住宅ローン低金利時代はいつまで続く?3つの金利上昇シナリオとは?

日銀の金融緩和策で続く低金利時代。5年後に金利が上がる可能性は?

日銀の強力な金融緩和策によって空前の低金利時代が続いています。住宅ローンも変動金利で0.4%台で組めることも珍しくありません。

一方で、変動金利は上昇リスクがあります。金利がある程度上がっても無理のない生活ができることを事前に確認した上でローンを組むのが安全ですね。

特に安い変動金利につられてギリギリで住宅ローンを組んだ場合、最悪のケースではローン破産となりマイホームを手放さなくてはならなくなります。

「低金利がいつまで続くのか」という点はエコノミストや経済評論家などによっても意見が割れる論点でもあります。

低金利に慣れきってしまうと「金利はあがらない」と思いがちになりますが、例えば5年後にも本当に上がらないといえるのでしょうか。

ここでは現在の金融緩和の状況と過去の経緯、金利が上昇するリスク(上昇シナリオ)としてどういうものがあるのかといった点を冷静にみていきましょう。

変動金利で無理してマイホーム購入。金利が上がるとどうなる?注意点は?

マイナス金利導入・長短金利操作・指値オペ…次々と繰り出される緩和策

まずはこれまでの金融政策を振り返ってみましょう。

2013年4月に日銀は量的・質的金融緩和(異次元緩和)を導入しました。当初市場にインパクトを与えたものの、残念ながら2%目標物価は達成できませんでした。

そこで2016年1月29日にはマイナス金利政策(銀行が日銀に預けた当座預金に▲0.1%の金利を課す制度)を導入したのです。これは金融市場に衝撃を与えました。

さらに2016年9月21日には、長期金利を政策上の目標とする新たな金融緩和の方針も打ち出しました。短期金利ではなく、長期金利までも日銀がコントロールするという常識破りの政策です。

その後も日銀の赤字決算や、長期金利が上昇する中での伝家の宝刀「指値オペ」、さらには増額オペ・指値オペの同時実施など強い姿勢をみせてきました。

このような徹底した緩和姿勢を貫いている過去の状況や、日銀自体が3年後も2%物価目標に届かないとみていることなどから「住宅ローンはしばらく低金利が続くはず」という意見が多くなっているのです。

2021年度も物価は1.6%とみる日銀は、従来路線を粘り強く継続する方針

そして今回、日銀は2019年4月25日の金融政策決定会合総裁記者会見を通じ、強力な金融緩和を粘り強く続けていく方針を明確に示しました。

日銀としては、▲0.1%のマイナス金利政策(短期金利)を維持し、ある程度の金利変動を許容しつつ長期金利(10年物国債利回り)は0%程度で推移するよう長期国債を買い入れることを決めています。

ETFを市場参加者に一時的に貸し付ける制度の導入を検討するなど一部で新しい動きはみられますが、全体として「従来路線の継続」の一言に尽きる印象です。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
短期金利日本銀行当座預金のうち、政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用
長期金利10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう買入れ(年間保有残高+約80兆円をめど)
資産買入れ方針(長期国債以外)
ETF
(上場投資信託)
年間保有残高が+約6兆円に相当するペース買入れ
J-REIT
(不動産投資信託)
年間保有残高が+約900億円に相当するペース買入れ

また「当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」と“当分の間”の意味を具体的な期日を明言しました。

消費増税も控える中、市場が混乱しないようにあえて明確化したとのことで、来年春にも改善がない場合にはその後も(少なくとも現時点では)緩和政策を継続するとの考えです。

加えて経済・物価情勢の展望レポートでは、2021年度の物価見通しを「1.6%」と、目標の「2%程度」には届かないという見通しも示しています。

金融政策の限界…日本最大株主となる日銀、巨額の株式をどうやって売却?

日銀の金融緩和策には賛否両論あり、そもそも物価自体を目標とすべきでないというものも含めさまざまな批判がなされています。

例えばETF(上場投資信託)を現在のペースで買い続けると、日銀のETF保有残高が28兆円強(2019年3月末)⇒約40兆円(2020年11月末)となるという予想があります。

35.9兆円(2018年12月末)を保有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を抜いて、日銀が日本最大の株主となる見通しとも指摘されています(2019年4月16日日本経済新聞)。

長期金利のみならず株式市場まで日銀がコントロールするような異常事態であり、株式市場の価格決定メカニズムが壊されるとの懸念もあります。

さらにETFには国債のように償還期限がなく、最終的な出口では株式を売却するしかありません。株式市場への影響を最小限に抑えつつ巨額の資産売却が迫られるという難題に突き当たります。

世界的にも例をみないほど膨れ上がった日銀の資産。日銀としても「これ以上の大規模緩和は避けたい」というのが本音といったところでしょう。

上昇シナリオ①:日銀方針はいつでも変わる。実際、過去には金利上昇も

以上より、日銀は問題を抱えながらも緩和策を継続、低金利が続いている様子が分かりました。確かに現状が続けばしばらく低金利が続くでしょう。

ただし、5年後などそう遠くない未来にどうなっているかは分かりません。その頃には金利が上がっている可能性は十分あるのです。

その理由として、まず日銀の政策方針はいつ変わってもおかしくないという点があげられます。

今回の日銀発表は、金利は「上下にある程度変動しうる」とも付言され「経済・物価情勢に応じて…(中略)…そのときまでに得られたデータや情報を用いて判断する」と、状況に応じて方針を変えることを念押ししています。

事実、2018年7月には日銀が金利変動(上昇)をある程度容認すると発表すると、国債市場は直ちに反応、同年秋にはマイナス金利導入前の水準まで長期金利が上昇しました。このまま金融緩和を縮小すると考える金融関係者もいたほどです。

経済・物価情勢などに応じて国債買入額(長期金利の水準)は変化し、そして日銀の方針変更次第で長期金利は急変する可能性があるということです。

上昇シナリオ②:政策委員会も一枚岩でない。2023年は総裁の任期満了も

金融政策を決める日銀の9人の委員も一枚岩ではありません。

過去にもマイナス金利導入時や2014年10月の追加金融緩和の決定時には、5対4のギリギリでの政策合意がなされています。政策委員が全員リフレ派となっている今回(2019年4月25日)の会合でも満場一致で可決したわけではありません。

資産買入方針は9人の委員全員一致で可決したものの、本丸の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)は賛成7・反対2で可決されたものでした。

金融政策決定会合における主な意見」によれば、「効果と副作用を慎重に比較衡量することが一段と必要」「現状以上の金利低下は、実体経済への効果よりも副作用を助長するリスクの方が大きい可能性がある」などの意見が出されました。

これ以上の緩和は副作用が強いと判断する委員が増えると、日銀内部で方針を徐々に変化させていかざるを得なくなる可能性もゼロではないということです。

また、緩和策を強力に進めている黒田日銀総裁の現任期満了は2023年です。この時に別の総裁が選ばれることとなれば、方針が転換するリスクもあるのです。

上昇シナリオ③:米金利上昇に引っ張られる。日銀が買い支えられるか?

最も可能性があるのは、外国(特に米国)の金利上昇に引っ張られて日本の金利があがるシナリオでしょう。

国債利回りは海外情勢にも大きく影響されます。米中貿易戦争は泥沼化していますが、5年スパンで見ればアメリカの景気が拡大することは十分考えられます。

トランプ大統領の公約でもある大規模な減税政策やインフラ投資策が成果を上げれば、米国の景気好転・米国政府の財政悪化を伴いいずれも米長期金利が上昇(米国債価格が下落)する要因です。

米金利急騰によって日米金利差が拡大すれば、金利の有利なドルに資金が流れ急激な円安ドル高を招いたり、損失補填や手元資金需要の高まりから日本株が売られることもあります。

そのような事態でもこれまでは日銀が日本国債や株式を買い支えましたが、日銀もこれ以上大規模な資金供給が行いづらい今、あまりにも金利差が拡大すれば手に負えなくなることは十分あり得ます。

日本国内の事情のみであればまだしも、海外金利の上昇という外圧・巨額な外貨の動き次第ではどこまで許容できるか極めて不透明なのです。

いつまで低金利時代が続くかは分からない。資金計画のチェックを!

国内問題だけではなく、海外の経済事情にも影響を受ける金利。絶対に低金利が続くともいえないのですね。

過去を振り返れば、現在は1%台前半の長期固定住宅ローンの「フラット35」の金利も、6年前には2%台・10年前(2009年ころ)は3%台の金利でした。

10年前は今より+2%程度も金利が高いのが当たり前だったのです。ならば10年後に同じく+2%もしくはそれ以上の金利になっていることは十分考えられます。

いずれにせよすべて可能性の話でしかなく、いつ金利が上昇するかは誰にも正確に見通すことはできません。

先のことは正確に見通せませんが、それに備えておくことは可能です。

特に、マイホームを購入する際には「金利の変化があっても無理のない生活ができるか?」を確認するためにも、しっかりと資金計画をたてるようにしましょう。

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