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用途地域を知れば住環境や街づくりがわかる。内容変更も要チェック
建物をどんどん建てていく区域である市街化区域には、必ず用途地域を定めます。用途地域には12種もあり、一つ一つの規制を覚える必要はありませんが大枠は理解しておきましょう。
購入しようとしてる物件の所在地の用途地域がなにに該当し、その地域ではどのような環境となるよう配慮されているかを知ることで住み心地や利便性などの住環境が分かります。
また、新築する場合には建てられない建物もあることが分かります。
さらに、用途地域内で増改築を行う場合にも、高さや床面積などの制限を守らなければなりません。既に住宅として使用している建物を、店舗や事務所として使う場合など用途を変更する場合にも規制が課されます。
尚、用途地域はおおむね5年ごとに見直されるなど、その内容も変わっていく可能性があります。
世論の流れを受け見直しがなされることもあります。例えば、2016年6月にはダンスホールやナイトクラブの建築が緩和されました。継続的に確認していきましょう。
用途地域は大きく住居系・商業系・工業系の3種類
用途地域は、無秩序に市街化が進むことを抑制するためのものです。
割り当てた用途地域に応じて、その地域ではなにを目的に市街化を推進するかがわかります。
これによって、閑静な住宅街や工業地帯などが棲み分けられ、住宅の隣に超高層ビルや工場が建つなど生活環境が悪化することが防げるのです。
用途地域の種類 | 目的(都市計画法第9条) | ||
---|---|---|---|
住居系 | 低層 | 第一種 低層住居専用地域 | 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護 |
第二種 低層住居専用地域 | 主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護 | ||
中高層 | 第一種 中高層住居専用地域 | 中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護 | |
第二種 中高層住居専用地域 | 主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護 | ||
その他 | 第一種 住居地域 | 住居の環境を保護 | |
第二種 住居地域 | 主として住居の環境を保護 | ||
準住居地域 | 道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の 利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護 | ||
田園住居地域 | 農業の利便の増進を図りつつ、 これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護 | ||
商業系 | 近隣商業地域 | 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを 主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進 | |
商業地域 | 主として商業その他の業務の利便を増進 | ||
工業系 | 準工業地域 | 主として環境の悪化をもたらすおそれのない 工業の利便を増進 | |
工業地域 | 主として工業の利便を増進 | ||
工業専用地域 | 工業の利便を増進 |
地域における用途の制限
これらの地域における具体的な規制は、特に建築基準法などによって細かく規定されています。
「用途地域による建築物の用途制限の概要(東京都都市整備局)」に記載されているように、それぞれの地域に建てられる・建てられない建物が規定されています。
この制限だけ守ればいいのではなく、この用途地域に重ね合わせて規制する他の地域地区の制限や、その他建築基準法などの規制があることにご注意ください。
住宅街は閑静な住環境を目指す。公共性の高い施設はどこでも建てられる
大雑把にいえば、低層・中高層住居専用地域は良好な住環境を保護する地域です。
閑静な住宅街を形成するよう商業施設や工業施設がきつく制限されます。一方で、派出所など公共性が高く場所を選んではいけない施設はどこにでも建てられます。
具体的には、低層・中高層住居専用地域において、イメージとして”落ち着いた”店舗であれば許されます。しかし、事務所やホテル・旅館は基本的に不可となっています。
一方で、安全性などを確保するため工業専用地域に住宅は建てられません。
遊戯施設や風俗施設は、主に準住居地域・近隣商業地域・商業地域・準工業地域に認められます。商業の利便性を確保するための地域と、それに近しい地域に限定しようとしているのですね。
これらとは関係なく、派出所や(一定規模位以下の)郵便局などの公共性の高い施設や、神社や寺院、教会などの宗教施設、診療所・保育所などの施設はどこの地域にも建てられます。
用途地域ごとの住環境
住居専用地域といっても住宅しか建たないわけではありません。用途地域ごとにどのような環境を目的としているか具体的にみていきましょう。
尚、これらの地域は隣接していることも少なくなく、この地域に住むからといって生活圏内すべてがこの地域であるとは限りません。
実際には、周辺地域を含めどのような用途があるかを総合的にみることが大切です。
第一種低層住居専用地域
住宅はもちろん、店舗や事務所がある兼用住宅も一部認められます。
また、幼稚園・小中学校(大学などは不可)や図書館、老人ホームが建設できます。店舗や事務所、ホテル、商業施設、工業施設は基本的に不可で、病院も建てられません。
病院や大学も不可能で、(兼用住宅以外の)店舗や事務所もなく、かなり厳しい制限を課した住居専用の地域といえます。
また、住宅を建築する場合にも、高さ制限や日影規制も他の地域より厳しく、その名の通り低層住宅がメインとなります。
閑静な住宅街を実現する地域ですが、病院も銀行、コンビニもないため、日常生活においての利便性は失われているといえるでしょう。
第二種低層住居専用地域
第一種低層住居専用地域より少し制限が緩和されます。
2階建て・床面積150㎡以下であれば、日用品販売店や喫茶店、理髪店などの店舗が認められます。また、2階建て以下で作業場面積が50㎡以下であれば、パン屋や洋服店なども許容されます。
屋根付きの駐車場なども認められます。しかし、やはり病院や銀行などがなく、ある程度不便な地域といえるかもしれません。
第一種中高層住居専用地域
第二種低層住居専用地域の制限が緩和され、500㎡以下の飲料展や損保代理店、銀行の支店、不動産会社などが認められます。大学や病院も建てることができます。
容積率の制限も低層住居専用地域に比べ緩和され、中高層マンションも建築される地域です。
住環境に加えて、生活の利便性がある程度確保できる地域といえるでしょう。
第二種中高層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域に加えて、1,500㎡・2階建て以下までの店舗・事務所が建てられます。ここにきて初めて事務所が可能となります。
また、1,500㎡以下で量が非常に少ないという制限はありますが、火薬・石油類・ガスなどの危険物の貯蔵・処理施設も許可されます。
第一種住居地域
第二種中高層住居専用地域の制限が緩和され、店舗は種別を選ばず、また事務所は3,000㎡までなら可能となります。
3,000㎡以下ならホテルや旅館、ボーリング場やゴルフ練習場などの遊戯施設、自動車教習所も許可されます。
また、50㎡かつ危険性や環境を悪化させる恐れが非常に少ないという条件付きで、小規模な工場も建てることができ、自動車修理工場も可能です。
大規模マンションも建設され、住居の環境のみならず、商業施設や工業施設が散見される地域といえるでしょう。
第二種住居地域
第一種住居地域に加えて、床面積の制限なく事務所が建てられます。
10,000㎡以下であれば、大きな店舗やカラオケボックス、パチンコ、馬券発売所などの遊戯施設も可能です。
住居地域というイメージからはあまり想像できない、パチンコや馬券発売所などギャンブルに関わる商業施設が建てられます。
そういった施設を嫌う場合、第二種住居地域に物件を購入する場合には検討が必要でしょう。
準住居地域
第二種住居地域よりさらにたくさんの施設が許容され、映画館や劇場、倉庫などの商業・工業施設が建てられます。
「住居」という名はついていますが、映画館などには人が集まりやすく騒音も発生しがちであるため、閑静な住宅街を希望される場合には注意しましょう。
田園住居地域
第一種低層住居専用地域に建築可能な建築物に加えて、農業に係る施設が建築可能です。
これは、「生産緑地」と呼ばれる都市部の農地を農地のまま、積極的に活用していこうとした政府が2017年にあらたに定めた用途地域です。
近隣商業地域
準住居地域よりさらに緩和され、店舗や事務所に床面積の制限はなくなり、積極的に立ち並ぶ地域です。
150㎡以下かつ危険性や環境を悪化させる恐れが少ない工場は建築できます。自動車修理工場も床面積300㎡以下まで制限が緩められます。
さらに、量が少ない施設であれば火薬・石油類・ガスなどの危険物の貯蔵・処理施設も可能です。
スーパーや商店街での買い物ができるなど利便性が高い地域です。
商業地域
近隣商業地域よりさらに制限が緩和され、超高層マンションや大型スーパー、ビルなどが立ち並ぶ地域です。
ターミナル駅や、街の中心部に定められることが多いでしょう。
ほぼすべての施設が認められ、建築できないのは、危険性や環境を悪化させる恐れがやや多い工場や、危険物の貯蔵・処理量がやや多い施設などに限られます。近隣商業地域では認められない風俗施設も認められます。
この地域の区分マンションをご購入される場合や、そうでなくとも近隣(普段の生活圏内)にこの地域が指定されている場合には、しっかり確認しておきましょう。
準工業地域
商業施設と同じく用途の広い地域ですが、危険性や環境を悪化させる恐れがやや多い工場や、危険物の貯蔵・処理量がやや多い工場も認められます。
「工業」と名の付く地域ですので、排気ガスなど健康面が気になる場合には避けた方がよいかもしれません。
工業地域
準工業地域よりさらに工業をさかんに促す地域です。
10,000㎡を超える店舗や、ホテル・旅館、映画館、劇場、風俗施設などの商業施設や、学校や病院も建てられなくなります。
その代わり、環境を悪化させたり危険性が大きな工場など自由に工場建設できます。
住宅も建てられるので、(工場跡地などに)マンションや一戸建ても建設されることがありますが、トラックなど大型車両の交通量の多さや、排気ガスなど健康面も含め、環境には十分に気をつけましょう。
工業専用地域
工業の専用地域であり、工業地域よりもさらに工業寄りになります。用途地域の中で唯一住宅が建てられません。
また、工業地域では認められていたボーリング場やプール、ゴルフ練習場、パチンコ屋、馬券発売所などの遊戯施設、図書館や老人ホームなどの公共施設も建築できません。
工業に専念するための地域です。
自宅の用途地域を確認する。周辺地域も要チェック
用途地域によって、その街の雰囲気は大きく変わります。自宅やその周辺も含めて用途地域を確認しておく方がよいでしょう。
自宅の用途地域だけでは、例えば商業地域と住宅地域の境界線付近に自宅があった場合に思っていた住環境と違うことになりかねません。
また、将来にどのような建物が建つのかを想定できればそれだけで暮らしやすさも見通せるでしょう。
ただ、用途地域は未来永劫変わらないわけではなく、時代の要請などに応じて順次移り変わっています。その点には注意しておきましょう。
用途地域は入り乱れている場合がある
確認するためには自治体の都市計画課などにいけば閲覧できますが、インターネットでも公表されている自治体も多いです。例えば以下は板橋区の用途地域図です。
この中で、第一種低層住居専用地域である板橋区高島平5丁目周辺を拡大したものが以下の図です。
道路を一本挟んで隣接する6丁目は準工業地域であり、商業地域も近くに指定されています。
第一種低層住居専用地域で閑静な住宅街に住めると思っていても、周辺まで含めて検討しなければ思い通りの住環境かどうかはわからないのです。
建物が複数の用途地域にまたがる場合は、面積が大きい地域を適用する
2つ以上の用途地域の境界線上に家が建つ場合もあります。
この場合には、建築基準法に定められている通り、敷地面積の割合が大きい方の用途地域の制限が、敷地全体に対して課されることになります。
(建築物の敷地が区域、地域又は地区の内外にわたる場合の措置)
建築基準法第91条 建築物の敷地がこの法律の規定(第五十二条、第五十三条、第五十四条から第五十六条の二まで、第五十七条の二、第五十七条の三、第六十七条の三第一項及び第二項並びに別表第三の規定を除く。以下この条において同じ。)による建築物の敷地、構造、建築設備又は用途に関する禁止又は制限を受ける区域(第二十二条第一項の市街地の区域を除く。以下この条において同じ。)、地域(防火地域及び準防火地域を除く。以下この条において同じ。)又は地区(高度地区を除く。以下この条において同じ。)の内外にわたる場合においては、その建築物又はその敷地の全部について敷地の過半の属する区域、地域又は地区内の建築物に関するこの法律の規定又はこの法律に基づく命令の規定を適用する。
中古住宅の売買においては、どちらが過半の面積を占めるのかを知るためには測量などを行わなければならず、場合によってはあいまいなまま契約・決済を終える場合もあります。
特に自宅を店舗併用住宅とするなどの計画があるなど、制約の有無によっては将来計画が変わる場合にはしっかり確認しましょう。
例えば、第一種低層住居専用地域内であれば、延べ床面積の半分未満かつ50㎡以下においてしか店舗に利用できません。
用途地域のまとめ
市街化区域には必ず用途地域を定め、その種類には12種あります。
用途地域は入り乱れて設定されることもあるため、自宅のある地域のみならず、生活圏内に含まれる周辺地域まで確認することが大切です。
12種類の用途地域だけでもかなり細かな指定があるようにみえますが、地域によってはさらにきめ細やかに制限を課したい場合もあります。
次は、用途地域に重ねて制限を課すことのできる、他の地域地区をみていきましょう。
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