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成約時の仲介手数料しかもらえない
売主と買主の間に入る不動産会社。例えば1億円の不動産売買が成立すれば、その1億円は売主が受け取ります。
不動産会社はその売買金額の「3%+6万円(税別)」を上限とした仲介手数料のみ受け取れます(1億円の売買の場合、仲介手数料の上限は306万円(税別))。
これは宅地建物取引業法第46条にも規定されており、媒介業務に関して行った仕事の対価として、これ以外の報酬をもらうことは禁じられています。
買主側の仲介業者も売主側の味方になってしまう
報酬金額よりも、注目してほしいのは「不動産売買が成立した時に限り」仲介手数料をもらえるということです。つまり、どんなに汗をかいたとしても、契約が成立(売買金額が確定)しなければ報酬は一切受け取れないのです。
そうすると、買主側に立って売主側と交渉すべき客付仲介業者であっても、買主に契約を促すことになり悪いことやリスクを言わず、不動産のいいところばかりいうようになるのです。
売主側の仲介業者が売主の利益のために、不動産購入のメリットを訴求することは当然の行為です。しかし、買主側の仲介業者はそれを冷静に分析しリスクを洗い出すことが、買主の利益を守るために本来重要な役目の一つです。
しかし、その買主側の仲介業者もいくら分析したり売主側と交渉しても、契約が成立しないと報酬がゼロなのです。
だから売主側のいうことをそのまま受けて、買主側に「この物件はやっぱりお買い得なので、売買契約しませんか」と、売主側の味方になってしまうことがあるのです。
両手取引が生む、成約へのさらなるインセンティブ
売主側の仲介業者と買主側の仲介業者が分かれ、お互いに牽制しあう片手取引が健全な姿でしょう。
少額の消費財を買うのであれば仲介業者を挟む必要はないと考えられますが、高額であることに加え、専門的な知識が要求される不動産取引です。プロである仲介業者を間に挟み、そしてプロ同士も健全なプレッシャーを感じながら業務を行うことが、安心安全な取引につながるでしょう。
しかしながら、売主と買主に1社の仲介業者のみが入る両手取引があります。これは、売主と買主双方から仲介手数料を得ることができるため、不動産会社としてはなんとしても契約を成立させてたいという極めて強いインセンティブが生まれます。
尚、両手取引は取引スピードがあがり、効率的な売買がなされるなどメリットもあり、それ自体否定すべきものでも違法な取引でもありません。問題は、仲介する不動産会社に売主も買主も頼らざるを得ず、情報操作をし悪用することです。
特に、売主や買主の利益を度外視して、不動産仲介業者の利益のみを考えた強引で危険な取引である「囲い込み」が起こる場合です。
また、片手か両手かを不動産会社から売主・買主に告知する義務もなく、それを知らされず契約することもあり、通常の取引時と比べて成約金額が増減してしまうリスクをはらんでいます。
不動産屋と売主は売買契約までがゴール。買主は契約がスタート
不動産屋に行って契約を急かされたり、強引に話を進められる、購入後に態度を変え話を聞いてくれないなど不快な思いをされる方は少なからずいらっしゃいます。チャラチャラした営業担当が多いともよくいわれる業界です。
これは不動産会社にとっては成約がゴールであり、契約成立に結び付けようと過度にいいところばかり話をしたり、強引に契約に持ち込もうとする動機が働くためです。
買主にとっては契約してから新たに始まる快適なお暮らしが目的であり、慎重に不動産を検討する必要があります。お互いのゴールにずれが生じているのです。
つまり、パートナーであるはずの仲介業者(エージェント)が、まったくお客様の方をみておらず、むしろ見方によっては敵対関係にあるともいえるのです。
買主にとっては数度、不動産会社にとっては日常の不動産売買
お客様(買主)にとって、不動産取引は数多く経験するものではありません。「一生に一度」の時代から複数回の時代に移り変わっていく兆しがあるとはいえ、一生に10回も売買を繰り替えす人はまれでしょう。
一方で、不動産会社にとって当たり前ですが不動産売買は日常茶飯事です。一回で大きな金額が動く取引、買主が専門的な知識を持たず不慣れな取引に対して「こんなものかな?」と思うことを見越して、強引に契約を結ばせることもあります。
「とりあえず契約させときゃ、後はまるめこめば分からないだろう。余計なカネも時間もかかる裁判なんてまず起こさないだろう」と心の中でニヤついているかもしれません。
一度で大きな金額が動く不動産取引、誰しも大きな買い物で失敗したくありません。そして不動産屋の視点に立てば一度で大きく儲けられるともいえ、売り抜けたいという思いが働きやすいものです。分からないことや不安な点はその都度、納得するまで徹底して聞くようにしましょう。
不動産屋から身を守る対策
分からなければこまめに確認する
以上でみてきた通り、成約への動機づけが強く、結果として不動産取引の構図が売主に強い構造であることを理解しました。
だからといって悪質な業者ばかりではないでしょう。お客様のために誠心誠意働く不動産会社が多いと考えます。しかしながら、万が一に備え、その構造を理解しておくことは大切です。
まずは恥ずかしがらず不明点や不安点を素直に聞くことが第一歩です。不動産取引に慣れている個人の消費者は多くありません。一方で、不動産会社はそれが仕事であり、細かい説明をせずともお客様がわかっていると考える場合もあるかもしれません。
お互いの立場や背景が異なることが、悪気はなくとも、誤解や疑念が生まれる原因ともなります。分からなないことやあやふやなことを曖昧にせず、その都度聞くことで不動産会社も手を抜けなくなるでしょう。
不動産会社を変更する
それでも対応が改善しない時や、どうしてもソリが合わない場合、不動産会社そのものを変えることも一つの案です。不動産会社は基本的に同じ物件を取り扱うことができ、自由に変えられます。
売主に強い不動産取引構造である一方、買主は物件や不動産屋に縛られることなく、自由に選ぶことができる権利、NOと言う自由が与えられているのです。
そして不動産会社は他社に流れることが一番大きな痛手です。どうしても納得ができない場合は他社に鞍替えする手段を持っているだけでも安心できますし、業界構造を理解していることを不動産屋に印象付けることで、不動産屋を牽制することもできます。
また、営業担当者に不満があるけど不動産会社はどうしても変えたくないという場合には、責任者(上司)に直接苦情を入れましょう。基本的に、不動産会社は案件ごとに担当者がつき、1人の担当者であなたを対応するため、上司が細かな状況まで把握していない場合があります。
会社として、お客様が他社へ流れることや問題なく進んでいた案件を営業担当個人の問題で破談にする可能性があるとわかれば、別の担当者をつけたり責任者自ら担当してくれるでしょう。
トラブルが起これば第三者相談窓口へ
不動産トラブルが起こった時、どうしても専門知識に乏しい消費者は不動産屋のいうことに言いくるめられる場合があります。
そんな時には、公的な機関に相談しましょう。特に不動産取引におけるトラブルには、東京都の場合「不動産相談(東京都都市整備局)」に相談に行ってみるとよいでしょう。その他の道府県の場合にも、それぞれ相談窓口が設置されています。
弁護士に相談したい場合には、「法テラス(日本司法支援センター)」も窓口として利用できます。
また、多くの不動産会社は業界団体(協会)に加盟しています。業界団体は、地域社会への貢献や不動産業界の発展のために尽力しており、万が一トラブルがあった際にはこの業界団体に相談すれば解決することもあります。
その不動産屋が加盟している業界団体に直接相談してみましょう(以下に業界団体の一部を掲載します)。
売主優位な不動産取引構造のまとめ
ここでは、なぜ不動産屋が契約を強引に進めてくることがあるのかについて、売買契約成立に向けたインセンティブが強く働く構造を理解しました。
ほとんどの不動産会社はまっとうに取引を行っていると思いますが、一部には悪質な業者もいます。取引構造を理解することはご自身の身を護るための第一歩です。しっかりポイントを押さえておきましょう。
そして、不動産屋をあまり怖がり過ぎず、おかしいと思うことははっきりとお伝えできる友好な関係を築きましょう。不動産屋はお客様のパートナーです。そして、自分に合わない場合には変えることもできます。トラブル時には公的な相談窓口もあります。
遠慮せず、そして相手への配慮も忘れず、心から納得できるお取引を実現しましょう!
【P.S.】「この家、買っていいのかな?」…迷わずご相談ください!
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