借地借家法は借主を保護するための法律。地主には不利

土地の貸し借りや、住宅の貸し借りには借地借家法という法律が適用されます。

「借地(土地を借りる)」と「借家(家を借りる)」のために規定された法律で、借りる側に強い権利を与え、借主を保護する法律となっています。

民法でも賃貸借に関する法律が定められていますが、こちらは貸主と借主の力関係を対等なものとして扱っている側面があります。

それを踏まえて借地借家法では、力の弱い借主を徹底的に保護しようという意図で定められているのです。

借地借家法は、あまりにも借主寄りだった旧法が統合された法律

これまで、借地や借家を定めた法律は明治時代から始まった「建物保護法」(建物保護ニ関スル法律)や、大正時代に始まった「借地法」と「借家法」がありました。

建物保護法では借地人の保護が十分でなかったという反省から、借地法や借家法ではかなり強い権利を貸主に与えました。

しかし、強くしすぎたために「土地を貸したら戻ってこないと思え」という声が漏れる程、地主にとって不利な状況となりました。

地主からの不満が噴出。少し地主寄りに法改正された

結果として、貸地の供給量が激減してしまいます。

なぜなら、戦後の高度経済成長期には地価が上がっているのにもかかわらず数十年も前に契約した賃貸借契約に縛られた安い地代しか取れず、それが半永久的に続くと恐れられたためです。

%e8%90%bd%e3%81%a1%e8%be%bc%e3%82%80%e3%81%b5%e3%81%95%e3%81%8e%e8%be%bc%e3%82%80%e8%80%81%e4%ba%ba%e3%82%b7%e3%83%8b%e3%82%a2_sその反省から、1992年8月1日に、これまでの法律を統合した「借地借家法」が施行されました。

契約更新を拒絶できる「定期借地権」や正当事由の明確化を代表とし、(借主を保護する精神は変わっていませんが)貸主にも配慮したものとなったのです。

旧法は今でも生きている。1992年7月末までの借地契約は以前旧法が適用

今は基本的に新しい現行の借地借家法が適用されますが、旧法は生き続けています。

なぜなら、旧法時代の1992年8月1日以前に契約した借地人に対しては、その法改正によって不利な扱いを受けないよう昔の法律がそのまま適用されます。

旧法における更新のしやすさなど、借地人(借主)にとって有利な事項はそのまま旧法の力が残っているのです。事実上、旧法が今でも存続しているのです。

借地借家法では借主に不利な特約は無効となる

どれほど借主に有利な法律となっているかは後ほどご理解いただきますが、基本精神として、借主にとって不利な契約文言は無効化されます。

例えば、サブリースで「家賃保証」などと謳っていても、それは家賃を支払うこと自体を保証するものであって、家賃の「額」を保証しているものではありません。

ダメ・NO・男性_s

借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求を行えば、いつでも家賃の値下げ交渉ができるのです。

一方で、借主が有利になる条文は有効であり、例えば「貸主は賃料の増額請求はできない」という文言はOKなのです。なんとも借りる側に寄り添った法律ですね。

借地権とは、建物を利用する目的でおカネを払って土地を借りる権利

借地とは、土地を借りるということです。

そして、借地権とは「建物を利用する目的で」「おカネを払って」土地を借りる場合に発生する権利を指します。この借地権に借地借家法が適用されます。

尚、貸主(地主)のことを「借地権設定者」、借主のことを「借地権者」と呼びます。

自宅や賃貸住宅経営のための土地賃借は借地権。青空駐車場などは適用外

借地借家法は、建物を利用することを目的として土地を借りる場合を想定しています。

例えば、土地を借りている人が住宅を建てて自分で住んだり、賃貸アパートを建設して人に貸し出す場合には、借地権とみなされ借地借家法が適用されます。

%e9%9d%92%e7%a9%ba%e9%a7%90%e8%bb%8a%e5%a0%b42_s一方で、青空駐車場や資材置き場などで利用している場合には借地権とはみなされず、借地借家法の範疇外です。

また、選挙事務所として利用する場合など、一時的な利用を前提とした場合にも適用されません。

借地権は、「地上権」と譲渡などに地主の承諾が必要な「土地賃借権」

少し難しい話になりますが、借地権という権利には、おカネを差し出して借りる「賃借権」の他に、地上権や地役権などさまざまな種類があります。

その中で、建物を所有することを目的とする借地権には「土地賃借権」と「地上権」の2つがあります。

主な相違土地賃借権地上権
権利債権物権
借地借家法適用適用
地主の承諾建物の譲渡・賃貸不要不要
借地権の譲渡・転貸・建替・増改築必要
抵当権建物設定可設定可
借地権設定不可

尚、借地権に対し、地主の権利を底地権(借地権の目的となる土地の権利)といいます。底地権と借地権が合わさったものが所有権ということです。

土地賃借権は、譲渡や建替えなどに地主承諾が必要。建物の売却や賃貸には不要

借地権の多くが賃借権です。この賃借権(債権)は、他人に譲渡(売却)したり、建物の建て替えや増改築に地主(貸主)の承諾が必要な権利です。

%e6%89%bf%e8%ab%be%e3%83%bbok%e3%83%bb%e4%ba%86%e8%a7%a3%e3%83%bb%e6%89%bf%e7%9f%a5_s

また多くの場合、承諾と引き換えに承諾料という金銭を地主に支払うことになります。

ただし、土地賃借権そのものではなく、そこに建っている建物の譲渡や賃貸については、地主のものではありませんので承諾なく自由に実施することができます。

地上権は地主の承諾なく自由に譲渡などが可能

一方で、賃借権に似た地上権(物権)もありますが、こちらは所有権や抵当権と同様の物権というもので「物を支配する権利」です。

つまり、地上権という物を自分が所有していることになり、地主の承諾なく増改築や譲渡をする強い権利なのです。

さらに地上権はモノのようなものですので、地上権そのものに抵当権も設定できるのです。

%e5%9c%b0%e4%b8%8b%e9%89%841_sこの地上権は地主にとって不利な権利ともいえ、市場にはほとんど出てきませんが、地下鉄などで土地の地下部分を利用する際に地上権を設定することが多いです。

鉄道会社は地主や土地所有者の承諾なく自由に補修や売却ができるようにしているのです。

ここでは、土地賃借権としての借地権をみていきますが、まず覚えておいてほしいのは、売却や建て替えの際には地主の承諾が必要となるということです。

借地権の定義・分類のまとめ

借地権は、もともと借地法(旧法)によって定義され、その法律下では借主が極めて強い権利を持っていました。

借地借家法(新法)にかわって地主寄りになったとはいえ、いまだに土地の借主が保護されている状況です。

また、地主が更新を拒絶するには正当事由が必要となり、「土地を貸したら帰ってこない」という覚悟で土地を貸し出さなければならない状況を緩和するため、定期借地権という期限を区切った借地権も生まれました。

一方で、借主は借地権の譲渡や建て替えなどにおいて、その都度地主に承諾を得る必要があり、また承諾料名目で地主は金銭を徴収します。

これら借地権にまつわる権利義務関係をしっかり理解することで、「こんなはずじゃなかった…」という状況を事前に回避できます。次から具体的な決まりごとをみていきましょう。

借地権の存続期間(契約期間)と中途解約

【P.S.】「この家、買っていいのかな?」…迷わずご相談ください!

マイホーム購入をお考えでしたら、ぜひ個別相談(無料)をご利用ください。 多くの方から高い評価を得ている個別相談。まだ家を買うかどうか決まっていない方から、既に取引を進めている方までぜひお気軽にご利用ください!
家の買い方がさっぱり分からない
今の不動産屋さんに不信感がある
マイホームの失敗事例を知りたい
“損する家”を買いたくない etc…

※【実績】最高評価“来て良かった!”が96%超!