固都税計算の基になる「課税標準額」が減額

固都税は、以下の計算式で計算されるのでした。

固都税=課税標準額×税率

ここで、土地に対しては課税標準額を減額する優遇措置が取られています。まずは、住宅用地に対する特例措置をみていきましょう。

土地(住宅用地)の課税標準額の特例措置

住宅用地の場合、課税標準額を減額する特例措置が認められています。

これは、マイホームであっても賃貸住宅の敷地であっても、住宅用地であればこの特例が適用されます。

専用住宅の場合

土地の固定資産税評価額に対して、以下の土地に該当する部分(住宅の床面積の10倍が限度)については、特別に評価額を下げてもらえるのです。

区分説明減額割合
固定資産税都市計画税
小規模住宅用地住宅用地の住宅1戸につき200m²までの土地
(例えば賃貸住宅の場合、200㎡×住戸数まで)
評価額×1/6評価額×1/3
一般住宅用地住宅用地の住宅1戸につき200m²を超える土地
(ただし、住宅の床面積の10倍まで)
評価額×1/3評価額×2/3

小規模住宅用地として、固定資産税は1/6、都市計画税は1/3の減額とその効果は大きいものです。

また、200㎡に収まらない部分はそれぞれ減額幅は縮小されますが、住宅の床面積の10倍までもの範囲で軽減措置が講じられます。

併用住宅の場合

住宅用地とは、店舗や更地など、住宅として使われていない土地(非住宅地)以外の土地をいいます。

そして住宅用地も大きく2つに分かれます。

マイホームのように敷地すべてが居住するために使われている「専用住宅」(専ら人の居住の用に供する家屋)と、1階がコンビニエンスストアで2階以上に人が住んでいるような「併用住宅」(一部を人の居住の用に供する家屋)です。

家屋の区分居住部分の割合住宅用地の率
専用住宅全部1.0
併用住宅地上5階以上の
耐火建築物
1/4≦居住部分の面積/延べ床面積<1/20.5
1/2≦居住部分の面積/延べ床面積<3/40.75
3/4≦居住部分の面積/延べ床面積1.0
その他1/4≦居住部分の面積/延べ床面積<1/20.5
1/2≦居住部分の面積/延べ床面積1.0

この場合、上表のように「住宅用地の率」が土地の面積にかけられ、減額される土地の面積を制限します。専用住宅の場合は、掛け率が「1.0」ですので制限なしということですね。

特定空家は適用外

空き家対策の一環として、一部特例が使えないケースがあります。

2015年に地方税法が一部改正され、著しく危険な状態や衛生状態が悪い家屋、著しく景観を損ねたり保安上不適切な「特定空家」に対して、市町村が所有者に対して必要な措置を講じるよう勧告した場合です。

(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
第349条の3の2 専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条(第十二項を除く。)の規定の適用を受けるもの及び空家等対策の推進に関する特別措置法 (平成二十六年法律第百二十七号)第十四条第二項 の規定により所有者等(同法第三条 に規定する所有者等をいう。)に対し勧告がされた同法第二条第二項 に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下この条、次条第一項、第三百五十二条の二第一項及び第三項並びに第三百八十四条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第三百四十九条及び前条第十二項の規定にかかわらず、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。

概要は「空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(国土交通省)」として国交省が発表しています。該当する恐れのある方はチェックしましょう。

【具体例】住宅用地の特例措置

マイホームの場合

例えば、350㎡の土地の上に、床面積250㎡のマイホームがあるとします。

この場合、350㎡の土地の200㎡までの部分については、小規模住宅用地とみなされ固定資産税の課税標準額が1/6、同じく都市計画税が1/3に減額されます。

残りの150㎡(=350㎡ー200㎡)については、一般住宅用地とみなされ(かつ、住宅の床面積250㎡の10倍である2,500㎡を超えませんので)同じように、固定資産税の課税標準額が1/3、固定資産税が2/3となります。

賃貸アパートの場合

同じく350㎡の土地に、床面積250㎡の2階建てアパートが建っており、1/4を店舗として使われているとしましょう。

この場合、併用住宅のその他に該当し、居住部分の割合が1/4ですので、住宅用地の率が0.5となります。

つまり、175㎡(=350㎡×0.5)のみが小規模住宅用地と計算され、この部分のみ固定資産税の課税標準額が1/6、同じく都市計画税が1/3に減額されます。

残りの175㎡(=350㎡-175㎡)については、住宅用地とはみなされず課税標準額の特例が適用されません。つまり、そのままの課税標準額が使われます。

土地に係る負担調整措置

住宅用地の特例措置に合わせて、負担調整措置というものもあります。

税の公平性を意識しながら、税負担を緩やかに変化

背景として、1994年までは、土地の固定資産税評価額を各市町村が独自に算出していました。

それが、1994年の税制改革で全国一律に固定資産税評価額を公示地価の70%水準を目安として算出することになったことがきっかけです。

これによって、市町村による評価額のばらつきが解消されましたが、評価額が公示地価の70%を大きく下回っていた地域は税金の負担が急上昇してしまいます。このため、負担を緩やかに上昇させていく措置が取られたものです。

地価上昇・土地・マンション・風景_sこの措置(計算方法)は、地価が急上昇した場合にも、ゆるやかに税負担を上昇させる効果があります。

また、税を緩やかに上昇させるといっても、税負担があまりにも軽減されては、その地域だけひいきすることとなり、税の公平性が保たれません。

ですので、急激にならないように、かつ、緩やかになりすぎないように調整されます。

前年度と今年度の課税標準額を比べて調整

考え方としては、前年度と今年度の課税標準額を比べ、今年度の負担が同じか小さくなっている場合には今年度の課税標準額は正規の(計算通りの)課税標準額とします。

これは、そのまま課税しても前年度より負担が上回ることはないため、合理的です。

反対に、前年度に比べ負担が大きくなっている場合には、正規の課税標準額を今年請求してしまうと、納税者の負担が一気に増える可能性があります。ですので、緩やかに負担を増やすために調整されます。

不動産の比較・見比べ_s以下ではその算定方法を述べますが、詳しく理解しなくともこの措置の考え方だけわかっていればまず困ることはないと思われますので読み飛ばしていただいても構いません。

まず、前年度の課税標準額に比べて、今年度の課税標準額がどれほど上がる(下がる)かを比べるため、負担水準を算出します。

 負担水準=前年度の課税標準額÷今年度の本来の課税標準額(※)
(※)住宅用地の場合は特例措置を適用した額

住宅用地の場合

住宅用地の場合、負担水準に応じて以下の表のように、今年度の課税標準額が調整されます。

負担水準調整後の課税標準額
負担水準≧100%
(前年度より負担が小さいまたは同じ場合)
本来の課税標準額
負担水準<100%未満
(前年度より負担が大きくなる場合)
以下3つの内、中間の額

  • 前年度の課税標準額+今年度の本来の課税標準額×5%
  • 今年度の本来の課税標準額
  • 今年度の本来の課税標準額×20%

つまり、前年度より負担が大きくなる場合には、本来の(特例措置を適用した)課税標準額を採用しません。

代わりに「調整後の課税標準額」=「前年度の課税標準額+今年度の本来の課税標準額×5%」とし緩やかな上昇を目指しているのです。

ただし、その額が、今年度の本来の課税標準額を超えてしまった場合、税金を取りすぎてしまうため、本来の課税標準額を採用します。

例えば、前年度の課税標準額が99、今年度の本来の課税標準額が100の場合、負担水準が99%(=99/100)となり、今年度の負担が前年に比べて大きくなることがわかります。しかし、調整後の課税標準額105(=前年度額99+今年度の本来額100×5%)となり、正規の課税標準額100を超えるため、この場合は100を採用します。

また、調整後の課税標準額が本来の課税標準額の20%を下回った場合、これはあまりにも優遇しすぎだということで、最低でも20%は取るようにしています。

例えば、前年度が10、今年度の本来額が100の場合、負担水準10%となり、調整後の課税標準額15(=前年度額10+今年度の本来額100×5%)となりますが、これでは本来の課税標準額100からあまりにも減少させすぎということで、20を採用します。

商業地等の宅地の場合

商業地等の宅地とは、住宅用地以外の宅地(建物を建てるための土地)や、宅地比準土地(宅地以外の土地で、評価が宅地の評価額に比準して決定される土地)です。

宅地比準というのが分かりずらいですが、例えば前者は倉庫を建てる土地、後者は駐車場用地が該当します。農地は宅地でもなければ、宅地比準土地でもないため該当しません。

負担水準調整後の課税標準額
負担水準>70%今年度の本来の課税標準額×70%
60%≦負担水準≦70%”前”年度の課税標準額
負担水準<60%以下3つの内、中間の額

  • 前年度の課税標準額+今年度の本来の課税標準額×5%
  • 今年度の本来の課税標準額×60%
  • 今年度の本来の課税標準額×20%

負担水準が70%を超える場合、つまり前年度より負担の少ない100%以上の場合でも、調整後の課税標準額=「今年度の本来の課税標準額×70%」です。

つまり、商業地等の宅地は、土地の固定資産税評価額に対して、最大でも70%とするように定められているのです。

元々、固定資産税評価額は公示地価の70%を目安に設定されるため、商業地等の宅地は、固定資産税と都市計画税がともに、公示地価の約50%(=70%×70%)未満となるように税が計算されるのですね。

商業地等の宅地の課税標準額≦固定資産税評価額×70%≒公示地価×50%

負担水準が60%以上70%以下の場合は、「前」年度の課税標準額を引き継ぎます。

そして、60%未満の場合は、住宅用地の場合の負担水準が100%未満になる場合と同様の考え方が採用されています。

【固都税】土地に対する特例措置のまとめ

ここでは、土地の固都税計算時における課税標準額を減額する特例と負担調整についてみてきました。

条件が複雑で表も多いと感じられたかもしれませんが、固都税計算では、特に住宅用地に対する優遇が大きいことや、負担が急増しないようにじわじわと変化させる措置が行われていることをまずは理解ください。

更地で放置していると固定資産税がたくさん取られるといわれるのは、この特例措置が適用されなくなるためです。大事なポイントですのでしっかり覚えておいてくださいね!

そして、もう一つ、家屋(建物)に対する特例措置もあります。次はそれをみていきましょう。

【固定資産税】家屋(建物)に対する特例措置

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