国が「既存住宅状況調査技術者」を確保!公平なインスペクション普及へ
国がインスペクターを確保する制度を創設。売主・買主の相談窓口も設置
2017年2月3日、国交省は「既存住宅状況調査技術者講習制度」を創設しました。中古住宅が「資産」とみなされる社会を作るためにも、中古建物の状況を検査する「インスペクター(検査技術者)」を育成する制度です。
国に登録を行った講習機関(インスペクター養成機関)が、「既存住宅状況調査技術者講習登録規程」に従って国が指定する水準を満たす講習を実施、試験などをクリアした建築士をインスペクターとして認定します。
既存住宅売買瑕疵保険や、2018年4月から本格施行される改正宅建業法、優良な中古住宅に認定マークを付与する「新しいイメージの既存住宅」など、インスペクション(建物状況調査)の需要は今後ますます高まることが予想されます。
このインスペクションは、公正で客観的に検査を行わなければなりません。誰がどのように行うのかという点については極めて重要な点です。検査する人によって結果にムラがあってもいけません。
人員を確保しつつ、インスペクションの質を確保・向上することができるような仕組みを国が主導して作ったものといえます。
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講習機関は、毎年度全国的に講習を実施。状況調査技術者の情報を公表、相談窓口も
国は今回の制度で認定されるインスペクターを「既存住宅状況調査技術者」と呼んでいます。
この状況調査技術者の候補者に講習を実施し試験を課すのが、国に登録した講習機関です。この資格の有効期間は約3年間で、期間が切れる前に更新講習をあらためて受けなければなりません。
この講習機関は、毎年度、最低でも各地方ブロックごとに毎年度1回以上講習を実施することで、全国に偏りなく人員確保に努めなければいけません。また、講習を修了した技術者の情報を公開して、消費者(売主や買主)に向け情報提供を行います。
さらに、消費者(売主や買主)からのインスペクション相談を受ける窓口を設置しなければならないなど、安心安全な取引を実現するための仕組みを作ろうとしていることがうかがえます。
国も「本制度が目指す既存住宅状況調査の普及を進めるためには、まずは公正かつ適確な調査の実績を積み上げ、既存住宅状況調査について国民の信頼を得ていく必要がある」と広く社会一般に受け入られる制度とする姿勢を強く打ち出しています。
「建築士」資格が必須で最低5時間の講習。自分が設計できる建物のみ検査
「既存状況調査技術者」(インスペクター)となるためには講習を受ける必要があります。講習では「調査の概要等」に2時間以上、「調査の技術的基準等」に3時間以上の時間を割くことを求めています。
具体的には、「調査の概要等」として既存住宅状況調査技術者の役割、公正な業務実施のための遵守事項、情報開示、調査概要・手順、売買時の調査結果の活用など、「調査の技術的基準等」は、調査方法基準とその詳細、調査報告書の記入、住宅の瑕疵の事例、検査機器などです。
前提として、この講習を受ける資格として「建築士」でなければなりません。一級建築士・二級建築士・木造建築士のすべてが対象ですが、状況調査技術者となった建築士は、自分が設計などを行うことができる建築物の範囲でインスペクションを行います(既存住宅状況調査方法基準第3条)。
目視や非破壊検査などから、実際の建物の不具合などを推測する必要があり、構造や材料などに十分な知識のある範囲にとどめることが、公正で的確なインスペクションに繋がるとの考えです。
建築士であれば何を調査してもよいのでなく、検査品質を担保しようとしているのですね。
国交省の「状況調査技術者」と保険協会の「“現況検査”技術者」。協会は講習機関へ
実は、既に似たものに一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会が認定する「既存住宅“現況検査”技術者」があります。建築士または建築施工管理技士の有資格者が講習を受けることで登録できるものです。
これまではインスペクションといえば、この「現況検査技術者」が最も信頼のおける資格の一つと考えられてきました。
今回の国交省の新たな制度発表を受け、住宅瑕疵担保責任保険協会は早速2月7日に「講習機関」として登録申請を行っています。
今後、協会は「現況検査技術者」と「状況調査技術者」両方の講習機関となるのですね。
改正宅建業法上のインスペクションは「状況調査技術者」が実施する方向
国交省としては改正宅建業法におけるインスペクションは、「状況調査技術者」によるものとする方向で検討中のようです。
「現況検査」技術者などその他の資格者は検査を行ってもよいのですが、改正宅建業法上のインスペクションには当たらないことになりそうです。
また、国交省によると、既存住宅売買瑕疵保険は保険法人が検査を実施しますが、「状況調査」技術者が実施した検査であればあらためて保険法人の検査は不要とする方向ですり合わせを実施しているとのことです。
今後、質の高いインスペクターが増えるにつれ、インスペクションへの信頼性も高まり、消費者が安心・安全に中古住宅の取引を行えるようになることが期待します!
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