日影規制は地上の日影を制限するもの

日影(にちえい・ひかげ)規制とは、建物が周囲に及ぼす日影の影響を考慮し、一定の制限を課すものです(建築基準法上の規制)。

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用途地域に応じて以下表の通り制限されますが、原則として商業地域、工業地域、工業専用地域には適用がありません。

用途地域規制される建築物測定水平面種別許容日影時間
※敷地境界線からの水平距離
5m<距離≦10m10m<距離
第一種・第二種
低層住居専用地域

以下いずれかの建物

  • 軒高が7m超
  • 3階以上(地階除く)
1.5m(1)3時間2時間
(2)4時間2.5時間
(3)5時間3時間
第一種・第二種
中高層住居専用
高さが10m超の建物4m
(6.5m)
(1)3時間2時間
(2)4時間2.5時間
(3)5時間3時間
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
(1)4時間2.5時間
(2)5時間3時間
用途地域外

以下いずれかの建物

  • 軒高が7m超
  • 3階以上(地階除く)
1.5m(1)3時間2時間
(2)4時間2.5時間
(3)5時間3時間
高さが10m超の建物4m(1)3時間2時間
(2)4時間2.5時間
(3)5時間3時間

尚、敷地が道路や河川に接している場合には、これら規制において一定の緩和があります。

種別や用途地域外の規制は地方公共団体が決める

同じ用途地域内でも種別が複数ありますが、これは地方公共団体がその地域に応じていずれかを定めます。

また、用途地域外には規制対象の建物が2種類記載されていますが、これも地方公共団体が条例で指定します。

軒高7m以下かつ2階建て以下の住宅は規制を受けない

規制される建物は、第一種・第二種低層住居専用地域では、軒の高さが7mを超えるもの、または地階を除く3階建て以上のものが規制を受けます。

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例えば、軒の高さ7m以下の2階建て住宅は規制を受けません。尚、「軒高」と「高さ」の2つがあることにご注意ください。

適用外の商業地域・工業(専用)地域も対象区域に日影を落とせば規制される

基本的には、商業地域・工業地域・工業専用地域は日影規制を受けません。

しかしこの地域にある建物が「10m超」かつ「対象区域へ日影を生じさえる場合」には日影規制が適用されます。

建物が建っている敷地が規制対象外でも、日影が生じる部分が規制対象地域であれば、日影を落とされた側の地域は住環境が悪化します。なのでこのような規制が定められているのですね。

地面にできる日影を規制するのではなく地上(空中)の影

地面にできる日影ではなく、測定水平面(平均地盤面からの高さ)における日影を規制するものです。地上1.5mや4mなどに影の影響があるかどうかを考慮します。

以下の図の通り、測定水平面上(図では1.5mの水平面上)で、隣地境界線から5m超10m以下の部分と、10m超の部分で、日影となる時間を制限するのです。

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測定水平面より下の部分はいくら日影になろうが考慮しないということです。

人の建物内の生活に主眼を置いており、庭の草木などは建築基準法の範疇ではないということかもしれませんね。

(第一・第二種)中高層住居専用や(第一種・二種・準)住居地域などは測定水平面が4mですので、1階部分は光が入らなくてもやむを得ないと考えられていることが分かります。

「日影図」(にちえいず)を基に、日影となる時間の上限を制限

上の表の「許容日影時間」の列について説明します。

これは敷地境界線からの水平距離が5m超10m以下と10m超の部分について(昼の時間が一番短くなる)冬至日の”真太陽時”による午前8時から午後4時までの間で日影となってもよい上限時間を規制しています。

下図の場合、8:00の影と10:00の影が重なり合っている部分は2時間は影になる部分という意味です。

また、8:00~10:00(14:00~16:00)の間は、10mラインを超える部分(薄いピンク部分)に影の重なりはありませんので、2時間以上影となる部分がないこともわかります。

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このような各時間ごとの影を記した「時間日影図」を基に、敷地境界線からの水平距離に応じて、日影となる時間をそれぞれ制限しているのです。

実際には、この時間日影図を基に、同じ時間だけ日影になる点を結んだ「等時間日影図」を作成し、より厳密に制限を満たすかどうか判断します。

尚、真太陽時とは、南中時刻(太陽がちょうど真南にくる時刻)を正午とする時間の考え方です。太陽が南中する時刻は西に行くほど早くなるなど場所によって異なり、ちょうど12時ではないため、このような補正をしているのです。

例えば、11:50に南中する場所では、午前7:50~午後3:50までの間の日陰を制限するということです。

【参考】最低限の基準を定める「日影規制」と、日光を確保する権利「日照権」は別

陽当たりを規制するといえば「日照権」を思い浮かべることもあるかもしれませんが、これは日影規制とは別物とご理解ください。

日照権は、住居の日照(太陽の光)を確保する権利です(法律には具体的に明記されていませんが、実際に多くの判例でこの権利は認められているようです)。

詳しくは、以下のコラムをご覧ください。

「日影規制」と「日照権」の違い。日当たりの良し悪しは個人間で解決!

建物が特別な立地である場合の日影規制

日影は建物が建つ敷地に隣接する敷地に及ぼす影響を制限するものです。

また、日影は住環境を大きく左右する日当たりに直結するものであるため、特別な立地にある場合にも厳しく基準が定められており、規制が課せられています。

建物と影ができる用途地域が異なる場合、日影のできる用途地域の規制が適用

日影規制は、建物のある場所の規制ではなく、影を落とされた地域の住環境を保護する規制です。

ですので、例えば建物が準住居地域に存在し、その影が第一種低層住居専用地域に生じる場合、その建物は第一種低層住居専用地域の日影規制値が適用されます。

例えば測定水平面は4mではなく1.5mで日影時間を計測されることになります。

同一敷地内の建築物は一体の建物とみなされる

同じ敷地内に、2つ以上の建築物がある場合、これらの建物は一つの建物とみなされます。

例えば、(第一種・第二種)中高層住居専用地域内では10m超の建物が日影の制限を受けますので、9mの建物は日影制限を受けません。

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しかし、同じ敷地内に11mの建物があれば、9mの建物も含めて日影制限が課されます。

上図の場合、敷地が別である黒い建物は日影規制対象外である場合にも、もし両方の建物が同じ敷地である場合には両方とも日影規制を受けることになるのです。

一つでも規制対象となる建物があれば、同一敷地内にあるすべての建物が一体の建物とみなされ、すべて日影規制の対象となるのです。

建築物が複数の対象区域にまたがる場合、それぞれの部分で判断

建物が、対象となる異なる用途地域にまたがる場合、すべての地域で適用外とみなされれば日影規制はありません。

しかし、一つでも適用対象となれば、すべての建物において規制が適用されてしまいます。

例えば第一種低層住居専用地域と第一種中高層住居専用地域にまたがる建物の場合、まずその建物をそれぞれの地域に独立に存在するものとみてそれぞれ建物が対象になるかどうか判断します。

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上図の場合、中高層住居専用地域部分にある建物が10m以下であり、かつ低層住居専用地域の建物も軒高7m以下かつ2階以下であれば、両方で規制対象外ですので建物は日影規制を受けません(上の場合)。

しかし、下の場合のように、中高層住居専用地域部分の建物が10mを超えてしまうと、もう一方がどうであれ、建物すべてが(第一種中高層住居専用地域の)日影規制を受けることになるのです。

同一敷地内の建物が一体の建物とみなされるという原則がここでも適用されるのですね。

日影規制のまとめ

建物が作る日影が隣地に大きな影響を与えないよう、日影となる時間を用途地域によって制限するのが日影規制です。

日影というと地面にできるものというイメージを持ちがちですが、ここでいう日影は、地上から1.5mや4mなど地上から一定の距離にある測定水平面上での影であることにご注意ください。

同一敷地内の建物はすべて同じ一つの建物とみて日影制限が課されるなど、日当たりをきちんと確保するよう厳しく規制されています。

最後に、建築基準法が実際に守られているか工事前後と途中で検査・確認する制度をみていきましょう。

建築基準法の適合を確認するため、建築の前・途中・後に検査

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