ブローカー(不動産会社)と、有資格者のエージェント(社員)に分かれる

日本では物件を購入しよう(売却しよう)と考えた場合、まずは不動産”会社”に依頼をしようと思うことが多いのではないでしょうか。

しかし、米国ではブローカー(日本でいう不動産会社・宅建業者)と、そのブローカーと契約するエージェント(社員)は明確に分かれているという意識があります。

覚悟_ss事務所を持つことができるブローカー資格と、不動産営業をすることができるエージェント資格とが分かれています。

エージェントは全員、州から許可を得た有資格者であるプロなのです。

エージェントは成功報酬型で費用も自腹。会社から独立したプレーヤー

エージェントの多くは、成功報酬型(フルコミッション型)で不動産会社(ブローカー)と契約しています。

固定給をもらっているわけではありません。営業にかかった費用もエージェントが自己負担することが多いのです。

宅地建物取引士の資格がなくても販売営業に携われる日本の不動産会社とは異なり、会社というより個人の力量にすべてがかかっているのです。腕のいいエージェントはブローカーの間で引き抜き合戦が行われることもあります。

business-person_real-estate_buildings_sお客様目線でいえば、不動産会社に依頼をするという意識ではなく、これまでの実績などを基に個人のエージェントに依頼するのです。不動産営業は、会社より人なのですね。

尚、売主のエージェントを「Listing Agent」または「Seller’s Agent」、買主のエージェントを「Buyer’s Agent」と呼びます。

ちなみに契約が決まった場合の成功報酬は、収益をブローカーとエージェント折半したり、ブローカー30%、エージェント70%とするなど能力や力関係に応じて定まります。実力社会が徹底された業界なのです。

プレーヤーが分業化。効率的かつ客観的な取引が可能に

不動産会社と営業が分離しているように、アメリカの不動産取引では分業体制が整っています。

例えば、Appraiser(不動産鑑定士)やHome Inspector(住宅診断士)など多くの専門家が役割分担を行います。

日本の不動産取引でも、もちろん金融機関や司法書士業務などに分かれていますが、米国ではそれぞれ有資格者が利害関係を打ち切ってより厳格に機能しているというイメージです。

man_magnifying-glass_ss例えば日本の不動産取引であれば、住宅の担保評価は金融機関が、広さや築年数などを基に独自評価します。

一方、米国では州の許可を有するアプレイザー(不動産鑑定士)が、修繕履歴や設備状況なども加味した上で類似取引や再建築価格、収益還元法などを基に一つ一つ算定します。

餅は餅屋に任せ効率的に業務を行うという合理的な考えに基づいているのです。さらに、それぞれ第三者目線で客観的かつ相互に牽制する力学も働き、より安全に取引ができるといえるでしょう。

豊富な情報量を誇る不動産データベース「MLS」で物件格差なし

米国には、全米リアルター協会(NAR)が管理するMLS(Multiple Listing Service)という物件情報のデータベースが整備されています。

「日本にもREINSがあるから似たようなもんだね!」と思われるかもしれませんが、その情報の量や質は日本とは比べ物になりません。

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物件価格、広さ、写真などはもちろんのこと、登記情報や修繕・売買履歴(過去の価格データ)、災害リスクや税務情報など豊富な情報が登録されています。

情報を徹底的にオープンにするマインドが醸成されており、さまざまなデータが整備されわかりやすく提供されています。

また、NARが所属するブローカー(不動産事業者)やエージェント(販売員)しか見ることのできない情報もありますが、民間業者が個人向けに閲覧させるサイトも多く買主にとって情報を行き届かせる環境が整っているのです。

すべての物件情報がMLSに登録される。違反も厳しい

物件の網羅性は極めて高く、基本的にはすべての物件が漏れなく登録されています。

米国でもMLSが1990年代にIT化されるまでは、物件の囲い込みのようなことが行われていたようですが、今ではそのようなことは見る影もありません。

note-pc_woman_s例えば、ブローカー(不動産会社)が知り得た売り物件情報は原則、24時間以内に登録しなければなりません。非公開物件を持つことを厳しく禁じています。もちろんおとり広告なんて言語道断です。

MLSを利用する会員企業がそのようなことを行えば、罰金や不動産営業の肝であるMLSの利用剥奪、不動産業の免許(ライセンス)の停止処分がなされることもあるのです。

エージェントは物件情報提供ではなくアドバイザーが主な業務

豊富な物件情報が不動産業者やお客様に共有される米国の不動産取引。

そうなれば、買主が求めるのは物件情報の提供よりも、それ以外のアドバイスや売主側との交渉など目にはみえないサービスといえます。

具体的には、物件の内覧動向や、それを踏まえた上で購入にあたっての注意点やリスク洗い出しなどが求められています。

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買主側に立った交渉や、契約後のインスペクションや売主側から提供されたディスクロージャー情報をプロの目でしっかりと検証します。

買ってもいい物件かどうかを専門家として精査し、また購入プロセスをフォローします。安心安全な取引の遂行を主導する立場にあるのがバイヤーズエージェントなのです。

一方、売主側はセラーズエージェントにMLSに登録してもらい、広告の作成やオープンハウス、買主との交渉などを依頼します。できるだけ早くまたは高値で売れるよう、販売活動全般を依頼します。

仲介手数料を支払うのは売主だけ。6%程度をブローカーが分け合う

米国では不動産の購入者(買主)は仲介手数料を支払いません。

日本のように手数料に上限はありませんが、各州法のガイドラインなどによって、概ね6%とする州が多いようです。

そして、売主が6%の仲介手数料全額を売側のブローカー(仲介業者)に支払うことが多くなっています。

報酬を受け取ったブローカーは、買側のブローカーに半分を支払うという仕組みになっています。例えば7%を受け取った場合には、売主側のブローカーが4%、買主側が3%となったりもします。

売主が仲介手数料を全額負担する慣習が、良質な住宅ストックを形成

売主が事実上、買主側のエージェントに報酬を払う形となることは、一生に何度も不動産売買を繰り返す米国ならではといえるかもしれません。

売主側の気持ちに立てば「どうせ次に不動産を購入する時には仲介手数料を払わなくていい買主側の立場になるからお互いさまだ」という考えがあるのかもしれませんね。

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そのため買主側は、仲介手数料を払わないでいい分、インスペクションなど他の調査費におカネを使うことができます。

質の高い中古住宅がストックされる環境を売主買主全員で創っているともいえるでしょう。

個人間取引を抑制する効果も?エージェントを介して安全な取引が主流

さらにいえば、買主は仲介手数料を払う必要がありませんから、間にエージェントを介在させるデメリットはないのです。

むしろ無償でプロのアドバイスを聞くことができ、個人間取引を行うインセンティブも働きにくい構造になっています。

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これは、専門家が間に入らない危険な取引を排除することにもつながっており、安心安全な取引環境を醸成しているともいえます。

不動産取引の素人ともいえる買主に対して、不動産取引のプロであるエージェントがしっかりと寄り添っている様子がうかがえますね。

米国は契約後に買主の調査期間あり。購入後は買主の責任

米国では契約後に、買主が物件状況を詳細に調査することが一般的です(デューデリジェンスと呼ばれます)。

設備や電気系統、修繕の必要性などをホームインスペクター(住宅診断士)が調査します。

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またその他、シロアリ調査なども行うこともあります。加えて、売主から物件の状況を開示してもらい(ディスクロージャー)、それらから総合的に物件状況を検討します。

調査費用は買主負担ですので、インスペクションをするかどうかは買主が判断しますが、買主は仲介手数料の負担がないためその分余裕資金があり、多くの場合に実施されます。

日本でも2018年4月よりインスペクションを実施する取引が行われますが、米国では既に調査を行う慣習が当たり前にあるのですね。

日本は売主責任が重い。米国は買主責任が重い変わりに物件調査をしっかり

日本の場合、購入後には瑕疵担保といって万が一の場合には売主に責任が追及されることがあります。

しかし米国では、基本的に買主の責任とみなされ、その代わり契約後の一定期間、しっかりと調査をする場が設けられているのです。

打合せ1_s調査の結果、契約内容と物件調査結果が大きく異なる場合、買主は契約を取り消すことができます。

実際には、訴訟大国ですので契約決済後も買主が売主の責任追及することはあります。そのため、売主は保険に入っておくこともあります。

日米不動産取引比較のまとめ

日本に比べて分業化が進む米国の不動産取引。物件の情報量が豊富でその質も高く、物件よりも安心安全で客観的な取引環境の醸成に重きを置いているといえます。

必ずしもアメリカの取引方法が優れているというわけではありませんが、見習うべき点が多く含まれているとも感じます。

不動産会社・営業担当は物件情報を出すことが仕事ではなく、その図面からは読み取れない物件のリスクや資産価値、ファンナンスなど物件まわりのサービスこそ今後ますます重要になっていくでしょう。

私たちも、日本の不動産業界にどっぷりつかっていては見えてこない改善点やよりよい方策を今後も模索していきたいと考えます。

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