積算価格=「土地価格」+「建物価格」は金融機関が算出

これまでは「土地のみ」または「家屋(建物)のみ」の不動産価格についてご説明しました。

ここからは、「土地+建物」両方の価格の決め方をご紹介します。つまり、実際の取引で使われる価格です。

「積算価格」とは、主に金融機関がおカネを貸し出すかどうか審査する際に、担保物件の評価に用いられる不動産の評価額で、土地と建物を別々に評価したものを単純に足し合わせたものです。

積算価格_700

土地であれば「公示地価」「基準地価」「相続税路線価×面積」「固定資産路線価×面積」などを用います。

建物は「家屋(建物)の固定資産評価額」は使い勝手が悪いため、後述する通り「建物の再調達価格」を計算します。

尚、この価格を融資額とするのではなく、他の情報と総合的に勘案して融資額は決定されます。積算価格は、資産性がどれくらいか見積もるために算出するものです。

土地価格は「相続税路線価×面積」がよく使われる

土地価格は、もちろん公示地価を使用してもよいですが、多くの銀行で使われているのは、相続税路線価といわれています。

公示地価は実際の売買取引の価格水準に近く、リスクを嫌う金融機関としては保守的な評価が望ましいため、公示地価の80%水準の路線価が好まれるためです。

また、路線価はそのまま使うのではなく、相続税路線価の場合と同様に形状などによってその価格を補正します。

【拡大】相続税路線価(板橋区)2_s

また、商業地域など土地活用の可能性が高い場合には10%の増額など、担保評価をあげることもあります。

尚、固定資産評価額は公示地価の70%水準ですが、これでは担保評価が下がりすぎる(融資額が下がる)ため、金融機関にとっても商売になりません。

さらに、固定資産税評価額を取得するには物件の所有者自らが行うか、委任状を書いてもらう必要があり、実務上業務が煩雑になることも一因でしょう。

建物価格は再調達価格に経年劣化を加味する

建物価格については、固定資産評価額と同じやり方で算出できそうですが実務的に無理があります。

建物の再建築価格を算出する業務は極めて煩雑なことや、法定耐用年数を過ぎても最低価格が20%で下げ止まることがあるため適しません。

よって、以下の計算方法を利用することが多いようです。計算の考え方自体は、家屋の固定資産税評価額と類似していますが、かなり簡略化したものといえます。

建物価格=再調達価格×延べ床面積×残存年数÷法定耐用年数

つまり、建物の構造から新築を建て直す場合の費用(再調達価格)を算出し、残存年数(=法定耐用年数-経過年数)を計算して建物の劣化具合に合わせて評価を減額するのです。

ここで、再調達価格と法定耐用年数は以下の通りです。

再調達単価・法定耐用年数_m

再調達単価は、一律に決まっているというわけではなく、金融機関によってどの値を使用するかは変わります(上記はあくまで目安です)。リスクを取りたくない金融機関は低めに設定するということですね。

【具体例】積算価格の計算:戸建てと区分マンションの場合

戸建ての積算価格の計算

  • 土地面積:200㎡
  • 路線価:25万円/㎡
  • 建物構造:木造(再調達単価15万円/㎡・法定耐用年数22年)
  • 延床面積:300㎡
  • 経過年数:15年

上の例の場合には、以下の計算で積算価格「6,432万円」と評価されます。

  • 土地の積算価格「5,000万円」=路線価25万円/㎡×土地面積200㎡
  • 建物の積算価格「1,432万円」=再調達単価15万円/㎡×延床面積300㎡×(法定耐用年数22年-経過年数15年)÷法定耐用年数22年
  • 積算価格「6,432万円」=土地の積算価格5,000万円+建物の積算価格1,432万円

区分マンションの積算価格の計算

  • 敷地面積:2,200㎡
  • 土地持ち分:8,000 / 500,000
  • 路線価:25万円/㎡
  • 建物構造:鉄筋コンクリート造(再調達単価20万円/㎡・法定耐用年数47年)
  • 専有面積:80㎡
  • 経過年数:20年

上の例の場合には、以下の計算で積算価格「1,799万円」と評価されます。

  • 土地の積算価格「880万円」=路線価25万円/㎡×敷地面積2,200㎡×持ち分8,000 / 500,000
  • 建物の積算価格「919万円」=再調達単価20万円/㎡×専有面積80㎡×(法定耐用年数47年-経過年数20年)÷法定耐用年数47年
  • 積算価格「1,799万円」=土地の積算価格880万円+建物の積算価格919万円

積算価格は一つの指標。銀行と柔軟に交渉を

積算価格は不動産価格を出すための一手法に過ぎず、これが担保評価として唯一絶対に正しいわけでもありません。

繰り返しますが、積算価格=融資額ではなく、銀行が融資を行うにあたって万が一を想定した場合に、どれくらいの担保価値があるかを測る参考値です。

bills_business-people_ss例えば、投資物件では将来の収益を考える収益還元法という別手法が担保評価に使われることもありますし、そもそも法定耐用年数によらない評価をする金融機関もあります。

融資対象物件に加えて別の担保(共同担保)を差し入れることで、大幅な融資増額が実現することもあります。金融機関それぞれの特徴を踏まえてローンを組みましょう。

積算価格のまとめ

ここでは積算価格の使われる場面や計算方法をみてきました。

積算価格は、主に金融機関がおカネを貸し出す際に、担保とする物件の評価の目安として使われます。

不動産価格7つ:積算価格_700

土地の価格は相続税路線価を基にしたものを使うことが多く、建物は再調達価格に経年劣化分を補正したものを使います。

積算価格自体は、土地評価額と建物評価額を足し合わせたものですが、銀行によってその評価方法は異なります。個別の案件に応じて、金融機関とも柔軟に交渉していきましょう。

次は、実際に物件を販売する側(売主)がどのように値決めしているか、具体的にみていきましょう!

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