目次
借地権の種類とその比較。更新を防ぐ場合は定期借地権
借地権には旧法と新法があり、新法では更新契約を地主が拒絶できる(更新なしの)定期借地権も定められました。
これによって、「一旦土地を貸すと半永久的に戻ってこない」という地主の不安を払拭できます。
具体的に借地権の種類によってどのように条件が変わってくるのかみていきましょう。
新旧の普通借地権と定期借地権がある。定期借地権はさらに3分類
借地権には、新法の普通借地権・旧法の普通借地権・定期借地権の大きく3つがあります。
それぞれ、更新の有無や契約期間、返還の方法、契約方法などに以下の表の通り違いがあります。
期間満了に伴う更新があるものが、(普通)借地権で、新法借地権と旧法借地権の2つがあります。
更新がなく一定期間のみ借地権を与えるものを定期借地権といい、普通定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権の3種類があります。
借地権の種類 | 更新 | 契約期間 | 返還方法 | 契約方法 |
---|---|---|---|---|
普通借地権 (新法) | あり |
| 定めなし | |
普通借地権 (旧法) |
| |||
普通定期借地権 | なし | 50年以上 | 原則、更地で返還 | 公正証書など |
事業用定期借地権 (非居住用に限る) | 10年以上50年未満 | 更地で返還 | 公正証書 | |
建物譲渡特約付 借地権 | 30年以上 | 建物を地主に譲渡 | 定めなし |
事業用定期借地権は、事務所や店舗などの非居住用の建物が建つ(建っている)土地の場合にのみ適用されますので、借地権者(借主)が人が住むための賃貸マンションを経営する場合にはこの契約は不可です。
建物譲渡特約付借地権は、その名の通り、契約満期に伴って、地主(土地所有者)に建物を買い取ってもらえる(売却できる)契約形態です。
事業用定期借地権は公正証書での契約が必須
契約方法もそれぞれ異なります。特に注意が必要なのは事業用定期借地権の場合で、これは公正証書による契約が必要です。
普通定期借地権の場合にも公正証書が望まれますが、公正証書”など”と記載されている通り、通常の書面契約でも可能です。
尚、「定めなし」の場合は自由な書式でも構いませんし、極論をいえば口頭契約でも成立するということです。
借地契約は法律で定まった年数を下回ることはできない
借地権には普通借地権や定期借地権などの種類があり、いずれの借地権であっても、法律で借地権の存続期間(契約期間)が定まっています。
また、借地権は相続できるため、借地権者が死亡した場合にもその相続人に契約期間が引き継がれます(この際に名義書換料などを地主が取ることはできません)。
法定期間を下回る年数の契約は強制的に法定期間に。上回る契約は約定期間が適用
例えば、新法借地権(現行の普通借地権)では30年は借地権を存続させるように法律で定められています(法定期間)。
もしこれを下回る契約をしても、30年の契約をしたことになります。
一方で、30年以上の契約を結んだ場合には、その年数が認められます(約定期間)。
さらに存続期間を定めなかった場合には法定期間が適用され30年間の契約をしたとみなされます。
つまり、地主(借地権設定者)と借主(借地権者)が20年の契約をした時は強制的に30年、50年の契約を締結した場合には50年、期間を定めなかった時は30年の契約をしたものと法律上解釈されます。
旧法借地権は堅固建物と非堅固建物で契約期間の制約が変わる
旧法借地権の場合、(S)RC造などの頑丈な「堅固建物」であれば法定期間が60年、S造(鉄骨造)や木造など頑丈さに劣る「非堅固建物」であれば30年と定められています。
少しややこしいのですが、旧法借地権の場合は、お互いに合意の基に契約で定めた期間(約定期間)であれば、堅固建物は30年以上、非堅固建物は20年以上であれば認められます。
つまり、RC造の建物が建つ土地に対して期間の定めのない借地契約を結んだ場合、法定期間(堅固)ですので60年間の契約を結んだとみなされ、お互い合意の基に40年間としましょうとした場合には40年となります。
ただし、お互い合意の基でも20年間などと堅固建物が30年を下回った場合には、期間の定めのない契約を結んだと解釈され、強制的に60年の契約となります。
更新期間にも定めがある。新法借地権は更新回数によって年数が変化
借地契約の期間満了に伴い、この契約を更新する際、新法借地権であれば1回目の更新は20年以上、2回目以降は10年以上の期間を定めるよう法律で定められています。
また、旧法借地権の場合には、堅固・非堅固建物で分類され、堅固であれば30年以上、非堅固の場合には20年以上の借地権の存続期間を定めて更新契約を結ばなければなりません。
中途解約は原則不可。借主(借地権者)も借地契約を解約できない
借地権は長い期間、土地を借りることを法的に保護するものです。
地主は土地を取り返したいと思っても、もちろん契約期間中は借主に貸し続けなければなりません。
一方で、借主(借地権者)が「もう土地を使わなくなったから解約したい」と申し出た場合にも、これに地主が応じる義務はありません。
借地契約期間は地主(土地所有者)としても、長期にわたり地代を徴収して収益をあげることを当てにしているため、いきなり解約されると地主も大変困ってしまうのです。
中途解約の特約があれば、借主(借地権者)は解約できる。ただし地主は無効
(借主に有利な)中途解約ができる特約を定めていれば話は別です。
この場合には借主が解約を申し入れることで、解約できます。解約までの期間の定めがない場合は、申し入れを行ってから1年後に解約できます。
一方で、借地借家法は借主に不利となる契約は無効です。
仮に地主が中途解約できるという特約が定められていても、その契約は無効とされ地主は貸し続けなければなりません。
民法の大原則、双方の合意による解約はいつでも可能
地主も借主も双方が解約したいという意思があり、合意できればもちろん解約できます。
借地借家法ではあくまでも地主が一方的に借主の権利を侵害する行為を禁じているのであって、双方が合意するのであれば自由に契約内容を変更できるのです。
【例外】更新後に建物が滅失したら中途解約できる(新法のみの規定)
借地契約においては、原則契約期間中には中途解約ができません。
また、借地契約を初めて結んでから更新までの間は、例え建物が消滅しても借地権は存続し続けます。
ただし、借地借家法(新法)では、契約を更新した「後」に建物が滅失した場合には解約を申し入れることができるとしています。
借主(借地権者)は更新後に建物が滅失して3カ月で解約できる
更新後に、火災や老朽化などで、建物を取り壊した場合には借主が地主に対して解約を一方的に申し入れることができ、3カ月経過すれば借地権が消滅します。
これは、建物が滅失しても地代を長期間払い続けなければならない借主を、その義務から解放しようという(保護する)ものです。
地主(借地権設定者)は、借主が更新後に無断で建物を建てれば解約できる
借主が更新後に、地主の承諾を得ずに契約の残存期間を超えて存続するような建物を建てれば、地主は借地権の消滅を一方的に申し入れることができます。
その場合、申し入れから3カ月経てば契約が解除されます。
いくら借主を保護する借地権でも、基本的なルールを守らないで地主の承諾なく勝手に建物を建てたら、地主としては安心して土地を貸し出せませんね。
その場合には、借主を保護する対象ではないと判断されるのですね。
【例外の例外】中途解約について、救済措置も用意されている
例外規定によって中途解約ができることを説明しました。
これ以外にも、事前にお互いが取り決めていたり、やむを得ない事情がある場合に借主を救済する例外の例外もあります。
お互いに解約の申し入れをしない特約を付けることができる
契約時に、お互いにこれらの解約を申し入れないという特約を付けることができます。
この特約がある場合にはたとえ建物が滅失しても解約できません。
ポイントは、「お互いに」というところで、「地主だけ」「借主だけ」一方的に特になるような規定は許されません。
やむを得ない事情で建物を建てた場合には裁判所が救済してくれる
もしどうしても建物を建て替えなければならないという事情があった場合を考えましょう。
地主が頑としてそれを承諾しなかった場合、借主が建物を建ててしまえば泣く泣く借地権を放棄しなければならなくなります。
その状態を救済するために、契約更新後に契約残存期限を超えて存続する建物を再築したことについて、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える場合があります。
裁判所が許可するためには、地主や借主が土地を必要とする事情や、建物が滅失された経緯、それまでの地主と借主の関係性、地代の支払い状況などを総合的に考慮します。
【補足】民法の”最長で”20年という規定を覆して借地借家法を優先
借地借家法では、「最低」30年など、借主(借地権者)が安心して土地を借りられるような規定がなされています。
一方で、民法においては、借地権を含む賃借権は20年を超える契約を定めても、強制的に20年に短縮される規定があります。
(賃貸借の存続期間)
民法第604条 賃貸借の存続期間は、二十年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、二十年とする。
2 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から二十年を超えることができない。
つまり、借地借家法では、借地権や借家権の場合に民法を超える例外規定を設けており、かなり踏み込んで借主を保護しているのです(借地借家法が優先適用されるため民法の20年までという規定は借地権・借家権にはおよびません)。
その他、農地や採草放牧地の場合には農地法による特別規定があるなど、場合に応じて民法に優先する特別規定が設けられているのです。
借地権の存続期間(契約期間)のまとめ
借地契約は、原則30年間という長い契約期間となります。
また、更新後の契約期間も20年や10年などその縛りは残っており、基本的に長期的な視野で契約を結ばなければなりません。
どうしても不安な場合や、次の世代には土地を返してあげたいと考える場合には、定期借地権という方法もあります。普通定期借地権は50年以上の超長期契約ですが、長い将来、確実に土地を返還してらうためには一案となるでしょう。
また、基本的には中途解約は、地主はもちろん土地の借主もできません。ただし、更新後に建物が滅失した場合などには救済措置が設けられています。
次は、トラブルの温床ともいえる更新について、どのような場合に地主が更新を拒絶できるのかなどについてみていきましょう。
【P.S.】失敗しない家の買い方を2時間でマスター!【大好評セミナー】
現在「家の買い方セミナー」(無料)を開催中です。
多くの方から高い評価を得ているこのセミナー。まだ家を買うかどうか決まっていない方から、既に取引を進めている方までぜひお気軽にご参加ください!
※【実績】最高評価“来て良かった!”が98%超!