地主(土地所有者)が普通借地権の更新を拒絶するには正当事由が必要

更新があるのが新旧の(普通)借地権です。

借地契約が期間満了を迎えた時、地主も借主もお互い合意の上で、期間を更新する場合(合意更新)にはなんら問題はありません。

もし地主(土地所有者)は自分で土地を使うために「更新をしたくない(更新を拒絶したい)」と思った場合、地主側に「正当事由」がなければ借主が使い続けることができます。

土地の賃借人は更新したいと請求するか、土地を使い続けるだけで更新できる

借主(借地権者)は、更新をしたいと請求するか、もしくはその土地を使い続ける(土地に居座り続ける)だけで、一方的に借地契約を更新したとみなされるのです。

旧借地法も現行の借地借家法も、土地を借りている借地権者にかなり強い権利を与えています。

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土地の借主に「こういう事情があるので土地を返してください」とお願いしなければならないのです。

正当事由が認められるにはハードルが高い。立退料も補完要素に留まる

正当事由が認められる要件には、地主(土地所有者)が土地が必要な事情や、借地を行った経緯、土地の利用状況などが総合的に判断されます。

揉めやすい点でもあり、裁判も多く実施されてきた経緯があります。

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特に、重要視されるのが地主と借主が土地を利用する必要性です。例えば地主自身やその親族が生計を立てるため、貸している土地を返してもらわなければならないといった地主側の事情があれば、正当事由と認められやすくなります。

また、借主が長期間にわたり建物を使用していない場合や、多数の不動産を所有しており特段その土地を地主に返しても借主が困らない場合なども立証できれば更新拒絶ができる可能性が高まります。

例えば以下の場合などは認められる可能性が高いかもしれません。

  • 地主が貸していた土地を返してもらわないと困窮する状況にある
  • 一方で、借主は借りている土地がなくてもそれほど生活に影響はない。土地を物置として使っている程度などで活用度合いが低い
  • 借主は、地代の支払いを遅延することが多かったなど、不誠実な面が多かった

立ち退き料の支払いは、更新を拒む正当事由を補完する

土地を返してもらえれば、地主から貸主に財産上の給付(立退料や明渡料)を行うことは、正当事由を補強します。

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実態として、なかなか地主の要求が通ることは少ないといえ、それを阻止するためには定期借地権として契約することが安全でしょう。

「建替え更新」に注意。再築したら20年間借地権が保証される

借地権の契約期間中に、借主(借地権者)が「建物を建て替えたい」と申し出て、地主(土地所有者)がそれを承諾するとします。

その建物が、契約の残存期間を超えて存続する建物であったとすれば、借主(借地権者)は「承諾日」または「再築日」のどちらか早い方から20年間は借地権が保護されることになります。

建築・工事現場1_sつまり、(30年間の借地契約を結んでいて)20年目に「建物を建て替え(再築)したい」との借主(借地権者)からの申し出があった場合に、地主が「OK」と承諾すればその日から20年間借地権が存続するのです。

30年間で期間満了となったものが、少なくとも40年間は借地権が保証されることになり、これを「建替え更新」などと呼びます。

増改築や、更新前に20年が到来した場合には適用外

再築の場合に適用されるため、単なる増築ではこの規定は適用されません。

また、5年目に再築した場合には、そこから20年間の借地権を保証しても25年目で借地権の保証が切れます。

ですので、もともとの借地契約期間通り30年間で期間満了となります。

地主は2カ月間放置すれば承諾したとみなされる

この建て替え更新は、もともと地主が「建て替えてよい」と承諾した場合に適用されます。

地主が承諾したということは、その建物がまだ使えるのに「更新せずに出ていけ!」などと言われたら、土地の借主は多大なる不利益を被ってしまいます。

注意点として、地主の承諾がなくとも、地主が2カ月以内に建て替えに対する異議を述べなければ、地主が再築を承諾したものとみなされます(みなし承諾)。

建物が存在しない場合には法定更新を阻止できる

これまでみてきたような合意更新以外の更新、つまり請求更新や居座り更新、建替え更新などを法定更新と呼びます。

この法定更新が認められているのは、土地の上に建物が存在している場合です。更新時期に建物が存在しない場合は、借地人(借主)からの更新請求はできません。

%e6%9b%b4%e5%9c%b0%e3%83%bb%e5%9c%9f%e5%9c%b0_sつまり、借主が建物がなくとも土地をなんらかの用途で使用し続けている場合、法定更新自体が適用されておらず、地主が更新を拒絶することができます。

拒絶する際には、(現行の民法や旧借地法において)地主が異議を唱える必要がありますが、そこに正当事由は必要とされず、異議さえ述べれば更新を強制的に拒絶できます。

更新契約をする場合にも、地代や更新料に関するトラブルが多発…

借地契約は30年間などの超長期の契約であり、その間に経済状況も変わり、更新時期には従前の地代と大きく相場が変わっていることも多いものです。

また、更新料の支払い有無やその水準でも揉めることがあります。

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契約当時の状況なども不明瞭となってお互いが円満に合意することも難しくなることがあります。

地代や更新料で揉めたらとりあえずこれまで同様の金額を払う

地代の増減について話し合いで解決する場合や、裁判の調停で決着させる場合でもいずれにせよ時間がかかるものです。

%e7%8f%be%e9%87%91%e6%94%af%e6%89%95%e3%81%86_s尚、地代の合意ができない場合、裁判所の調停委員は過去の地代の水準(安さ)などはあまり考慮せず、現在の相場で調停する傾向にあるといわれています。

いずれにせよその間、「相当と認める額」の地代や更新料を支払うことになります。相当と認める額というのは一般的に、これまで支払ってきた額ということです。

支払いを続けないと滞納扱いで借地契約が解約される恐れあり

話し合い中であっても支払いがない場合には、地代の滞納の扱いで契約違反になり強制的に立退きを迫られる場合がありますので注意しましょう。

また、地主が「その地代を認めた覚えはない!」といって地代の受け取りを拒否した場合にも、払わないでいると、滞納とみなされ立ち退きの正当事由を地主に与えかねません。

最悪、借地権が解除される恐れがありますので注意しましょう。

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つまり法務局に対して、「地主が受け取ってくれないけど、私は支払い意思があるから、法務局さん地代を預かってください」という手続きです。

供託手続きは個人でも十分できる簡単なものですが、面倒くさいという方は不動産業者などの専門家に委任して代理でやってもらうこともできます。

更新料の支払い義務は法的にはないが、地域の慣習に従うのが通例

更新時に問題となるのが、地代とともに更新料です。

その額以前に、支払い義務があるのかどうかということが問題になることも多いものです。

law_s土地賃貸借契約の更新料支払い義務については、法律上借主に支払い義務はありません。

ただし、更新料の合意がある場合、およびその地方に更新料支払いの慣習がある場合は支払い義務があるとみなされるのが一般的です。

支払い義務がある場合に支払いをしなければ契約解除の恐れ

特に契約書に更新料支払いの合意があるなど、支払い義務があるとみなされる場合、その金額が「相当」と考えられれば支払い義務を認めるのが判決例や学説で一般的なところです。

更新料の支払いを拒めば契約違反として借地契約を解約される可能性があるため注意しましょう(解除を認めた最高裁判決もあります)。

支払い義務がない場合に支払いをしなければ法定更新に

その地域に更新料を支払う慣習がないなど、支払い義務がないと考えられる場合には払わなくともそのまま借り続けられます。

つまり、それでも地主がその対抗手段として契約の更新を行わい場合には法定更新となり、従前と同様の条件で借地契約が更新されたものと法的にみなされます。

地代や更新料の相場は諸説あり地域にもよる。両者の合意が大原則

地代や更新料の相場にはさまざまな考え方や計算方法があり、基本的には両者の合意に従うべきものでしょう。

借地契約期間中に経済情勢の変化や地価の上昇・下落、周辺環境の変化などによって、地代も定期的に増減されることがあります。

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地主としては「儲けているんだから少しくらい私にも利益を還元してくれ」ということなのでしょう。

一方で、借主としてはリスクを負って(毎月地代を払って)事業運営しており、両者の適切な着地点を探るのは簡単ではないですね。

地代(土地の賃料)の相場の目安は「固都税×3~5倍」

地代(土地の賃料)の計算方法は、様々な方法があります。不動産鑑定士に依頼するのが一番確実です。

例えば、固定資産税などの公租公課に一定の掛け率を乗じた「公租公課倍率法」や、周辺賃貸事例を参考に地代を定める「賃貸事例比較法」などです。。

これが正しい計算方法というものはなく、複数の方法の平均値をとったり、どれか一つを定めてたりして、これまでの経緯も含めながらお互い納得のいく水準で合意します。

特に、公租公課倍率法は計算が簡単で分かりやすいことからよく用いられます。つまり、地代の目安として以下の式で求められます。

地代(年間)=(固定資産税都市計画税)×3~5倍

毎月の地代は、上の式で算出された額を12で割れば目安がでます。

例えば、固都税が年間30万円の土地の場合、年間地代は「90~150万円」(=30万円×3~5倍)となり、地代(月額)「7.5~12.5万円」(=90~150万円/年÷12カ月)となります。

更新料の相場の目安は「更地価格×3~6%」

更新料の計算方法も、地代同様、これが唯一正しい方法などというものはありません。また、地域によってもその水準は大きく異なります。

一般的には以下の式で求められる更新料がよく用いられます。尚、借地権割合は、相続税路線価図に記載されています。

更新料=更地価格×借地権割合×5~10%

例えば、土地の更地価格が3,000万円、借地権割合が70%の場合、更新料「105~210万円」(=3,000万円×70%×5~10%)が目安となります。

または、更地価格の3~6%程度という場合もありますが、借地権割合を60%と考えているのと同じこと(3~6%=60%×5~10%)で、基本的な考え方は同じです。

更新料=更地価格×3~6%

さらに、年額支払地代の4~8年分程度という考え方もあります。どれを採用するかはケースバイケースです。地主と借地権者のお互いの合意の下、円満に決めたいですね。

借地の更新料相場の計算式は?日ごろの良好な関係がなにより大事!

【補足】新法借地権と旧法借地権の違い。期間が短く更新拒絶も明確に

旧法借地権では、初めの契約期間をマンションなど堅固な建物の場合には法定期間が60年間も定められており、更新も30年以上と長いものでした。

あまりに長期間であるため、新法借地権ではそれぞれ30年と、更新後は1回目のみ20年・その後10年刻みと地主に配慮した形になっています。

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なかなか拒絶ができない状況だったものを、新法借地権ではある程度正当事由の中身を明確化し、立退料の給付なども一定程度、考慮するなど柔軟な姿勢に変化しています。

なにより定期借地権という概念が導入され、更新をしなくてよいことがあらかじめわかっている借地権が創り出されたことが地主への配慮を象徴しているといえるでしょう。

法定更新と地代・更新料の相場のまとめ

借地権はとても強い権利を借主に与えており、地主が更新を拒むには正当事由が必須です。

一方借主は、請求更新や居座り更新、建て替え更新といった法定更新によって悠々と更新できてしまいます。

ただし、更新ができるといっても更新料や地代の水準で揉めることも少なくありません。30年間以上も前の契約時と更新時の経済状況は変化しており、地主も借地人も変わっていてもおかしくないためです。

日ごろからお互い良好な関係性を築くことがスムースな更新に繋がります。

次は、このほかにも揉めやすい点や、やはり地主も土地の賃借人もお互いを思いやることが一番いい結果を生むという話をみていきましょう。

【借地権者の権利義務】承諾料支払いと建物買取請求権・裁判所許可

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