中古のマイナスイメージ「不安」「汚い」「わからない」を払拭して安心!

中古住宅(既存住宅)には、「安い」「リフォームで自分好みの間取りにできる」「実際に建物や周辺環境を調べられる」というメリットがあります。

一方で、どうしても付きまとうのが「品質の不安」「設備が古い、見た目が汚い」「選ぶための情報量が少なくてわからない」といった懸念です。

そこで、国交省が一定の基準を満たした中古住宅を「安心R住宅」として認定して、安心の中古住宅もマイホーム購入の選択肢として検討してもうう制度を作りました。

具体的には、「不安」「汚い」「わからない」というマイナスイメージを情報開示によって払拭し、さらに適宜相談窓口を設置することでトラブルがあっても相談できるようにします。

ここでは、新たな制度の大まかな枠組みやポイントをチェックしておきましょう。

2017年11月6日に制度の詳細が告示、2018年4月から安心R住宅制度が開始!

安心R住宅は2018年4月から運用が開始します。これはインスペクションを促す改正宅建業法が本格施行される時期と同じです。

これまで、国交省で「流通促進に寄与する既存住宅の情報提供制度検討会」を立ち上げ、2016年12月19日に第1回検討会が開始、第2回(2017年1月23日)、第3回(2月28日)と検討を重ね、制度案を議論しました。

その後最終とりまとめも終え、3月29日~4月28日には「安心R住宅」に対する意見(パブリックコメント)の募集を実施、その後国交省内で制度詳細を固め、2017年11月6日に告示公布されました。

事業者団体の審査・登録を経て、2018年4月より安心R住宅の運用が開始されました。

【仕組み】国が認定基準を設定、事業者団体が業者に商標付与。相談窓口も

この制度の大まかな仕組みは以下の図の通りです。登場人物は「国」「事業者団体(事務局)」「不動産会社(事業者)」の3者です。

国が、「安心R住宅」を認定する要件(基準)を設定し、実態をみながらそれらの基準を都度見直す役目を担います。そして、国が認定した「事業者団体」(不動産業者を束ねる業界団体)に商標の利用を許可します。

事業者団体は、商標利用やリフォームの基準などについて不動産会社(事業者)が守るべきルールを定め、「安心R住宅」の商標を使いたい不動産会社に対して許可を与えます。同時に、この団体は購入者からの(購入後も含めた)トラブル相談などを受け付けます。

事業者団体の業務内容
リフォーム基準の設定従来の既存住宅の「汚い」イメージの払拭に資するリフォームの基準を定める
事業者が守るルールの設定商標の使用に関して事業者が守るべきルールを定める
事業者の審査・指導・監督商標の使用を希望する事業者に対して審査・許可し、指導、監督を行う(研修も含む)
相談対応購入検討者等が相談できる窓口を設置し、本制度に係る相談業務を行う
運営状況等の報告商標付与の実績等の制度の運営状況及びその評価等について、定期的に国へ報告する

不動産会社(仲介業者)は、「安心R住宅」の基準を満たす物件について、マイソク(販売広告図面)やポータルサイト上で商標を使うことができます。

結果として、優良な中古住宅に「安心R住宅」という商標が付されるため、買主に対して安心な中古住宅を分かりやすく提示でき、既存住宅の流通が促進されるという仕組みになっています。

なんで「安心R住宅」っていうの?「R」=Reuse / Reform / Renovation

今回の制度に合致する住宅は、通称「安心R住宅」と呼ばれます。

「不安」「わからない」の払拭を“安心”に込め、“R”にはreuse・reform・renovationの意味を表し、安心な既存(中古)住宅であることを表現しています。尚、ロゴマークの濃いグリーンは戸建て、薄い緑色はマンションを表します。

※「一般社団法人〇〇協会」など団体名が併記されます

国交省の資料には、もともと「消費者が安心して購入するための基礎的な要件を備えた住宅」や「新しいイメージの既存住宅」などの言葉もあります。

しかし、短くてわかりやすい通称名を使うことで、消費者への周知・浸透を促すことを狙う意図もありシンプルな名称に落ち着きました。

ちなみに、単に「安心住宅」とすれば新築との区別がつかないことや、セーフティネット住宅で「安心」という用語をよく使っているため、その区別として“R”の一文字をいれましたとのことです。

国が言う「安心」には重みがある。「認定」「適格」は不正競争防止法違反に?

議論の中では、国が「安心」という言葉を使うことは非常に重たい意味があるといった意見もありました。

また、不動産広告で「安心住宅」という名称を使うと、不正競争防止法違反となる可能性があることの懸念も示されましたが、定義を明確にすることでその批判をかわした格好です。

また、“認定”や“適格”という言葉を用いることも検討されましたが見送られました。

「認定」は法令に基づく認定や、認定長期優良住宅のように国交省で定めた制度と混同する恐れがあり、また、「適格」は建築基準法などで定められているものがあるため、その区別が付きづらいことなどの理由です。

国が認定するということには重みがあり、言葉を一つ作るだけでもいろいろな視点から議論がなされるのですね。

【認定基準】安心R住宅は、耐震性・インスペクション・瑕疵保険が必須!

国交省が「安心R住宅」に認定する中古住宅は以下の要件を満たす必要があります。

払拭する項目具体的な基準
「不安」
「汚い」
  • 事業者団体毎にリフォームの基準を定め、基準に合致したリフォームを実施していること
    • 部位に応じて原則的な取替時期等の数値や、チェック項目等を参考までに提供することを検討
  • リフォームを実施していない場合は、参考価格を含むリフォームプランの情報を付すこと
  • 外装、主たる内装、水廻り(キッチン・浴室・洗面所・トイレ)の現況の写真等を情報提供すること
「わからない」
  • 広告時点において下記(★)の情報の有無等を開示。また、購入検討者の求めに応じて詳細情報を開示すること
  • その他、団体毎に任意で実施する流通支援の取り組み等の情報を開示すること

「不安」について、耐震性はもちろん、インスペクション(建物状況調査)で雨漏りや不具合がないと認められることが必須です。

既存住宅売買瑕疵保険は、買主が希望すれば加入できる状態にしておくことが求められます。つまり「安心R住宅」は、買主が新たにインスペクションを実施する必要なく瑕疵保険に加入できるということです。

「汚い」について、事業者団体が定めた基準に合致するリフォームを行うか、リフォームしていない場合には、参考価格とともにリフォームプランを提示する必要があります。さらに、内装・外装、特に水廻り設備の写真を撮る必要があります。

「わからない」については、以下の項目(★)についてあらかじめ調べ、その情報が「有る」「無い」「不明」という3段階で公表する必要があります。

(★)開示情報「有」「無」「不明」の開示が必要な項目
新築時の情報
  • 適法性に関する情報
    • 確認済証、検査済証など
  • 認定などに関する情報
    • 長期優良住宅、低炭素住宅、フラット35など
  • 住宅性能評価に関する情報
    • 設計住宅性能評価、建設住宅性能評価
  • 設計図書に関する情報
<戸建て住宅・共同住宅の専有部分>

維持管理の履歴

  • 維持管理計画に関する情報
  • 点検・診断の履歴に関する情報
    • 給排水管・設備の検査、定期保守点検など
  • 防蟻に関する情報
    • シロアリ検査、防蟻処理
  • 修繕に関する情報
  • リフォーム・改修に関する情報
保険・保証
  • 構造上の不具合及び雨漏りに関する保険・保証の情報
    • 既存住宅売買瑕疵保険・自社保証
  • その他保険・保証の情報
    • 給排水管・設備・リフォーム工事、シロアリなど
省エネ
  • 断熱性能に関する情報
  • 開口部(窓)の断熱に関する情報
    • 複層ガラス、二重以上のサッシなど
  • その他省エネ設備に関する情報
    • 高効率給湯機、太陽熱利用システムなど
<共同住宅>

共用部分の管理

【補足】耐震性はどう判断?不具合があったけど改修した住宅は?築浅物件は?

「不安」の払拭における耐震性は、以下のいずれかを満たす住宅とします。

・1981年(昭和56年)年6月1日以降に着工したもの
・1981年(昭和56年)5月31日以前に着工したもので、耐震診断や耐震改修を実施し、広告時点において耐震性が確認されているもの

これは、新耐震基準を流用したものといえます。

木造住宅の場合には「2000年基準」もあることや、「検査済証」の有無まで調べるべきという意見が検討会でも議論されましたが、業務の効率化などの観点で上の基準に落ち着きました。

また、構造上の不具合や雨漏りについて、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合した物件であれば基準をクリアしたとみなします。また、不具合がある住宅でも、広告する時点で改修が完了していれば「安心R住宅」を名乗っていいことなっています。

「汚い」イメージの払しょくについて、原則としてリフォームを実施することになっていますが、建築して間もない築浅物件は不要としています。

杓子定規にあれもこれも、というわけではなく、実務上の効率性や住宅の実態に合わせて考えられているのですね。

【課題】業者負担・情報開示の有効性・インスペクションの限界・制度設計

この制度の運用が開始されると、中古住宅の売買が活発になることが期待されています。

国が一定の品質が確保されている住宅にお墨付きを与えるような制度となっているため、中古住宅への不安が大きく和らぎ、住宅購入の選択肢として中古を本格的に検討する買主が増えると見込まれています。

一方で、制度内容をよくみていくと、そのようなイメージとはかけ離れるかもしれないという課題も既に指摘されています。

仲介業者、制度設計、技術などそれぞれに課題を内包している制度であることが浮き彫りになっています。大まかに4つを具体的にみていきましょう。

①不動産業者の負担が増加、コストを売買価格に上乗せ?R住宅を敬遠する結果に?

不動産仲介業者としては、これらの情報を漏れなくミスなく開示するのは難しいのではないか、という懸念もあります。

「安心R住宅」と認められるために開示すべき情報は、いずれも重要なものであり、消費者(買主)の利益になるものです。

一方で、不動産会社の情報収集・調査、開示などの業務量が急増し、金銭的・時間的コストもかかります。

物件を広告掲載する時点で商標を付与するためには、あらかじめインスペクションを実施するため、その費用は売主または不動産仲介業者が負担します。

これらの手間暇やコストが、中古住宅の価格に転嫁されてしまえば、中古本来の魅力である安さが薄れてしまうという懸念もあります。

さらに、価格転嫁もできず不動産業者が一手にこれらのコストを負担することになれば、「安心R住宅」をむしろ取り扱わず敬遠することになりかねず、制度が崩壊、中古住宅の流通が鈍る可能性も指摘されています。

②情報開示が「無」「不明」だらけでも、「わからない」の基準を満たしてしまう

「わからない」イメージの払しょくにおいて、(★)表の情報開示が求められます。

具体的には、「新築時の情報」・「維持管理の履歴」・「保険・保証」・「省エネ」・「共有部分の管理」について、各情報が「有る」「無い」「不明」という3段階で表示します。

ここで、すべての項目に「無」「不明」としても、それはそれで情報を開示したとみなされ、安心R住宅の基準を満たしてしまうのです。

つまり、国のいう(最低限の)“安心”は、耐震性があり構造上の不具合や雨漏りがない中古住宅のことを指しているのです。

そうすると、新耐震以降の分譲マンションはほぼすべて該当してしまうことになるとの意見もあります。

③インスペクションと瑕疵保険に限界。安心R住宅なのに金融機関が融資お断り?

インスペクション(建物状況調査)は住宅性能を保証するものではありません。違法住宅かどうかという判断をするものでもありません。

例えば、購入後に増築を行った住宅に対して容積率がオーバーしている物件があったとして、それはインスペクションで見落とされる可能性があります。

インスペクションの結果、建物の不具合や水漏れがなく「安心R住宅」と銘打っておいて、いざ金融機関に住宅ローンを申し込んだら断られた…となっては消費者は裏切られた気持ちになるでしょう。

また既存住宅売買瑕疵保険は、建物の基礎や躯体など重要な部位を保証しますが、「設備」の不具合は保証しません。別途、設備補償などの保険をかける必要があります。

消費者にとっては、安心といいながら設備の故障は自腹で直せといわれることにガッカリするかもしれません。

④安心R住宅を使いたい売主は、不動産屋を1社に限定して売却依頼(専任媒介契約)

安心R住宅制度は、売主が「我が家(自宅)は国がお墨付きを与えた適正な中古だ」と買主候補者に周知できる魅力的な制度といえます。

売主としては、「安心R住宅」というロゴマークを付けてマイホームを売り出したいと思うものです。

しかし、安心R住宅の商標を使って売り出す場合、売却を依頼する不動産屋を1社に限定する「専任媒介契約」という契約を結ばなければならない制度になっているのです。

健全な競争をさせようと、複数の不動産会社に売却依頼をしたい売主は、この制度を使うことはできません。また制度を使うべく専任媒介を結べば「囲い込み」などの問題も引き起こしかねません。

売主が納得した上で、専任媒介契約を結ぶのであれば問題ありません。課題なのは、合理的な理由もないまま強制的に不動産会社を1社に絞るような制度設計であり、売主の選択肢を大きく狭めていることです。

せっかく中古住宅の流通を促進する制度が作られたのに、その制度の使い方が制限されるのでは意味がありません。売主にとっても安全に使える制度へと変わっていくことが必要でしょう。

「安心R住宅」を使う売主は、1つの不動産屋にしか依頼できない。囲い込みに?

【解決策】消費者の反応をみながら、国が制度を継続的に見直し・改善

国交省はこれら多くの課題に対して、消費者の反応をみながら常に制度を見直し、改善を続けていくという姿勢を打ち出しています。繰り返し見直していくことを前提とした制度なのです。

実際に新たな制度を運用する前から、細かな要件をガチガチに決めすぎても、制度が広まらずに終わってしまいます。この制度を浸透さえる必要があり、普及しなければ意味がありません。

例えば、情報開示において実際に「無」「不明」ばかりがついた安心R住宅が何戸くらい発生するのか、消費者にどう映るのか、それらは売買が成立したのかなど、実際の状況をフィードバックして改善することが一番でしょう。

こういう情報が足りない・加えるべきだ、といった現場の声を聴きながら制度をブラッシュアップしていくことで、必然的に最適な制度を創っていこうとしています。

安心R住宅制度が運用されることに意義がある。消費者の意識・視点が変わる

この制度には、先ほど述べたように複数の課題が指摘されています。しかしながら、この制度が現実化することそのものにも意味があるといえます。

「安心R住宅」の商標が付いている物件かそうでないか、ということも意味がありますが、その先にはマイホーム購入に対する買主の視点そのものが変わっていくことこそ意義があるといえます。

つまり今後、この制度が普及するにつれ「中古住宅を買う前には、最低限こういう点を確認しなければならない」という意識が消費者(買主)に芽生えることが、より安全な取引につながることになるでしょう。

物件情報の表面的な情報で不動産購入を行っていた時代から、「構造に問題がないか」「保証はどうなっているか」「過去の履歴はあるか」など、買主自身が「見えない部分」を積極的に確認していく買い方が普及する可能性を秘めているのです。

外観や内装、設備などの写真でなんとなくイメージ購入していた住宅を、インスペクションによって躯体に不具合がないことを確認するなど、視点を広げて買うことが当たり前になっていくでしょう。

不動産会社も物件を載せまくる時代が終わる?物件紹介業からエージェントへ

これまで、不動産会社は品質の善し悪しに関わらず、とにかく物件情報ポータルサイトに載せることを優先し、掲載件数を競い合ってきたきらいがあります。

成約して初めて仲介手数料を受け取る仲介会社であれば、品質は二の次で、目の前の契約こそが優先事項になっていたといえます。

玉石混交の物件をとにかくポータルサイトに掲載してきた不動産屋も、「劣悪な住宅ばっかりポータルサイトに載せていると思われる。一定の基準をクリアした物件を掲載しないとお客様に振り向いてもらえない」と、物件を一つ一つ精査する動機づけにもなるでしょう。

つまり、これまでどんな物件でもいいから紹介しまくる「物件紹介屋」から、本当に買ってよい物件かどうかを検証する「エージェント」に変わっていくキッカケになる効果が期待できます。

国が中古住宅の見分け方を公開?!「安心R住宅」がマイホームに及ぼす影響とは

【相乗効果】他制度とのシナジー。将来は売主・買主が主導する制度に?

安心R住宅制度は、他の制度と相乗効果(シナジー)を生むことも予想されます。

例えば、2018年から始まるインスペクション(建物状況調査)を促す改正宅建業法と相まって、「中古建物は調査するのが当たり前だ」という意識を醸成する大きな起爆剤となり得るでしょう。

また、近畿圏で始まっている「住宅ファイル制度」(インスペクションやシロアリ検査を実施、それらを住宅ファイル報告書としてまとめた上で中古住宅の適正価格額を算出する制度)ともシナジー効果が望めるでしょう。

さらに、これまで建物の経過年数が20年を超える木造住宅は、担保評価ゼロ円などと評価してきた金融機関も、中古に価値を見出す動きを一層強め、良質な中古住宅には相応の担保評価を行うようにもなるかもしれません。

国交省が主導して、中古住宅の見方・買い方を変えていくような制度となり得る「安心R住宅」。改善を重ねながら安全・安心なマイホーム購入に大きく貢献する制度となることを期待したいです。

情報を開示するには売主の協力が不可欠。将来の売却に備え、買主も住宅管理に注力

この制度がうまく運用されるには、売主の理解がまず第一歩です。

住宅を調査(インスペクション)することや、「わからない」イメージ払しょくのための各種情報開示のためなどに、売主の協力が不可欠だからです。

将来的にこの制度が定着し、安心な住宅でないと住宅市場から相手にされない(値段が安くなってしまう)状況となれば、買主(将来の売主)も本制度の理解を深め、住宅を適切に管理していく動機づけがなされるでしょう。

将来、売却する時には建物の状況をしっかり問われることとなり、購入後にリフォームした場合には履歴を残すことや、適切にメンテナンスすることを積極的に行うことでマイホームという資産を防衛することに繋がります。

まずは国交省主導で制度を運用し、将来的には売主・買主など不動産売買の主役となる消費者が、自ら進んで価値ある住宅を選び、その資産価値を維持・向上させる社会となることを大いに期待したいですね。

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