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媒介契約の種類は「一般」「専任」「専属専任」の3つ
オーナーが物件の売却を不動産仲介会社に依頼する場合、「媒介契約」というものを結びます(購入する場合にも同じ媒介契約を結びますが、事実上、一般媒介契約に限られます)。
宅地建物取引業法 第34条の2 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結したときは、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければならない。
媒介契約を結ぶことで、売却希望者が不動産会社からどのような報告をいつ受けるのか、売却が決まった時の仲介手数料(報酬)はいくらか、などを事前に取り決めておくものです。
そしてこの媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があり、契約の種類によってオーナーと不動産会社の義務や権利の範囲が変わってきます。
権利・義務 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任 |
---|---|---|---|
依頼者への報告 | 任意 | 1回/2週間 | 1回/1週間 |
REINSへの登録 | 任意 | 義務 | 義務 |
他者への依頼 | 〇 | × | × |
自己発見取引 | 〇 | 〇 | × |
有効期限 | 無制限 | 3カ月以内 | 3カ月以内 |
なぜこのような事前取り決めが必要になるかというと、どの不動産会社も同じ物件を共有しているため、売主はどの不動産会社を通しても物件を売却できるためです。
オーナーは「売却できればどこでもいいや」と考えるかもしれません。
その一方で、不動産会社が「自社を通じて売却してもらえると思って広告費もたくさんかけて頑張ったのに、蓋を開けてみたらすでに他の不動産会社で売却されていた…」ということもないとは言い切れません。
誤解やトラブルを生まないためにも、契約書でお互いの立場を明確にしておくものなのですね。
「一般媒介契約」はお互いに自由な契約
一般媒介契約とは、オーナーが複数の不動産会社に対して「この物件の買い手(借り手)を見つけてきてくれ」と依頼する際に結ぶ契約です。
しかも、オーナーご自身が買い手(借り手)を見つけてくれば、不動産会社を通さずとも(仲介手数料を払わずとも)売却(賃貸)できます。これを自己発見取引といいます。
そして、一般媒介契約の場合には不動産会社はREINSに登録する義務はなく、登録するかしないかは不動産会社に委ねられます。
登録されなかった場合、この物件は非公開物件として、その不動産会社でしか紹介できない物件となります。
しかし、複数の不動産会社へ依頼することが前提の一般媒介ですので、競争原理が働き、複数社がREINSに登録されることが多いのが実態です。
契約期間に定めはありません。この一般媒介は、お互いをあまり拘束せずに自由度の高い契約方式といえるでしょう。
「専任媒介契約」は不動産会社に本気で探すことを促す契約
専任媒介契約は、オーナーが「この物件の買い手(借り手)を見つけてきてくれ。あなたの会社にしかお願いしない」と依頼するものです。たった1社に限定する方法です。
この場合にも、オーナーご自身が買い手(借り手)を見つけてくれば、不動産会社を通さずとも(仲介手数料を払わずとも)売却(賃貸)できます。
そして、不動産会社は依頼を受けたらその「7日以内」にREINSに物件を登録する義務を負い、販売活動の状況を少なくとも「2週間に1回」はオーナーに報告しなければなりません。
そして、この専任媒介契約の契約期間は最長で3カ月と定められています。もし3カ月より長い契約を結んだとしても、3カ月とみなされることが宅建業法で謳われています。
宅地建物取引業法 第34条の2
3 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。
4 前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。
更新することはできますが、更新後の契約期間もまた3カ月という縛りがあります。長期契約を結び、不動産会社がゆっくりとお客様を探したり、手を抜くかもしれないことを防ぐのですね。
専任媒介契約は、オーナーが他の業者に依頼することを禁じる代わり、不動産会社はREINSに必ず登録し、時間を区切って必死になって買い手(借り手)をみつけるよう努力するよう促すものです。
定期報告も義務付けられ、オーナーから預かった物件をないがしろにしないようにするものですね。
「専属専任媒介契約」はガチガチに縛りあう契約
専属専任媒介契約は、オーナーが「この物件の買い手(借り手)を見つけてきてくれ。あなたの会社にしかお願いしない」と依頼するものです。
先ほどの専任媒介契約と同じく、たった1社に限定する方法です。さらに、オーナーご自身が買い手(借り手)を見つけてきても、不動産会社を通さなければなりません(仲介手数料を払わなければなりません)。
そして、不動産会社は依頼を受けたらその「5日以内」にREINSに物件を登録する義務を負い、販売活動の状況を少なくとも「7日に1回」はオーナーに報告しなければなりません。
専任媒介契約と同じく、専属専任媒介契約の契約期間も最長で3カ月と定められており、更新は可能ですが更新後も3カ月以内です。
不動産会社としては、オーナー自身がみつけてきたお客様であれ、必ず自社で契約できるため専属専任媒介契約は特に気合いが入り、販売活動にも力が入ります。
どの媒介契約がいい?営業力のある不動産会社なら(専属)専任媒介契約
不動産会社の気持ちになって考えると、一般媒介契約はどれだけ販売活動に力を入れても他決(他社で契約が決まる)されることがあります。
そうなると、営業活動の力の掛け方は専任媒介の物件に比重を置いてしまう側面があります。
そして、営業力のある不動産会社には多くの物件が持ち込まれます。その中で一般媒介を望むとどうでしょうか。
不動産会社としては、他の専任媒介案件を優先することが考えられますし、そもそもその会社に本領発揮してもらい買主との契約を結ぶという目的を達成した方が得策でしょう。
中には、専任媒介契約しか結ばない会社もあります。その不動産会社の力やスタイルを見極めて媒介契約の種類を決めましょう。
買主・借主にとって魅力的な「質の高い物件」なら一般媒介契約
質の高い優良不動産の場合は一般媒介契約がよいでしょう。
例えば、駅チカや良好な周辺環境など超好立地な物件や、相場よりも大きく値下げしてもよい物件(コストパフォーマンスの優良な物件)などです。
この場合、不動産会社にとってみれば、買主(借主)を容易にみつけられ、また目玉物件を扱っているというブランディングにもなり、専任媒介でなくとも競ってお客様をみつけてくれることが期待できます。
一方で、一般媒介契約でなかなか決まらない物件や、物件に大きなデメリットのある質の悪い物件の場合、専任媒介としてしっかり腰を据えて営業活動に注力してもらうよう依頼することが得策です。
不動産市場の需給バランスもみながら、物件の質や状況に応じて契約を見直していきましょう。
不動産を購入する際にも媒介契約は必要。ほとんどは一般媒介
不動産を購入する場合にも媒介契約が必要です。
ただし、購入の場合は会社を限定するメリットがあまりなく、ほとんどの場合「一般媒介契約」となっています。
そもそもREINSへの登録は、物件を所有する売主が依頼する場合を想定した条文であり、物件を探す買主には意味がありません。
ただし、専任媒介契約とする代わりに、確度の高い相場情報など不動産会社が他社にはもっていない特別なサービスを提供するということもあります。
購入の場合の媒介契約を結ぶのは売買契約の直前?
オーナー(不動産所有者)が売却依頼をして、不動産会社と媒介契約を結ぶのは、通常販売活動を行う前です。
事前に取り決めを行い、お互いの共通認識を書面で残さなければ後々トラブルとなりかねないためです。
「不動産を購入するから物件を紹介してほしい」と依頼する場合も、本来であれば、物件を探す前にお客様と媒介契約を結びます。
しかし、実態として、まずは媒介契約を結ばずに物件を紹介し、実際に物件を購入することが決まった段階で媒介契約を結ぶことも多いものです。
重要事項説明や売買契約の直前に一緒に結ぶこともあります。売却依頼であれば、依頼者(オーナー)もある程度不動産取引に詳しいこともあります。
しかし購入者の場合はよくわからないままいきなり「媒介契約を結びましょう」といわれれば拒否したくなると予想され、不動産会社としてはまずは物件のご紹介をして、サービスを感じてもらうことが得策と考えているのですね。
媒介契約のまとめ
不動産会社に特に売却を依頼する場合、媒介契約を結ぶことをみてきました。媒介契約は「一般」「専任」「専属専任」の3種類があり、それぞれ依頼者や不動産会社に課せられる義務が異なります。
売却時にどのような媒介契約を結ぶかという参考にすることに加え、購入時にもこの仕組みを知っておきましょう。もし何度も執拗に特定の物件を強く勧めてくる場合、その不動産会社がオーナーと(専属)専任媒介契約を結び、売り急がされていることも考えられます。
その場合には、「この物件は、御社の専任物件ですか?」と確認することも一つの手です。賢く取引をしましょう!
【P.S.】「この家、買っていいのかな?」…迷わずご相談ください!
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