建物を使うまでに「建築確認」「中間検査」「完了検査」が必要

建物は建築基準法などさまざまな法令の基準を満たさなければなりません。

そこで、これから建物を建てようとする場合には、建築士が建築計画(設計図書など)を作成し、建築主事または指定確認検査機関に確認申請書を提出、建築基準法などの基準に適合していることの審査を受けなければなりません。

これを「建築確認」といい、問題なければ「確認済証」が取得できます。この確認済証がなければ工事に着工できません。

さらに、自治体が指定した建築物などについては、工事を設計図書と照合して設計図書通りに工事が実施されているか確認する工事監理という「中間検査」が必要です。この検査に合格すれば「中間検査合格書」を取得でき、工事を継続できます。

工事が完了すれば「完了検査」を受け、それに合格すれば「検査済証」を受け取ることができます。この検査済証を受け取ってから初めて建物を使用できるのです。

検査は建築主事(特定行政庁)または指定確認検査機関が実施

建築確認や中間検査、完了検査は、建物が基準を適切に満たすかを検査するプロセスです(建築主が依頼)。

検査するのは建築主事といって、これらを実施する権限を持つ公務員が実施します。尚、建築主事をおく役所を「特定行政庁」といいます。

man_magnifying-glass_ssさらに1999年の改正建築基準法の施行によって、国土交通大臣や都道府県知事から指定された「指定確認検査機関」に属する「建築基準適合判定資格者」も実施できます。

つまり、民間企業にも委託できるようになりました。

建築確認の迅速化や違反建築物への行政対応の充実を目的としており、近年では民間企業が実施することも多くなっています。

都市部はほぼすべて「建築確認」が必要。建築・販売活動はその”後”

都市部ではほぼすべての建物で建築確認が必要です。

以下を満たす建物を新築したり、増改築、移転を行う場合には、建築着工を行う前に建築確認を行わなければなりませんが(建築基準法 第6条第1項)、都市部ではほぼすべての場所で(準)都市計画区域に該当するためです。

  • (準)都市計画区域または(準)防火地域で、新築や増改築移転を行う場合
  • 【特殊建築物】病院、ホテル、共同住宅、学校、百貨店、倉庫、劇場、映画館などで、床面積100㎡超の建物
  • 【木造】3階建以上、延床面積が500㎡超、高さ13m超、軒高9m超のうち、いずれかに該当する建物
  • 【木造以外】2階建以上、延床面積200㎡超のいずれかに該当する建物

また、大規模修繕、用途変更を実施する場合や、都道府県知事が指定する区域内における建築物にも建築確認をしなければなりません。

逆に言うと、(準)都市計画区域など以外の山地などで、特殊建築物や以下に該当する建物ではない場合のみ、建築確認が不要ということです。尚、(準)防火地域以外で増改築移転部分の床面積が10㎡以内の場合は、建築確認が不要です。

建築確認が不要でも建築基準法は遵守しなければならない

多くの場合に建築確認が必要ですが、例えば10㎡以下の増築の場合、(準)防火地域以外であれば確認は不要です。

しかし、その場合でも建築基準法を守らなければなりませんので誤解のないよう注意しましょう。

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本当は、工事に着工する前にすべての建物を確認したいのですがそこまで丁寧に実施する程人手が足りていないだけのことなのですね。

よくあるのが、増築後に床面積が増加して建ぺい率や容積率が超過してしまい、違法建物となってしまうことがあります。注意しましょう。

販売活動は確認「後」!だから新築物件の広告には建築確認番号が記載

建築確認を実施し、確認済証を取得しないと工事に着工できません。

工事の施工者は、工事現場の見やすい場所に、建築主、設計者、工事施工者、工事の現場管理者の氏名などとともに、建築確認を受けた旨の表示をしなければなりません。工事現場には設計図書を備えておく必要もあります。

real-estate_houses_sale_sまた、新築物件を立てて販売する場合には、建築確認が終了するまで広告含め販売活動はできません(宅地建物取引業法第33条)。

だからこそ、新築未完成物件の広告には必ず建築確認番号が記載されているのです。

さらに工事着工後に大きな設計変更があった場合には、変更申請を出し、あらためて確認を受けなければなりません。

「中間検査」で工事途中に建物の安全性を確認。「工事監理」が立ち合い

建物が完成してしまった後では、建物内部の構造をしっかり確認できなくなります。

そこで、一定の建物の指定された工程(特定工程)について工事の途中で中間検査を行い、設計書通りか、建物の安全性が基準を満たしているか、などを事前に確認しておくことが大切なのです。

construction-management_inspection_check_sこの中間検査制度は、1995年の阪神・淡路大震災により多くの建築物が倒壊し、甚大な人的被害が発生したことを背景として、1998年に建築基準法の一部改正により導入された制度です。

検査に合格し、中間検査合格証の交付を受けなければ、その後の工程(後続工程)を行うことが許されません。不合格の場合は、工事の是正や計画変更を行わなければなりません。

中間検査は全国共通のものと自治体が定めたものがある

中間検査が必要となる特定工程には全国共通のものがあります(建築基準法 第7条の3)。

  • 【対象建築物】3階建以上の共同住宅の床・はりに鉄筋を配置する工事の工程
  • 【特定工程】2階の床とこれを支持するはりに鉄筋を配置する工事の工程
  • 【後続工程】2階の床とこれを支持するはりに配置された鉄筋をコンクリートその他これに類するもので覆う工事の工程

つまり、2階に鉄筋を通す工事の工程を、コンクリートなどで覆う前に確認・検査するのです。

検査担当者が現場に行き、目視や測定などを行って、設計図書通りに施工されているか、安全性が基準を満たしているかなどを検査します。合格してから、やっと被覆することができるのですね。

その他、都道府県や市町村(特定行政庁)が指定している場合にはあわせて検査が実施されます。検査対象の特定工程は、その時々で変更が行われる場合があります。詳しくは自治体にご確認ください。

「工事監理」は建築主(施主)のために、施行に目を光らせる建築士

いくら設計書が素晴らしいものであっても、実際の工事でまったく違う施工がなされていれば意味がありません。

そこで、「工事監理」と呼ばれる建築士を定め、実際の工事が設計図書通りに実施されているか確認します。

建築・工事現場1_sそして中間検査の申請時には工事の状況報告をあわせて実施し、さらに中間検査の時にはこの工事監理が立ち会います。

一度建ってしまえば内部状況が容易に確認できなくなってしまいます。だからこそ、このような制度で安全性を担保しているのですね。

「完了検査」に合格して始めて建物を使用できる。今後、検査済証は必須!

建築確認を行った建築物は、工事が完了すれば、完了検査を受けなければなりません。

着工前の竣工後のセットで検査があるのですね。

検査に合格すれば「検査済証」が交付され、この時点で建物の使用が可能になります(一定の場合に仮使用することは認められています)。

「検査済証」のない中古住宅は多数。国交省の指導などで現在は大幅改善

実は完了検査の実施率(検査済証の交付率)は2000年ほどまでは半分にも満たないものでした。

つまり、建築確認だけ実施し完了検査をしていなかったのです。

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本来は違法となり、建物の取り壊しや使用禁止命令など強い措置が行えるものです。

しかし既に住み始めた人が路頭に迷う事態にもなり、これを黙認された状況が続いていました。

国交省などがこれらの状況を重くみて、違反建築物の取り締まりの強化や、受検率アップの施策が実施されたこともあり、近年は90%超の水準まで大きく改善しています。

暮らしの安全や資産価値の維持のためにも必ず取得を!

特に、金融機関は検査済証のない住宅へのローンを控えるよう国交省より要請された経緯もあり、現在は検査済証がない物件に融資がつきづらくなっています。

今後、新築住宅を取得する場合には、将来売却する際に検査済証がないと買い手はローンが組めない可能性もあります。

ローンが貯金に_ssまた、検査済証がない物件はそもそも建築基準法に適合しているのか疑問視され、敬遠される可能性もあります。

検査済証がない建築物については、あらためて検査するガイドラインが国交省から発表されています。

なにより、住まいの安全を確認するためにも、完了検査(検査済証)は必須のものと考えましょう。

「建築確認」「中間・完了検査」のまとめ

住宅を建てる場合、着工前にまず設計図書などを確認する建築確認があり、これは建築後には実際に設計図書通りに建てられたかを確認する完了検査とセットになっています。

また、一定の場合には、建設されてからは確認することが難しい工程を検査する中間検査を受けなければなりません。

これらはいずれも建築基準法などに適合するかをみるもので、住む方にとっては安全性の基準をクリアした安心な住まいで暮らすために必須の検査といえます。

検査済証は住宅を引き渡される際にしっかり確認して受領し、安全安心な住まいをスタートさせましょう!次は、住宅の安全性に極めて大切な耐震基準についてみていきましょう。

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