しているのです。
インターネット広告比率が急増。悪質業者の生命線を絶つ
もともと、ポータルサイト運営5社は自主規制団体「公益社団法人 首都圏不動産公正取引協議会(不動産公取協)」の会員でもあり、おとり広告対策を継続して実施してきました。
そして今月からは、違反物件のみならず違反広告を繰り返す「不動産事業者の情報」も共有、来月からは特に悪質な事業者に対して、主要5社のポータルサイトに1カ月以上すべての広告を掲載できなくするという強い措置を講じます。
規制対象は、不動産公取協に所属する5万社超の関東甲信越10都県の宅建業者です。違反広告の多くは首都圏と近畿圏に集中しており、まずは首都圏から取り組みを開始させた格好です。
業界団体の不動産公取協が過去5カ年度(2011~2015年度)で、最も重い「厳重警告かつ違約金課徴」の措置を講じた件数は平均49件、そのうちインターネット広告による違反は75%→88.6%→89.7%→93.5%→93.9%と年々その比率が高まっています。
また、2015年度は違反広告の事案に対し何らかの処置を行った件数が過去4年度の平均196件(208件→198件→202件→176件)に対して、その約2倍の380件に急増しています。違反事業者数は883社と、1社で複数回おとり広告を出している実態があります。
今回の規制強化は、物件広告の生命線ともいえるポータルサイト掲載を遮断することで、おとり広告を撲滅しようと動き出したのです。
消費者庁による取り締まり件数はわずか。立証の難しさなどがハードル
そもそも、おとり広告は宅建業法や景品表示法などに違反し、業界団体によらずとも罰金や(悪質な場合には)刑事罰が規定されています。
しかし、2016年3月に実施された消費者問題に関する特別委員会において、その有効性に疑問が投げかけられました。
具体的には、政府参考人として出席した消費者庁の審議官は「平成21年(2009年)の消費者庁発足以降、消費者庁が不動産おとり広告に関しまして措置命令を行ったものというものはございません」と述べています。
行政指導さえ、年に0~2件にとどまっており、事実上の機能不全に陥っているといえるでしょう。
不動産業者の数が多く、また、おとり広告の立証が難しいことなどから効率的に違反業者を取り締まれていないのが実態なのです。
おとり物件が横行し、放置されている現状が浮き彫りに
井坂信彦衆議院議員(民進党)からは厳しい指摘が繰り広げられました。
「こんなに堂々と道端やあるいはネット上に横行して放置されているということは、これは余り続くと、最後、消費者庁というのは一体何なんだと。…(中略)…不動産というのはそんなものだみたいに思っている人も多いと思いますよ」
存在意義を問われた消費者庁はこの事態を重く受け止め、翌月には不動産公正取引協議会連合会に対しおとり広告の取り締まり強化を要請、これが冒頭の規制強化につながったのです。
本当に残念なことですが、この経緯が示すことは公的な取り締まりが難しいこと、そしてまだまだおとり広告は根強く存在しそれらが放置されているという事実です。
物件の内覧(内見)を頑なに拒んだり現地待ち合わせを嫌がったりするなど、少しでもおかしいなと思えば遠慮なく不動産業者に説明を求めましょう。
そして、納得がいかなければ毅然とした態度で取引を断ることをおすすめします。
消費者を軽んじる業者は淘汰される時代。物件売りからサービスへ
おとり広告は、架空の物件や、物件は存在する場合でも取引できないもの・取引する意思がないものを掲載することで消費者の気を引こうとします。
逆にいえば、おとり広告を出す業者は(嘘の)物件情報しか差別化するものがないのです。
一昔前のように、業者と消費者の間にあった情報格差で商売する「モノ(物件)売り」の時代は終わり、不動産業界もサービスで差をつける時代になっています。
物件広告からは読み取れない情報の提供や、きめ細やかなサービス提供へと移っているのです。
例えば、不動産屋やそこに在籍する営業担当の力量によって、貸主・売主側との条件交渉の結果も変わるでしょう。
不動産(物件)より不動産“屋”、そして不動産屋からエージェント(個人)の力が問われるようになっているのです。あなたが信頼できる不動産会社を通じて取引するように心がけましょう。
物件の真偽を明らかにするサービスも。三位一体の健全な環境の醸成に期待!
相場情報を提供する会社も複数あり、あまりにも安い物件は理由が問われるようになるでしょう。
空室状況を簡単に問い合わせられる「アキベヤ」(株式会社アパハウ)も9月に開始されました。同社によると、予想を上回るペースで会員登録がなされており、消費者の関心の高さがうかがえます。
このように、消費者自身が広告の真偽を見抜いていく環境も整えられており、おとり広告に頼る会社は遅かれ早かれ淘汰されていくでしょう。
一部の業者が行う悪質な行為によって「不動産業界はこんなものだ」と一括りにされ、疑心暗鬼の中で不動産取引が行われるのは消費者にとっても好ましくありません。
不動産公取協やポータルサイト「HOME’S」も通報の専用窓口を設けています。業界、ポータルサイト、消費者が一体となって、クリーンで健全な不動産取引の環境を醸成し、近い将来「おとり広告」が死語となる時代が来ることを強く望みます。
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