「おとり広告」がなくならない日本。アメリカとはマイホームの「買い方」が違う

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おとり広告業者は、同じ物件をどの不動産屋でも取引できることを恐れる

ブー太郎:クマ社長、ふと思ったのですが、おとり広告ってなくす方法ないんでしょうか。。

自分のお店へ来店させようとして、架空の物件や契約する気のない物件をお客様向けに広告するアレです。バレたらお客様の信用を一気に失います…

クマ社長:いい質問ですね。実際に契約できないのに、おとり物件を広告に出すなんて本当に身勝手な動機です。

関東・甲信越の10都県の不動産団体が加盟する「首都圏不動産公正取引協議会(公取協)」という団体があります。ここは、これまでいろんな罰則を設けてきて何とかおとり広告を撲滅しようとしています。

ブー太郎:でもインターネットが発達して、むしろおとり広告の取り締まりが難しくなってるんですよね。。

つい最近も悪質なおとり広告業者が42社も摘発されて、SUUMOなどの大手の物件情報ポータルサイトに掲載を禁止する措置に踏み切ったとかいうニュースがありました。

クマ社長:そうです。本当にひどい有様です!どうしてこういうことがなくならないのか?その一つの原因として不動産取引の仕組みがあります。

これまでお話ししている通り、賃貸物件でも売買物件でも、ほぼすべての物件をREINSで共有しています。

 

 

だから、悪いことを考える不動産屋は「べつにうちじゃなくたって、別の不動産屋でどんな物件でも契約できる」ってことを知っています。

ブー太郎:コンビニみたいなものですよね。

同じおにぎり(商品)を駅前のコンビニで買おうが、隣町のコンビニで買おうが、どこでも買えます。お客様側の視点に立てば、とても便利です。

でも、コンビニ側からしたら、「うちで買ってくれないと、儲からない!」ってなる…

クマ社長:その通りです。しかも、不動産取引は二つと同じ物件はありません。

魅力的な物件や、両手仲介取引ができるような“オイシイ物件”があれば、なんとしても自社で契約させたいんですね。

ブー太郎:そうか。だから、おとり広告を出して、とりあえず自社に誘導して、その後お客様(買主・借主)に「本当に契約させたい物件」を紹介するのですね。

「広告に出していた物件は、先ほど申し込みが入りまして…」って言い訳して。

売主・買主がマッチングできる取引システムを悪用するおとり広告業者

クマ社長:本来、不動産取引は売主と買主が主役であり、売主・買主が最も利益が得られるように取引のシステムが出来上がっています。

それなのに、自社の都合を考える仲介業者が、本来黒子の存在であることを忘れ、自己都合で取引をコントロールしたがることに大きな問題があります。

ブー太郎:そうですよね。

買主(借主)にとっては、フラッと立ち寄った不動産屋に入れば、REINSを介して現在売り出されている(貸し出されている)物件を余すところなく紹介してくれますもんね。

 

 

クマ社長:売主(貸主)にとっても、大げさに言えば、全国津々浦々の不動産屋が、買主(借主)を見つけようと営業をしてくれます。

売却を依頼した不動産会社(元付仲介業者)が、REINSに自分の物件を登録してくれれば、どの不動産屋(客付仲介業者)にも自分の物件情報が行き渡りますからね。

販売機会を最大化して、売り逃す(貸し逃す)ことがなくなるようにできています。

ブー太郎:売主・買主どちらにもとっても効率的にマッチングできるいいシステムですね。

でも確かに不動産会社にしてみれば、隣の不動産屋も同じ商品(物件)を売れるから、必死にお客様(買主)を囲い込みたがりますね。それに他社に行かないようにスピード契約をもくろむ。

クマ社長:そう。だからスピード勝負の押し売りが横行して、危険な取引が生まれるんだね。

そのさらに悪い例が、おとり広告なんだ。無理やりにでも自社に来店させ、“なんでもいいから”ほかの物件をあてて契約させようとするんだから。

売主・買主に利益をもたらす取引システム「REINS」を悪用しているともいえます。

ブー太郎:そんな不動産屋では、マイホーム取引のまともな検証やチェックがなされるとは思えませんね。

物件情報でなく、仲介サービスの中身を競い合えばおとり物件はなくなる

ブー太郎:どうやったら、おとり物件がなくなるんでしょうか。

クマ社長:物件紹介はどこの不動産屋でもでき、だからこそ物件情報そのものに価値はなく「不動産よりも不動産“屋”選びが重要だ」ということが知れ渡れば自然とおとり広告はなくなると思うよ。

ブー太郎:コンビニは違っても、おにぎり(同じ商品)はどこでも買えるという取引の仕組みが周知されればいいのですね。でもなんででしょうか…

クマ社長:そもそも、おとり広告を出す悪徳業者は「元々価値がないといえる“物件情報そのもの”を売ろうとしている」業者。ここにヒントがあります。

不動産仲介業者には大きく「物件紹介屋」と「エージェント(検証屋)」の2種類あって、どちらでも同じ物件を取引できる。ブー太郎が例に挙げた通り、どのコンビニでも同じおにぎりが買えるのと同じだ。

 

 

ブー太郎:…そうか、もし物件紹介屋に魅力を感じずに、仲介サービスの中身がしっかりしているエージェントでの取引を行うことが当たり前の世界になれば大きく変わりますね!

物件は同じ、だから信頼できる不動産屋さんで取引しようていうことが常識になれば物件情報に踊らされませんね。

おとり物件みたいなとっても魅力的な物件があっても、「まずは信頼してる不動産エージェントに買ってもいい物件か聞いてみよう」ってなりますもん!

クマ社長:その通り。SUUMOに掲載していないけど、仲介サービスがしっかりしている不動産屋(エージェント)がいるとしよう。

物件を買おうか迷っているお客様は、SUUMOに載せてあるなしに関わらず、自分が信頼している不動産エージェントに「SUUMOに載っていたこの物件を買いたい(借りたい)と思うけどどうです?」と聞けばいいんです。

調査して取引しようと思ったら、REINSから同じ物件を引き出せば、なんら問題なく取引できます。

ブー太郎:なるほど。おとり広告ってどうしようもない問題と思ってましたが、取引の仕方次第では自然に改善していくかもしれませんね!

クマ社長:うん、そうだね。ただ、ホームページを開いたら物件情報ばっかり載せている業者もまだまだ多いのが現状。

どうしても「不動産屋」=「物件紹介屋」という意識が根付いているところがあります。この状況が、おとり物件を載せる悪質業者に、つけ入る隙を与えているのですね。

ブー太郎:おとり業者からすれば、「客は物件情報に飢えてるから、とびきりいい条件で載せれば自社に問い合わせしてくるだろう、ふふふ…」ってニヤニヤ笑ってるんですかね。。腹立ちます!

米国は日本よりはるかに情報公開が進む。消費者もエージェント個人をみる

クマ社長:実は、不動産先進国のアメリカでは、おとり広告なんてするとトンデモナイことになります。

おとり広告もそうですが、非公開物件まで、米国の不動産協会が厳しく取り締まり、違反が見つかった場合には免許(ライセンス)を保留にされたり剥奪されます。日本のような“ぬるい”対応はしません。

ブー太郎:へー、厳しいんですねえ…

アメリカには、日本のREINSに似た不動産情報システム「Multiple Listing Service」(MLS)ってのがあるんですよね。

クマ社長:確かにBtoB(業者間)のネットワークという意味では似てますが、その中に蓄積されている情報量は、とんでもなく開きがあります。

過去の取引価格の推移や、学区や税金、災害情報などなど多くのデータが集約されわかりやすくまとまっています。

ブー太郎:やはりアメリカは情報をオープンにするっていう姿勢が強いですね。しかも、非公開物件も厳密に禁止していて、公平性も担保されてますね。

クマ社長:そうです。だからこそ米国の買主は、物件情報量などではなく、不動産会社、もっといえば営業担当者個人レベルで「この人にマイホーム売買を任せていいか?」という視点で選びます。

どの物件を買うかというより、どこを通じて買うかという意識が徹底してるんですね。

ブー太郎:そういえば、アメリカでは不動産の営業パーソンにお客様がついてくるイメージらしいですね。

会社の名前はある意味お飾りみたいなもので、営業担当者の誰が在籍しているかといった個人レベルで売り上げが大きく変わるんですね。

クマ社長:そうです。大リーグの有名選手が大きな契約金額で移籍するみたいに、ヘッドハンティング(引き抜き)合戦も当たり前に行われます。

ブー太郎アメリカでは消費者が不動産エージェント個人の力量をしっかり見極める、厳しくもあり健全な取引環境が整っているのですね。

おとり物件を出しても不動産屋が得しない世界では、健全な取引が進む

ブー太郎:おとり広告は、物件紹介に力を入れるというある意味安易な営業方法に頼っている日本の不動産業界だからこそ起こりうるともいえますね。

クマ社長:そうです。今回の話をまとめると、

  • おとり広告は、売主・買主のための効率的な不動産システムを悪用して、自社利益を追求する仲介業者が行う
  • どの不動産を買うか、より、どの不動産業者を通じて買うかという意識が根付けば、おとり物件を広告するうまみがなくなる。物件情報ではなく、仲介サービスそのものを競い合うようになる
  • 不動産先進国アメリカの、情報をオープンにして罰則も厳しい健全な取引環境は参考になる。不動産エージェント個人の力量が問われる世界が健全な取引を呼び込む
ということだね。

ブー太郎:本来であれば仲介会社は、不動産のプロとして「本当にこの物件を買ってもいいのか」を検証するなど、仲介サービスそのものに力を入れるべきと感じました。

物件紹介や契約書作成などの「作業」だけに力をいれる場合、ノーチェックで大きな取引が危険なまま進むことにもなりかねませんからね。

クマ社長:仲介サービスそのものに磨きをかけて、業者ごとに切磋琢磨していく世界になればいいですね。

そして、物件より不動産エージェントを選ぶという意識が根付けば、透明性が高く、安心安全な取引をも実現することにそのままつながります。

ブー太郎:今はまだ「おとり広告の見抜き方」といった、対症療法の段階ですよね。公取協も、規制を厳しくすることで対応しようとしていますがその有効性はまだ途上…。

でも本当は、おとり広告を行っても相手にされないような取引環境が生まれるといいですよね。または、そういうことを行うと厳罰が下るようなところまで罰則を持って行けるといいのかもしれませんね。

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