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国土は「都市計画区域」「都市計画区域外」「両区域外」の3つに分割
マイホームなどの建物を建てる時、どこで何を建ててもいいわけではありません。
きちんと国や地方自治体がどこをどのような街にするか計画し、その制限の中で住宅などを建てることになります。
その良い街を作る考えの大元となるのが都市計画法に基づく都市計画です。第2条に規定されている基本理念の通り、総合的な視点から健康で文化的な都市生活を確保しようとしていますね。
(都市計画の基本理念)
都市計画法第2条 都市計画は、農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念として定めるものとする。
都市計画区域は国や自治体がしっかり管理する地域
この都市計画において、日本の国土は大きく「都市計画区域」「”準”都市計画区域」「両区域外」の3つに分割します。
都市計画区域は、都道府県(複数の都府県にまたがる場合は国土交通大臣)が定めるものです。
ここに指定された区域はさまざまな規制がかけられ、国などがしっかりと管理しようとする地域です。
準都市計画区域というのは、都市計画区域ほど規制をかけて管理しない地域です。両区域外は、イメージとしては無人島や山奥など人が住むには適していないような地域です。
都市計画区域は区分区域でさらに3分割。地域地区・都市施設などによる制限も
この3つの区域の内、都市計画区域はさらに3分割されます(区分区域)。
また、準都市計画区域を含め、さらに細分化し(地域地区)、用途を限定していきます。
特に細分化で重要なのが後述する用途地域で、都市計画区域の市街化区域には必ず設定することになっています(△は必ずしも定めなくてよいものの定めることができる地域、×は原則として定められない地域を表します)。
日本国土の分割 | 区分区域 | 地域地区 (用途地域の設定) | 特別な制限 | |
---|---|---|---|---|
都市施設 | 地区計画 | |||
都市計画区域 | 市街化区域 | ○ | ○ | △ |
非線引区域 | △ | ○ | △ | |
市街化調整区域 | × | △ | △ | |
準都市計画区域 | - | △ | △ | × |
両区域外 | - | × | △ | × |
さらに、後述する通り、都市施設といって、道路や公園、福祉施設など生活するために必要となる施設については、あらかじめどこにどのような施設が建築されるか定められます。この施設の計画を妨害してしまうような建物は建てることができません。
加えて、都市計画区域ではその地区に応じたきめ細やかな街づくりとして、地区計画による制限が課される場合があります。
つまり、都市計画法に基づいて、日本の国土は上表のように分類されていくということです。
【区域区分】都市計画区域はさらに3つに分割
都市計画区域はさらに、「市街化区域」「市街化”調整”区域」「非線引区域(区域区分が定められていない都市計画区域)」の3つに分割されます。
市街化区域と調整区域に分けることを「区域区分」や「線引き」といいます。
市街化区域とは、すでに市街地(家屋や商業施設、商店街などが密集した地域)を形成している区域や、概ね10年以内に優先的・計画的に市街化を図るべき区域です。つまり、どんどん建物を建てていく地域です。
市街化調整区域とは、市街化することを抑えようとする区域です。
また、非線引区域とは、そういった区分がまだなされていない地域で、市街化を推進しようとも抑制しようとも定まっていない中間的な地域です。
線引きは都道府県の都市計画区域マスタープランで決まる
この線引きは、都道府県が定める「都市計画区域マスタープラン」(都市計画法第6条の2)によって決まります。
(都市計画区域の整備、開発及び保全の方針)
都市計画法第6条の2 都市計画区域については、都市計画に、当該都市計画区域の整備、開発及び保全の方針を定めるものとする。
また、市町村が独自に「都市計画マスタープラン」(都市計画法第18条の2)を定めることもあります。
これは、説明会やアンケートを実施し、必ず住民の意見を参考にしながら定めます。
(市町村の都市計画に関する基本的な方針)
都市計画法第18条の2 市町村は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想並びに都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に即し、当該市町村の都市計画に関する基本的な方針(以下この条において「基本方針」という。)を定めるものとする。
2 市町村は、基本方針を定めようとするときは、あらかじめ、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
【地域地区】市街化区域は用途地域で細かく分類
市街化区域は街を発展させようと建物をどんどん建てていこうとする区域です。
そこで、この地域をどのような用途に利用するべきかを細かく12種類に分けたものが「用途地域」と呼ばれるものです。
尚、用途地域は市街化区域のみならず、都市計画区域であれば非線引区域の他、準都市計画区域にも定めることはできます。その中でも、特に生活に関わりが深いのが市街化区域といえるでしょう。
用途地域は建物の種類を限定する
市街化区域には必ず用途地域を定めて効率的な土地利用をします。
逆に言うと、市街化区域では勝手な住宅を建てることはできず、まずは用途地域などの制限を把握しておく必要があるのです。
例えば、用途地域の1つである工業専用地域に割り当てられた地域には住宅は建てられず、第一種低層住居専用地域には大学や病院が建設されません。
用途地域の他にも地域にさまざまな制限を課す地域地区
用途地域による分類をしても、もっとその地域を詳細に分類したい場合には、特別用途地区など部分的に規制をかけることができます。
このように、どのような地域や地区としていくかを細かく定めたものを総称して「地域地区」と呼び、以下の通り細かい分類方法があります(都市計画法第8条)。
No | 地域地区 | 補足・主な法的根拠 |
---|---|---|
1 | 用途地域 | 12種の用途を定めた地域(市街化区域に必ず設定) |
2 | 特別用途地区 | 用途地域内で特別な目的のために、制限緩和または制限・禁止を定めた地域・地区 |
特定用途制限地域 | 商業専用地区など用途地域をさらに制限するための地域 | |
3 | 特例容積率適用地区 | 未利用の容積を他の敷地に移し土地を高度利用する地区 |
高層住居誘導地区 | 高層住居の建築を促進し、利便性を高める都心地区 | |
4 | 高度地区 | 建物の高さの最低・最高限度を定めた地区 |
5 | 高度利用地区 | 土地を高度に利用するための地区 |
特定街区 | 超高層ビルなどを建設する都市基盤が整備された地区 | |
6 | 都市再生特別地区 | 都市再生特別措置法第36条第1項 |
居住調整地域 | 都市再生特別措置法第89条 | |
特定用途誘導地区 | 都市再生特別措置法第109条第1項 | |
7 | 防火地域 | 建物構造を厳しく制限する防災地域 |
準防火地域 | 防火地域より規制緩和された防災地域 | |
特定防災街区整備地区 | 密集市街地整備法第31条第1項 | |
8 | 景観地区 | 景観法第61条第1項 |
風致地区 | 自然美を維持保存するための地区 | |
9 | 駐車場整備地区 | 駐車場法第3条第1項 |
10 | 臨港地区 | 港湾の管理運営を円滑に行う地区 |
11 | 歴史的風土特別保存地区 | 古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法第6条第1項 |
歴史的風土保存地区(第1種・第2種) | 明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法第3条第1項 | |
12 | 特別緑地保全地区 | 都市緑地法第5条 |
特別緑地保全地区 | 都市緑地法第12条 | |
緑化地域 | 都市緑地法第34条第1項 | |
13 | 流通業務地区 | 流通業務市街地の整備に関する法律第4条第1項 |
14 | 生産緑地地区 | 生産緑地法第3条第1項 |
15 | 伝統的建造物群保存地区 | 文化財保護法第143条第1項 |
16 | 航空機騒音障害防止地区 | 特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法第4条第1項 |
航空機騒音障害防止特別地区 |
「都市施設」と「地区計画」は特別な制限
都市計画区域や区分区域、地域地区で国土の利用法がさまざまに制限されますが、都市計画法では都市施設と地区計画という特別な決まりもあります。
都市施設とは人の生活に不可欠な施設
都市施設とは、以下のような施設です(都市計画法第11条)。
都市施設の種類 | 具体例 |
---|---|
交通施設 | 道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルなど |
公共空地 | 公園、緑地、広場、墓園など |
供給・処理施設 | 水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場など |
水路 | 河川、運河など |
教育文化施設 | 学校、図書館、研究施設など |
医療・社会福祉施設 | 病院、保育所など |
これらの施設は公共性が高く、地方自治体が策定する都市計画においてどこに何を作るかなどを計画し、告示します。
この建築を拒むような工事がなされては困るため、地域地区の制限の他にも都市施設による規制がかかります。
地区計画はその地区に応じた小さな街づくり
”都市”計画に対して、”地区”計画は、都市計画区域内で住民の合意に基づいて、その地区の特性にふさわしい街づくりを実現するための計画です(都市計画法第12条の4、第58条の2・3)。
具体的には、建築物の用途や、建ぺい率の最高限度、容積率の最高・最低限度、敷地面積の最低限度、建物高さの最高・最低限度、などを市町村が定められます。
この場所に住宅を建てる場合には、この地区計画に従って建築する必要があります。
都市計画図や用途地域を閲覧する
実際に都市計画図などをご覧になる場合は、自治体の都市計画課などで閲覧できます。また、インターネット上でも公開されている場合があります。
例えば板橋区の都市計画図や用地地域はウェブ上で広く一般に公開されています。
都市計画のまとめ
日本の国土がどのように分類され、制限されているのか大雑把にみてきました。
まずは都市計画区域を指定し、その中で市街化区域と市街化調整区域を設定します(区分区域)。市街化調整区域は用途地域を設定し、詳細に地域を分類します。さらに用途地域での制限でも足りない場合には、その他の制限を課します(地域地区)。
加えて、公共性の高い施設(都市施設)や、その地区に沿った街づくり(地区計画)によっても建築できる建物は制限が課されます。
このように、不動産は多くの規制に縛られており、思い通りの建物を勝手に建てることができない場合があることを理解しましょう。
次は、地域地区の一つで、市街化調整区域の分割に非常に大切な用途地域をみていきましょう。
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