「不動産総合データベース」で住宅購入時に欲しい情報を一覧!多くの課題も

家を買う時に必要な情報が分散…「不動産総合データベース」で一元管理!

マイホームを購入しようと思った時、分からないこと・知りたいことがあまりにも多く戸惑うことが多いものです。

少し考えるだけでも、以下のような知りたい情報があります。そして、それぞれに対して対応する方法・制度が作られています。

知りたい情報(一例)対応方法・制度(一例)
不動産基礎情報・インフラ情報
(接道・建ぺい率・容積率・水道整備状況など)
役所調査
(自治体・法務局・水道局など)
設計図書など新築時安心R住宅
修繕履歴住宅履歴情報の蓄積(いえかるて)
管理状況・長期修繕計画
(マンション)
「安心R住宅」
重要事項等調査報告書の開示請求など
住宅性能
(耐震性能や省エネ性能など)
住宅性能表示制度
建物の劣化具合インスペクション
(建築士による建物状況調査)
不具合や欠陥に対する補償既存住宅売買瑕疵保険
災害耐性
(洪水や地震時の被害想定)
ハザードマップ

少しずつ中古住宅取引の不透明性が解消されている一方、大きな課題の一つが「情報が分散していること」です。

接道状況や容積率、インフラ情報など不動産の基礎的な情報を確認しようにも、登記簿謄本や公図、測量図、道路台帳…などを調べなければならず、取得先も法務局や市区町村役場など複数の期間が所有している状況です。

また、修繕履歴やマンションの管理状況、建物の劣化具合などをどこまで調べるかは不動産会社に委ねられており、なかには何も調査せずそのまま契約させることもあります。

REINSに関連情報を紐づけるシステムを開発中。既に横浜市などで試行運用も終了

こういう状況を改善しようと、情報を一元化しようとする国の試みがあります。それが不動産に係る情報ストックシステム「不動産総合データベース」です。

不動産総合データベースは、不動産会社専用の物件データベース「REINS(レインズ)」と連携したシステムです。

ほぼすべての不動産会社は、REINSを使って物件情報を調べ、お客さんに紹介しています。

そのREINSに、物件情報だけでなく住宅履歴情報やマンションの管理状況など多くの情報を紐づけ、一覧できるようなシステムを作るのです。そうすれば、簡単に必要な情報を入手できます。

この不動産総合データベースは、2015年6月より横浜市(神奈川県)の物件を対象にシステムの試行運用を開始、その後2016年10月より静岡市・大阪市・福岡市と試行運用エリアを拡大、2017年3月末に試行運用を終了しました。

  • 【2013年度】システムの基本構想策定
  • 【2014年度】プロトタイプシステムの構築
  • 【2015年度】プロトタイプシステムの試行運用による効果・課題の検証、システムの全国展開に向けた行政情報の集約方策検討
  • 【2016年度~】全国展開に向けたシステムの検討・開発
  • 【2018年度~】システムの本格運用開始 ※運用開始後に、対象地域・収集項目を順次拡大予定

まだ実用段階には至っていませんが、不動産取引を大きく効率化・安全化するシステムの開発が進んでいます。

【情報】過去の取引や住宅履歴、ハザードマップ、学区などを一覧できる

国交省は、不動産総合データベースの中に、以下のような物件情報や周辺エリア情報などを集約させようとしています。

情報種別項目例具体例
物件情報過去の取引履歴成約価格・成約年月日・所在地・面積・間取り・建物構造・法規・権利・接道・維持管理・駐車場・周辺環境・設備・図面
住宅履歴建築計画概要・住宅付帯設備・設計図書・性能評価・検査・維持保全履歴・長期使用製品・問い合わせ先
マンション管理情報物件概要・管理委託・組合運営・収支会計・管理規約・修繕計画・修繕履歴・保管書類
周辺地域情報インフラの整備状況道路(認定路線図)・下水道(公共下水台帳)・都市ガス本管埋設状況
法令制限用途地域・(準)防火地域・都市施設・市街地開発事業・地区計画・建築協定区域・建築基準法道路種別・宅地造成工事規制区域・景観計画・地域まちづくり推進条例・街づくり協議地区など
ハザードマップ・
浸水想定区域など
急傾斜崩壊危険区域・土砂災害警戒区域・浸水想定区域(洪水・津波・津波・内水)・地すべり防止区域・津波災害警戒区域・土砂災害危険個所・土砂災害・雪崩発生場所・想定震度・液状化危険度・洪水ハザードマップ・高潮警戒区域図・避難対象区域図・土砂災害ハザードマップ・過去の土地条件・明治前期の低湿地帯・過去の航空写真など
周辺公共施設・学区燃料給油所・市町村役場・公的集会施設・医療機関・都市公園・消防署・警察署・郵便局・文化施設・学校・小学校区・中学校区など
周辺の不動産価格不動産取引価格・地価公示価格・都道府県地価調査価格・固定資産税路線価

情報は多岐にわたりますが、これら必要な情報を一つのデータベースに集約し、一覧性をもって閲覧できるのが不動産総合データベースです(以下はイメージ画面)。

ハザードマップやインフラ情報、周辺施設、航空写真など地図情報を表示したり、周辺の不動産取引情報や過去の成約価格を表示します。

さらに、住宅履歴情報やマンション管理状況、ガス本管埋設情報を調べたい時に、ワンクリックで専用サイトへ誘導できるようになります。

【出典】不動産総合データベースについて(国交省)

参考としているのが米国のMLS(Multiple Listing Service)という不動産情報提供システムです。

このMLSは、日本でいうREINSに相当するシステムですが、過去の売買価格やハザードマップ、犯罪発生件数や固定資産税など税金の情報まで揃っています。他にもMLSが優れる点は多々あります。

まずはMLSを目標として、日本でも総合データベースを作っていこうとしているのですね。

【閲覧者】買主・売主にも一部の情報にアクセスできる仕組みが想定されている

注意点として、システムの主な利用者は不動産会社を想定しています。

お客さん(売主さん・買主さん)がすべての情報を直接閲覧できるものではありません。

その中から、不動産屋さんが「これはお客さんに必要な情報だ」と考えた情報を、売主さん・買主さんへタイムリーに提供するということが考えられています。

一方で、データベースに登録される情報の内、広く一般に公開されている情報はシステムの一部を個人の消費者にも開放することが検討されています。

ただ、個人情報に該当する成約情報や住宅履歴情報や、広く一般に公開されることが予定されないマンション管理情報などはやはり宅建業者(不動産業者)のみで限定されることになるでしょう。

【課題】情報の不正確さ・欠如、不動産業者の消極的姿勢など多くの指摘

住宅履歴情報の不動産総合データベースへの登録について、課題も浮き彫りになっています。

例えば、試行運用に協力した不動産会社へのヒアリング(2016年2月)のコメントをみると、以下のような課題が指摘されています。

  • 不動産総合データベースへの承諾が必要(消費者への周知・認知が必要)
  • REINSに所在地の番地・部屋番号の入力がないケースが多く、データ連携がうまくいかなかった
  • 住宅履歴情報の収集や登録の手間が大きく、登録する事業者(元付仲介業者)がメリットを感じられない
  • 購入希望者は、実際の物件を見て判断しており、どこまでの情報が必要かはケースバイケース
  • 中古戸建の設計図などは、ほとんど取得困難
  • REINSに登録されない一部非公開物件は対応できない etc

すべての物件にくまなく情報連携する難しさや、その必要性の有無、そもそも入手できない情報の存在などいろいろな指摘があります。

また、不動産会社(売主側の仲介業者)の手間暇・業務負荷を考えれば、これに取り組むメリットを感じない不動産業者も少なくないだろうことも想像に難くありません。

住所をREINSに曖昧に登録する理由。売主への配慮と不動産業界の”抜き行為”

住所について、番地や部屋番号など最後まで書いていない物件は多いという指摘もあります。

REINSには、ほぼすべての物件情報が登録されています(150万件以上)が、実際に住所が確定できない物件はよく目にします。これはなぜでしょうか。

一つは、個人の売主さんが「売られていることを知られたくない」「住所を確定されると不動産屋さんが営業に来るかも」など、売主さんへの配慮が理由です。

もう一つは、不動産業界の“抜き行為”を防ぐものです。

抜き行為というのは、売主さんから売却依頼を受けた元付仲介業者(売主側の仲介業者)をすっ飛ばして、(売却依頼を受けていない)不動産会社が直接売主さんに「うちでも販売させてください」とアタックすることです。

関係のない不動産会社が、売主さん宅を勝手に訪問することのないよう(自社の売り物件を奪い取られないよう)住所をぼやかしているのですね。

REINSに登録せず、ネット上の物件情報サイトにだけ掲載する「非公開物件」

REINSに登録されず、ネットの物件情報サイトだけに掲載される「非公開物件」という課題もあります。

少し難しい話になりますが、売主さんが複数の不動産会社に販売を依頼する「一般媒介契約」を結んだ場合、依頼を受けた仲介業者はREINSに掲載する義務はありません。

また、登録する義務がある「(専属)専任媒介」を結んだ場合にも、登録しない不動産屋さんもいます。バレにくいからです。

不動産総合データベースは、ほぼすべての不動産会社が利用する物件共有データベース「REINS」を核としてそれを拡張するものです。

REINSに登録されない非公開物件があれば、その物件にはどうしても対応できません。由々しき問題ですね。

非公開物件は掘り出し物件とは限らない。危険な両手取引にもなりがち

課題解決には不動産業界の適正化が必要。ルールの厳格化や罰則規定も?

住所情報のあいまいさや非公開物件の問題は、不動産総合データベースを構築する上では頭の痛い課題です。

そして、この両問題の大部分は仲介業者の都合が理由です。不動産仲介業者の都合で、本来取引の主役である買主さん・売主さんが必要な情報を取得できない事態は絶対に避けなければなりません。

そのため、米国の不動産業界のように、日本も不動産業界全体でルールの厳格化や罰則規定を設けることが必要でしょう。不動産業界自体が適正化に向けて本気で取り組んでいく時期に来ているのです。

また、不動産業者の業務負担が増加することに対しては、本データベースが広く周知される頃には自然と解決されることを期待したいです。

ただ、多くの消費者がマイホーム購入時にこれらの情報を必要とする時代が来れば、不動産会社としても「お客様が求めており、手間をかけても提供する」となっていくでしょう。

不動産会社がマイナス情報をあえて隠すリスクも。今後の改善に期待!

さらに、情報コントロールという課題があります。

つまり、不動産総合データベースは不動産屋だけしか見られない情報があるため、意図的にマイナス情報を隠すことが考えられます。総合データベースの中から、いいことだけ伝える可能性があるのです。

また、情報そのものの正確性や、情報の更新(最新性)など、情報そのものの質も課題となります。

多くの課題が山積していますが、こういった取り組みが始まることで、不動産取引における消費者と業者の間にある情報格差を埋めることができるのは喜ばしいことです。

今後、試行錯誤の中で、消費者(売主・買主)にとって最良の情報提供ができるシステムが作られることを大いに期待しましょう!

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