住宅ローンの審査が厳しくなる?フラット35不正利用事件の3つの影響

フラット35の不正利用が発覚、住宅金融支援機構が調査。一括返済請求も

2019年5月上旬、長期固定金利型の住宅ローン「フラット35」の不正利用があったと複数のメディアが報じました(第一報は2019年5月4日の朝日新聞)。

フラット35は「自分(または親族)が住むためのマイホーム」に対して、低金利(固定)で借りられる住宅ローンです。本来居住用の住宅ローンを投資物件(賃貸用)の融資金として不正利用したのです。

5月7日の記者会見で石井国土交通大臣は「本来の目的を逸脱し、不動産投資目的に利用されていたとすれば遺憾であります」と述べ、フラット35を提供する住宅金融支援機構(以下「機構」)に再発防止を指示しました。

機構は事態を重くみて、すべての融資先について調査を実施し2019年9月までに完了予定としています。また、113件で不正の疑いのある融資案件がみつかっているとも公表しています。

不正が事実と確認できれば、ローンを受けている人に対して一括返済を求めるなどの対応をする方針です。

尚、2019年3月31日現在、機構には7,000億円超の資本金を全額政府が出資しており、さらに金利が一定期間優遇される「フラット35S」には国の補助金も使われています(利子補給)。

税金が使われている機構の住宅ローン商品が不正利用されたという点において、スルガ銀行など民間銀行の不正事件とは一線を画しているといえます。

【事件の概要】居住用と偽り投資物件を購入、融資額も水増しで借金帳消し

この不正事件の概要はこうです。あるマンション不動産会社の従業員が投資セミナーを開催、主に年収300万円程度の顧客を集めました。

顧客には借金を抱える20~30代の若者が多く、お金に困った客に対し「借金を帳消しにする。しかも資産(投資物件)も保有できる」といった甘い話を持ち掛けたのです。

物件を自分で住むと偽って買い、すぐに他人に貸し出すことで、家賃収入を得ながら住宅ローンを返済するという手口です。整理すると、今回の不正には大きく「資金使途の虚偽」と「融資額の水増し」があります。

  1. 【資金使途の虚偽】本来マイホーム(実需)用としての資金融資であるにもかかわらず、投資用として本来認められない「住宅ローン」を利用したこと
  2. 【融資額の水増し】借金返済原資とすべく、実際の売買金額やリフォーム費用などを水増しして融資額そのものを大きくしたこと

この話に乗った顧客と不動産会社社員が結託して、住宅金融支援機構を騙し、投資用の資金(+借金返済分の水増し資金)を住宅ローンの低い金利で融資を受けた疑いが持たれています。

報道によれば、約2年間で150戸前後を販売したとのことです。内部通報により発覚、販売会社はこの社員を懲戒解雇し、機構に報告したことで事件が明るみに出ました。

この事件によって今後どのような影響があるか、ここではいくつか可能性を見ていきましょう。

影響①:これまでは審査通過した属性の人が住宅ローンを組めなくなる?

まずこの事件による影響としては、フラット35の審査が厳しくなるというものです。

実際、2019年5月7日にはフラット35を取り扱う最大手のアルヒが審査を厳格化したことを発表しています。

スルガ銀行やTATERU社などの融資書類改ざんなどでの不正融資問題が立て続けに起こっている中、社会の目は厳しくなっています。

対処療法として「とりあえず審査を厳しくする」という金融機関が他に出てきてもおかしくありません。実際に、これまで通っていた属性の方が審査落ちしているという声も聞かれます。

住宅ローンが組めなければ、真っ当に融資依頼をするお客様が家を買えなくなるということです。

しかも審査の詳細は明かされることはありませんので、「総合的な判断で審査落ち」といわれればそれまでです。今回の事件はこれだけでも非常に由々しき事態を招く恐れがあります。

影響②:独身の若年層がマイホーム購入しづらくなる?特に女性は今でも…

今回の事件では、20代の独身者も多く関わっていました。

日本では結婚してから家を買う、若いうちは賃貸に住む、というのが主流です。年収がまだ低い時期ということもありますが、20代の若者がローン審査に出すと落ちるケースもあります。

米国では若いうちにマイホームを購入することは当たり前に行われており、ライフスタイルによって住宅の売買を繰り返し、住み替えていけば住宅コストを抑えることができます。

資産形成の一環としても、20代で家を所有することはなんら不思議ではありません。

それが今回の事件によって、若年層(特に独身)の住宅ローン審査が通常より厳しくなるとすれば、ライフスタイルを狭めることにもつながりかねません。

特に独身女性者は、今でも銀行は男性よりも厳しく審査する傾向にあります(出産による給与減額リスクなどが理由)。女性の社会進出が進む中、この事件の影響で銀行審査が過度に保守的にならないことを願います。

影響③:会社都合の転勤や介護など家庭の事情による転勤にも厳しくなる?

住宅ローンは、融資を受けた人(または親族)が実際に家に住むことを前提にお金を貸し出します。

今回の事件では、他人に貸すことを前提として、低い金利を利用しようと住宅ローンを組んだものでした(本来であれば金利の高い投資ローンを組むべきものです)。

一方で、自宅として購入した家も必ずしもずっとその場所に住み続けるわけではありません。会社都合の転勤や、介護やお子さまの遠方地への進学など家庭の事情など将来何があるか分かりません。

実際、機構も転勤などやむを得ない事情で自宅を賃貸に出すこと自体は認めています。

今回の事件によって、自宅を貸し出す理由の厳格化や手続きの煩雑化などがあれば、マイホーム購入者に不利益を及ぼす恐れがあります。

やむを得ない事情によって真っ当に自宅を貸し出す場合においても厳しい目が向けられることになっては、自宅という資産の有効活用が阻害されてしまいかねません。

【課題】正規の住宅購入者に不正利用の疑いがかかる?外見上見分けにくい

課題は、悪意を持って初めから賃貸物件にしようと考えた人と、やむなく自宅を貸し出すことになった人を見分けるのが難しいケースがあることです。

極端な話をすれば、自宅として購入しようと不動産の売買契約が終わったものの、決済(引き渡し)までの間に、会社から海外転勤を命じられることもあります。

既に契約済みで契約破棄には違約金が発生するため、契約撤回は現実的ではありません。

自宅を気に入っており、海外赴任から戻ってきた後に住み続けたいと考えるなら、やはりすぐに賃貸に出すことが合理的でしょう。

自宅に不在の長期間、住宅ローンの支払いだけをするより、自宅という資産で家賃収入を得る方がいいに決まっています。加えて、建物は人が住んでいる方が劣化が進みづらく、建物の長寿命化においてもメリットがあります。

ただ外見上、このケースにおいては今回の事件に使われた不正利用の手口と同じようにみえてしまうのです。

やむを得ない事情の証明が難しい場合に自宅の所有者に責任追及されてしまう恐れ

もちろん上記のような場合には、会社から転勤を命じた証明書を発行してもらうなどで対応できます。

ただ「銀行が納得せず(今回の事件のように)一括返済を迫られたらどうしよう…」と不安になるばかりに、賃貸に出せないという所有者も出てくるかもしれません。

もっといえば、介護などどうしてもやむを得ない家庭の事情による引っ越しなど、証明が難しい場合はどうでしょうか。

さらには、年収が下がるなどによって住宅ローンの支払いが厳しくなり、自宅の売却を検討しようにも住宅ローン残高(残債)が相場の売却価格より多く、売るに売れないこともあります。

他の金融機関からの借り入れもできず八方塞がりな状況では、一旦家族で(ローン支払い額よりも)安い賃貸物件に引っ越しながら、自宅を貸し出し賃料収入を得る方法もあります。

そうすることで、生活を維持しようとするケースにおいても、今回の事件があって(社会からの目を気にせざるを得ない)銀行が厳しい態度で臨む可能性もあります。

貸せない住宅は資産価値の根底を揺るがす。健全な融資環境の醸成に期待

以上、フラット35不正利用問題が与える影響についてみてきました。

その他、本事件による政府の補助金の減額や審査コスト増額などによって、金利の上昇や自己資金(頭金)の増額など、融資要件が厳しくなる可能性もあります。

ただもちろんこれらはあくまでも可能性論です。これらが現実化するかどうかよりも、住宅ローンは不動産市場に与える影響がかなり大きいことをあらためて理解しておきたいところです。

実際、スルガ銀行の不正融資問題が発覚して不動産投資市場は急速に冷え込んでいます。

なにより、やむを得ない事情によって自宅を貸し出すことにストップがかかっては、“貸せて売れる”自宅の資産価値を根底から揺るがす事態です。ローン完済までは居住を絶対に継続すべきというのは非現実的です。

若年層の住宅購入や、家を買った後のライフスタイルの自由度を奪うようなことにはならないことを強く願います。本事件が健全な住宅融資環境の醸成に繋がることを期待しつつ、引き続き注目していきます。

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