意外と知らない重要事項説明。家を買う前にチェックしたいポイントは?

売買契約の前に、分かりづらい「重要事項説明」。そのポイントは?

こんにちは。宅地建物取引士の斉藤です。

家を買う前には、売主さんと買主さんとの間で売買契約書を取り交わします。さあ契約!と行きたいのですが、実はその前に「重要事項説明」という大事なイベントがあります。

重要事項説明書(重説)は、いわば「不動産取り扱い説明書」のようなものです。購入しようとしているマイホームについて、宅地建物取引士という不動産取引の専門家が、大切なポイントを説明します。

名前の通りとても重要な書面です。買主が納得して購入することができるよう最終の確認作業とも言うべきもので、しっかりと聞きたいものです。

ただ、これがとにかく専門的でわかりにくい!

ここでは、重要事項説明書には一体どんなことが書いてあるのか?実際に説明を受ける時にはどんなことに気を付ければよいのか?といったことについて、ザクっとしたイメージをお伝えします。

仲介する不動産屋や、説明をする宅建士の情報が載っています

まず初めのページに、売主や買主が誰か?という情報と共に、仲介業者(不動産屋)の情報が記載されています。例えば、会社名や代表者名、免許番号などです。

重要事項説明は、売主と買主の間に入る仲介会社が責任を持って行うものです。誰(どの不動産会社)が間に入った取引であるか明示しているのですね。

また、誰が重要事項を説明するかも明記されています。「説明をする宅地建物取引士」として、氏名や免許の登録番号、業務している事務所名が書かれてあるので確認しておきましょう。

尚、不動産業者は免許を取得しています。免許番号は「国土交通大臣(3)第12345号」などと書かれています。このカッコ内の数字(ここでいえば(3))の意味は、不動産会社の免許更新回数です。

免許は5年ごとの更新ですので(3)なら、10年から15年間、不動産業(宅建業)を営んでいるということになります。

不動産業者が取引後に倒産しちゃったら?保険制度があるから安心!

家を買おうと契約した時、手付金を支払うことが多いです。

もし契約後に不動産屋が倒産したらそういうお金はどうなるのでしょうか。支払い済みの手付金等が返還されないという事態になってしまいます…

でもご安心ください。不動産屋は「全国宅地建物取引業保証協会」などの保証協会に加入しているはずです。重要事項説明の1ページめの下の方に書かれていると思います。

この保証協会に、不動産業者があらかじめお金を東京法務局に供託(保管)しています。万が一、倒産などの事故が起こった場合には、供託金(保証金)から弁済(弁償)が受けられるようになっています。

つまり、保険のような制度が整っており、支払った手付金などのお金を元に戻すことができる仕組みがあります。

高額な不動産取引、ちゃんと万が一のことまで想定されているのですね。

家は勝手に建ててはいけない。マイホームに課される制限いろいろ

重要事項説明では、多くの時間を使って、家に課される制約事項を説明されます。「〇〇の法令に基づく制限の概要」といった項目がそれです。

これは都市計画法や建築基準法で決まっている制限事項を抜き出して書かれてあるものです。

例えば、「都市計画法」によって、簡単に言うとどこでも勝手に家は建てられず、建てても良い場所と建ててはいけない場所が決まっています。

具体的には、市街化区域(家を建てられる区域)と市街化調整区域(建てられない区域)に分けて仕切られているのです。住宅地の物件であればほぼ市街化区域(建てられる区域)に指定されていると思います。

重説を通じて、「家にはこんな決まりがあるんだ!」と意外と知らないことも知れたりします。

耳慣れない言葉も出てきますが一つ一つは説明されれば理解できるものばかりです。分からないことがあればその都度、説明してくれる宅建士に質問してみてくださいね。

用途地域によって、居住・商業・工業エリアが棲み分け。防火地域もある

一つ、用途地域についてイメージを掴んでおきましょう。

先ほど家を建てられる地域として市街化区域を定めてあると言いましたが、さらに用途地域というエリアに細かく分類して、「ここは住居のエリア」「ここは商業」「ここは工業」などと指定しています。

例えば住居エリアの「第一種低層住居専用地域」。ここは2階建て(10m)までの住宅が建つ住宅地域で、お店や事務所などは住宅に付着したもの以外は建てられません。

カラオケボックスやパチンコ店などの商業・娯楽施設はもちろん建てられませんから、家のそばにそういった建物が建つことはありませんのでご安心を。閑静な住宅街といったところです。

また、建物が密集する地域だとどうしても火災が気になると思いますが、そこは「防火地域」や「準防火地域」というエリアに指定されます。

万が一火災が起こってもできる限り延焼しないような建物の構造や、材料を使い特に燃えにくい仕様にしなければいけないとされています。窓ガラスやサッシも防火仕様なのです。いろいろと考えられていますね。

気になる日当たり。ビルの屋根が斜めになっているのは斜線規制のため

おそらく多くの方が気になっている陽当たり。太陽の光が入ってこない家なんて嫌ですよね。

これについても、大きく2つのことについて重説で説明されます。

①建物の前面道路や北側の建物、隣地の建物に配慮した規制をする

例えば「道路斜線制限」。

建物の反対側の前面道路境界線から、こちらの敷地に向かって一定角度の勾配で斜線を引いたその「内側」に高さを抑えて建物を建てなければいけません。

ちょっと言葉では説明しづらいですね…以下の図を参考にしてください。

これは道路の採光と反対側の建物の日照と通風を確保するためなのです。この制限は、(都市計画区域内なら)必ず受ける規制になります。

よく街で住宅の屋根やビルなどが斜めになった形を見たことがあると思いますが、それはカッコよくするためのデザインではなく、この斜線規制によるものなのですね。

逆にこの規制がないと、高いビルの影に入ってしまいジメジメしてしまいますからね。大事な規制です。

②建物が周りに与える「日陰」の時間を規制する

太陽の光を取り入れさせるために、斜線規制がありました。一方で、一定の時間以上、日陰を作ってはいけないというルール「日影規制」もあります。

1年のうちで一番影の長くなる、冬至の午前8時~午後4時までの8時間について、敷地から5mの範囲では4時間、10mの範囲では2.5時間以上、地盤面から1.5mの高さのところに日陰を作ってはいけないとしています。

注意したいのは、地面から1.5mの高さ(測定水平面)以上の部分での規制ということです。必ずしも床に日が当たるということではない、ということです。

この日陰の時間や、部屋の中に入ってくる日当たりに関しては様々な受け取り方があるかと思います。

日本は国土が小さくガチガチに規制しすぎると建物が建たなくなるという事情もあるでしょう。

建築基準法で定めている規定はあくまでも「最低限の規定」ですので、人によっては日当たりが悪いと感じる方もいるかもしれませんね。

建てられる建物の高さや大きさを決める規制「建ぺい率」「容積率」

陽当たりや通風をさらに規制するルールがあります。それは、「建ぺい率」と「容積率」です。

この規制は日当たりや通風を良くし、火災による延焼を防ぐ目的があります。

例えば板橋区の第一種・第二種中高層専用地域では建ぺい率60%、容積率200%として3階建ての建物が建つとしています。

  • 建ぺい率60%=その敷地に対して建物が60%の部分まで建てられます
  • 容積率200%=その敷地に対して建物の延べ床が200%作れます

この割合は用途地域ごとにそれぞれ違いがあり、同じ用途地域同士なら同じ建ぺい率と容積率なので大きさや高さが統一された建物が建つわけです。

また、「建ぺい率と容積率」は時代背景によって割合が変わることがあります。将来は今よりも大きく、または小さく建つことになる可能性があり、数十年後の建て替えをするときには再度市区町村で確認が必要です。

注意したい私道。個人が管理する道路は将来のトラブルに…

私道とは、個人の所有で道路として使用している土地です。その土地は誰がどれだけ持ち分があるのか、面積や権利が明確でなければいけません。

持ち分や権利でトラブルになることもありますので事前調査は慎重にしたいところです。

宅建業者が土地を購入して4区画の分譲地を開発した場合

開発分譲宅地内(不動産会社が土地を買い取り、そこに複数の家を建てる敷地)には私道を設置することがあります。

そして開発道路を建築基準法の道路として認めてもらう為には開発業者は特定行政庁(地方公共団体)に道路申請をしなければいけません。

指定を受けるとその私道は「位置指定道路」という道路になり、この開発分譲地4棟はA棟~D棟が、それぞれ土地面積の1/4ずつ共有物として私道持ち分を持つことになります。

ちなみにこの場合で位置指定道路を使用しても固定資産税はかからないのが一般的です。

宅建業者が売主や所有者の場合は予め道路手続きをし、権利を明確にしておきます。こういった例はトラブルが少ないです。

個人が維持管理している私道は、通行・掘削権を必ず確認!

不動産業者が権利関係を整理した私道はトラブルが比較的少ないものです。一方、注意したいのは、個人がずっと持っている私道です。

あくまでもその方の土地なので、通行の制限や、水道管引き込みのための掘削工事に制限がかかる可能性があります。

「この道は通ってはいけない」とか、掘削工事に伴う掘削承諾書の「承諾料の請求」をされるかもしれません。他人が所有している私道のみに接している土地や一戸建ての購入には注意が必要です。

それに該当する土地を購入するのであれば、事前にトラブルを防ぐためにも重説時にしっかり確認することが大切です。

「通行権・掘削権をきちんと保有したまま購入できているのか?」を必ず聞いておきましょう(中には、こういう面倒くさい手続きをしない不動産業者もいます)。

また、道路の補修が必要となった場合には、私道の所有者が費用を負担することもあります(私道に埋設されている上下水道は私設管であり、破損すればその費用負担を負う可能性があります)。いずれも十分な説明と理解が必要です。

忘れがちだけど重要!飲用水・電気・ガスの供給、排水施設の整備状況

重要事項説明書には、施設の整備の状況、私設整備の特別な負担の有無などが記載されています。

例えば、電気・ガス・飲用水の状況です。施設管がどこに、どのくらいのものが通っているのか?工事は必要なのか?排水方法は何か?などもしっかりと説明をしています。

いずれも市区町村から取り寄せられる上下水道管や、ガス管の間取図を参照にしながら不動産会社が責任もって調べるべきものです。

もし水や電機がすぐに使えなかったり、工事が必要な状態だと予定外の出費がかかることがあります。事前にしっかり営業担当者と取引士で確認をしたいですね。

できれば事前に重要事項説明書や契約書を入手。当日は質疑応答の場に!

つらつらと説明してきましたが、これだけでもなんだかよく分からずうんざり…という方もいらっしゃるかもしれませんね。。

ただ、不動産取引というのは、大きな金額が動き、そして買った後には動かせないものです。「ここを確認しておけば…」とならないためにも、ぜひポイントを押さえてくださいね。

できれば、実際に契約をされる時には、数日前(遅くとも前日)までに、契約書と重要事項説明書を入手しましょう。少なくとも前日までには作られているはずです。そのデータ(pdf)をメールで送ってもらうのです。

事前に読んでみて、分からないところを片っ端からチェックしてみてください。

そして当日、宅建士の説明を聞いても分からなければその場で一つ一つ丁寧に説明してもらいましょう。

普段接することの少ない不動産取引、分からないことが多くて当たり前です。いわれるがままにハンコを押すのではなく、ぜひ契約当日は質疑応答の場にして納得の取引をしてください!

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