印紙税とは文書に課される税
印紙税とは、印紙税法に基づいて、課税文書に対して課される税金のことです。
不動産取引に関わる課税文書には、金融機関と結ぶ金銭消費賃借契約書(ローンを受ける際の契約書)や売主と買主の間で結ぶ不動産売買契約書などが該当します。
納税時期と方法
課税文書(契約書)を作った時に納税しなければなりません。
納付方法は、契約書に収入印紙を(切手のように)糊付けして添付し、その上からハンコを押します。
印鑑を押すのは収入印紙を再利用できないようにするためで、この行為を消印といいます。
一度きりで使えないようにする目的だけですので、会社印でなくても担当者個人の印鑑でも構いません。
不動産会社と取引をする際、相手(不動産会社)が社印を押していないからといって間違いではありませんので念のためです。
尚、消印を忘れ、それを税務署などが発見した場合、過怠税としてその貼り付けた収入印紙と同額を「過怠税」として支払うことになりますのでご注意ください。
印紙税の額
印紙税は、取引の種類やその取引金額に応じて税額が異なります。
契約書に関わる印紙税額
不動産購入においては、住宅ローンを組む時の銀行との契約書(金銭消費貸借契約書)、不動産を購入する際に売主との間で結ぶ不動産売買契約書に課税されます。
さらに、新築を建てる場合やリフォームをする際にも印紙税が課税されます。
不動産売却時には、買主との間で結ぶ不動産売買契約書に課税されます。
記載金額 | 金銭消費賃借契約書 (金融機関との契約) | 不動産売買契約書 (売主・買主間の契約) | 工事請負契約書 (リフォーム会社との契約) |
---|---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | 非課税 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 | 200円 | 200円 |
50万円以下 | 400円 | ||
100万円以下 | 1,000円 | 500円 | |
200万円以下 | 2,000円 | 1,000円 | |
300万円以下 | 500円 | ||
500万円以下 | 1,000円 | ||
1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 | 30,000円 |
5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 | 60,000円 |
10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 | 160,000円 |
50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 | 320,000円 |
50億円超 | 600,000円 | 480,000円 | 480,000円 |
記載金額なし | 200円 | 200円 | 200円 |
領収書に関わる印紙税額
不動産売却時には、売却代金を受け取った際に発行する領収書にも印紙税が課税されます。
しかし、売主が個人の場合、かつ、マイホームまたはセカンドハウスであれば、「営業に関しない受取書」となり印紙税はかかりません。
記載金額 | 売買代金の受取書 (売主が発行する領収書) |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
100万円以下 | 200円 |
200万円以下 | 400円 |
300万円以下 | 600円 |
500万円以下 | 1,000円 |
1,000万円以下 | 2,000円 |
2,000万円以下 | 4,000円 |
3,000万円以下 | 6,000円 |
5,000万円以下 | 10,000円 |
1億円以下 | 20,000円 |
2億円以下 | 40,000円 |
3億円以下 | 60,000円 |
5億円以下 | 100,000円 |
10億円以下 | 150,000円 |
10億円超 | 200,000円 |
記載金額なし | 200円 |
消費税抜きの金額に課税
消費税額が明確にわかる場合には、税抜き価格に対して上表の印紙税が課税されます。
具体的には、契約書や領収書に消費税が明記されている場合や、税抜き価格と税込み価格が別々に記載されていて、消費税が明らかに計算できる場合です。
逆にいえば、税込み価格だけを記載した契約書の場合には、税込み価格を基準に印紙税が課税されもったいないですので、消費税の記載があるかどうかチェックしましょう。
ただし、消費税だけの金銭授受に対して領収書を発行する場合、「記載金額なし」とみなされ、その額が5万円以上であれば印紙税額が200円かかります。
一通契約で印紙税を節約
不動産売買契約書を結ぶ場合、通常は売主と買主が原本をそれぞれ一通ずつ保管します。
ただ、それぞれに印紙税がかかってくるため、買主が一通保有し、売主がコピー(写し)を持つこともあります。
買主としては、ローンを組む際に金融機関へ提示したり、購入後の不動産登記で必要となったりと、売買契約書の原本が必要です。
しかし、売主は売却した後は基本的にその不動産とは関係がなくなりますので、原本はいらないため、それより印紙税を節約したいという思いがあります。
このように、売主・買主間での売買契約書を一通のみ作成する契約を「一通契約」と呼びます。尚、契約書に印紙を貼らない場合でも、契約自体は有効に成立します。
負担割合は折半または買主が全額
一通契約の場合には2つの考え方があります。
具体的には、「原本は買主が必要としているのだから買主が一通分の印紙税を全額負担、売主はコピーしか所持しないからゼロ」という考え方と、「売主・買主でそれぞれ半額ずつ負担」という考え方です。
実際の取引ごとにケースバイケースではありますが、基本的に買主のための原本である性質上、売主が全額負担となるケースは少ないでしょう。
コピーであっても課税対象になる場合がある
税務リスクとして、国税庁の見解では契約書を複数作成した場合の課税関係として、「契約の成立を証明する目的で作成された文書を課税対象とするもの」としています。
写し、副本、謄本などと表示された文書であっても、おおむね次のような形態のものは、契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかですから、印紙税の課税対象になります。
(1) 契約当事者の双方又は文書の所持者以外の一方の署名又は押印があるもの
(2) 正本などと相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることなどの契約当事者の証明のあるもの
つまり、コピーしたものに署名捺印や記名押印があったり、コピーに「原本と相違ない」旨の文言が記載されている場合はコピーであっても印紙税を納付しなければなりません。
課税対象とならないのは、以下のような場合です。
- 契約書の原本を複写機でコピーしただけで、署名や押印などがなく、かつ「原本と相違ない」「副本である」「写しである」などの文言がないもの
- 電子メールやFAXなどで電子データを送信した場合
一通契約は税務・法務リスクの両方を伴う
税務リスクとして、本来の印紙税に加えて2倍相当額を支払わなければならないケースがあります。
コピーに押印がある場合など、本来は課税しなければならないとみなされる課税文書に対して印紙税を納税していなかった場合です。
つまり、「正規の印紙税額×3倍」の過怠税を支払う必要があります。
尚、税務署などから調査される前に、自主的に申告した場合、「正規の印紙税額×1.1倍」にまで減額されます。正直者が得をする、ということですね。
法務リスクとして、万が一不動産取引後にトラブルとなった場合、一般的に原本とコピーでは証拠能力としてコピーが劣ります。
裁判などに持ち込まれた場合、原本を持っていない売主は弱い立場に追い込まれることがあります。
「売買契約書の原本を1通だけ作成することの是非(公益社団法人 不動産流通推進センター)」も指摘している通り、理論上は法律に即して直ちに問題とはならないと考えられます。ただし、後々の紛争を防止する観点からは、好ましいとはいえない方法でしょう。
【参考】印紙税を収める理由
契約書を作るだけで税金を納めなければならない印紙税。なぜ納めなければならないのでしょうか。
政府の見解としては、2005年の小泉純一郎総理(当時)の国会答弁が参考になります。
経済取引に伴い作成される文書の背後には経済的利益があると推定されること及び文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範な文書に軽度の負担を求める印紙税の性格を踏まえ、課税文書ごとにその文書の作成の起因となる経済取引の内容やその文書の作成実態等が異なる点を考慮していることによる
難しいことを書いていますが、かみ砕いていうと、「取引するからには利益を得る人がいるわけであり、また文書を作ることでその取引を安心して実施できて取引を行う人にとってメリットがあるのだから、税金を取らせて欲しい。取引の内容ごとに大きな負担とならない範囲で少しずつ徴収させてもらう」ということです。
「軽度の負担」との考えからか、納税方法も契約書類にペタッと収入印紙を貼って消印するという簡易な形式が取られているのかもしれません。
ただ、やはり不動産取引ともなると金額も大きくなり決して安いとはいえないですね。
また、取引の内容ごとに収入印紙の額を変えるという通り、不動産売買契約書や工事請負契約書など契約書(課税文書)の種類ごとに税額も異なります。
また、同じ種類の課税文書でも取引金額に応じて段階的に税額が決まっているのです。
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