収入・勤続形態で返済原資を、借入状況で支出を推測。物件担保力も検討

住宅ローンの審査では、「返してくれるから貸す」を大原則として検討します。

まず、住宅ローンを申し込む時に、その金融機関が得意とするお客様の特徴をあげています。これは金融機関ごとに異なりますが、一般的には以下のようなものです。

  • 年収(150万円以上)
  • 勤続年数(サラリーパーソンは1年以上、個人事業主や経営者は3年以上)
  • 年齢(20歳以上60歳以下)
これを満たさなければそもそも審査もしてもらえないことが多く、銀行が初めに課すフィルターのようなものです。

これらは前提条件となる者であって、これらを満たせば必ず通るというわけでもありません。

同じ年収であっても通す人通らない人に分かれます。それは金融機関が以下のような点をみるためです。

「完済年齢」は75~80歳が一般的。年齢に応じて融資期間が短くなる

住宅ローンは長期間かけて返済するものです。銀行も、今だけではなく将来も同じように返してくれるかを審査します。

ローンの完済時期があまりに高齢であれば収入は年金だけになる可能性が高くなるため、金融機関としてはおおむね完済年齢を「75~80歳」を一つの目安として考えています。

welfare_ssですので、初めの段階で申し込み時の年齢を60歳以下に限定する金融機関が多いのです。

つまり、45歳の方が35年の住宅ローンを組もうと思ってもなかなか審査が通りにくいという現実があります。

年齢が上がるに従って、貸付期間が短くなる傾向にあります。その場合は、自己資金を多く用意することでローンを組むことができます。

「収入」のポイントは「額」と「安定性」。多ければいいわけではない

審査において、収入は重要項目です。基本的にサラリーパーソンであれば過去一年の収入、個人事業主や経営者(会社役員)であれば過去3年分の収入がみられることが多いです。

収入が多ければ多いほど、ローンの返済原資があると考えられ、審査が通過しやすくなります。

bills_pocket_ssただ、多ければそれでいいというわけでもありません。もう一つのポイント、安定性(継続的に収入を得ているか)も重要指標です。

サラリーパーソンの方は雇用形態をみられます。一般的に、正社員であるほど安定性が高いと考えられ、逆に契約社員や派遣社員、アルバイト・パートの場合は審査が厳しくなる傾向にあります。

経営者(会社役員)の場合に過去3年分の収入をみられるというのは、一般的にサラリーパーソンより収入が不安定であると考えられるためです。これらの方は、個人の収入のみならず会社の決算書をみられる場合も多くあります。

「勤務先」と「勤続年数」で安定性を測る。実態に合わせて軟化

勤務先と勤続年数も、収入の安定性を測る上で重要な審査項目です。しかし、これも銀行の柔軟な姿勢を反映してか、一昔前とは審査内容が変わってきているようです。

business-person_phonecall_ss元気な中小企業が増え、一方で大企業だから安全であるとはいえなくなった時代、勤務先だけでその安定性を測ることに限界がきているのです。

勤続年数も同様で、転職が当たり前となり、同じ企業で働き続けるという価値観が薄れてきたのを反映し、過去3年以上が要求された勤続年数は、1年以上へ緩和された銀行が多くあります。

「借入・返済状況」のポイントは正確な申告。嘘はバレる仕組み

収入が大切であれば、支出も重要な審査項目です。それを測る指標として、これまでの(自動車ローンなどの)借入・返済状況をみられます。ここで、とても大切な注意点があります。

「借金の履歴なんて伝えてしまうと審査が厳しくなってしまうから隠しておこう」という考えは完全に誤りです。

一言で言えば「必ずバレる」からです。個人信用情報は金融機関(銀行やクレジット会社、消費者金融など)の間で共有されており、過去の履歴を照会できる仕組みが整っているのです。

silence_ssもしわざと黙っていれば、後から判明することで銀行の心象を悪くしたり、他にも隠していることはないか、とむしろ審査が厳しくなり、通るものも通らなくなります。

繰り返しますが、各銀行は金利引き下げ競争の中、正確な情報に基づいて厳正かつ柔軟に審査します。

同じチームとなって、ローン通過にむけて協力する姿勢が望ましいと考えます。そして普段から滞ることなく借入返済することを心がけましょう。

借金履歴はローン審査でチェックされる!嘘をついたら一括返済も…

「物件の担保力」は新築と中古で大違い。築年数をベースとした評価が主流

住宅ローンを組む際、銀行はその住宅を担保として(抵当権を設定して)、万が一返済ができなくなった場合にはその住宅を取り上げ、売却して返済金を確保します。

ローンの審査にはその方自身の属性のみならず、購入しようとしている住宅そのものの属性によっても審査結果が変わってくるのです。

apple-to-apple_sそのため、銀行は購入予定の物件の担保評価額を算出します。金融機関によって評価額の出し方は異なりますが、大まかな考え方として積算価格があります。

日本の金融機関は、住宅の個別の状況を加味せず、法定耐用年数などでバッサリと評価するのが実態です。今後、その評価法は変わっていく兆しがありますが現在は中古より新築の評価額が高いのが実態です。

中古は評価が低い傾向。築年数が古ければゼロ評価も珍しくない

中古の場合、取引価格には売主の事情など恣意性が入る余地が大きいため、取引価格=担保評価額とはなりません。

基本的には銀行が、路線価や固定資産評価額などを基に、その評価額を綿密に算出します。評価には、土地と建物の両方がありますが、建物については年数が経てば建つほど価値が下がる傾向にあります。

edo-era_ss築20年程度経過している場合、(実際にはまだまだ使える建物であっても)建物評価額はほぼゼロというのが現状です。

また、中古物件の権利関係や、各種規制への抵触有無などを調査され、現在の法律の基準を満たしていない「既存不適格建築物」である場合は、その分評価額が下がる傾向にあります。

新築は担保評価額が高い。まだ新築志向の根強い銀行の融資評価

新築の場合、住宅ローンの建物評価は物件価格に近い価格が担保評価額となることも少なくないようです。

なんといっても新築は築年数がゼロ年であり、耐用年数をとても気にする邦銀は新築志向である場合が多いのが実態です。

pension_ssまた、新築で売りだされている価格というのは、住宅メーカー(ディベロッパー)が周辺状況や過去事例を徹底的に調べた上で、相場に照らし合わせて適正に決められた価格であると考えられることもあります。

ただし、相場調査を実施していないと思われる事例や、周辺の取引事例からみて高額な取引など、特殊な取引だと考えられる場合には、銀行は独自に調査し、評価額を決定することもあります。銀行側も万が一に備えて真剣なのです。

借入可能額は、年収ごとの「返済比率」と高めの「審査金利」で審査

銀行は「返してくれるから貸す」のでした。返してくれるかどうかを審査するポイントは先ほど説明した通りです。

それでは具体的に住宅ローンの借入可能額(いくら貸してくれるのか)をどのように算出するのでしょうか。ここでポイントになるのが「返済比率」と「審査金利」です。

「返済比率」で無理のない返済かを審査。わずかな年収差が通過可否を握る

返済比率とは、収入の内いくらがローン返済にあてられているか、その割合をいうのでした。

銀行は「2,500万円を35年間、この金利で貸した場合、月々の返済はいくらになるから、この方の収入(税引前の額面金額)から計算すると返済比率は32%になるな」などといった具合で、まず返済比率を計算します。

man_magnifying-glass_ssこの返済比率「32%」について、年収ごとに定められた返済比率の基準に収まるかどうかをみます。

例えば、「年収400万円未満なら返済比率30%まで、年収400万円以上であれば返済比率35%まで貸し出す」という審査基準があった場合、審査を申し込んだ方が年収400万円であれば2,500万円のローン申込みは通過、年収が390万円であれば残念ながら審査落ち、ということになります。

この例でいうとわずかな10万円の年収の差が、審査に大きな結果を与えることになるのです。

「審査金利」でストレスチェック。金利に将来のリスクを織り込む

もう一つのポイントは「審査金利」です。先ほど、返済比率を計算する時に「“この金利”で貸した場合」と審査する銀行がつぶやいていました。この金利を審査金利といいます。

実際に貸し出す金利で検討するのではなく、その金利にプラスして少し高めの「審査金利」で返済比率を計算するのです。

interest_loan_life-event_s住宅ローンの返済は長期にわたります。現在の金利水準が今後どのように推移するか、銀行でさえ正確に予想できません。また、おカネを借りている人の生活水準が現状のまま保たれる保証もありません。

ですので、審査する際にそれらをリスク分として現行の金利に上乗せし、高い金利で計算するのです。各銀行によって審査金利は異なります。審査金利が大きい銀行はそれだけリスクを厳しく見積もっており、貸出可能額は小さくなります。

適用金利は返済比率・頭金・物件担保力などが重要。返済の可能性をみる

借入可能額(いくら貸してくれるか)が同じでも、適用金利(いくらの金利で貸すか)は審査によって異なります。

papers_ss広告などでも「□%~△%」といった具合で、幅をもたせていることが多いです。幅がある場合、どの金利でローンを組めるかは審査で決まってきます。

審査のポイントは銀行によって細かいところは異なり一概にはいえませんが、「返してくれる可能性」が高まれば優遇される、とイメージください。

低い返済比率は、生活に余裕をもって返済できる証。滞納の可能性が低い

借入可能額の審査でも重要な項目であった返済比率、ここでも大事なポイントです。

返済比率が低ければ、生活に負担なくスムースに返してくれると銀行は考えます。

つまり、リスクが少ないと判断され、有利な(低い)金利でローンを組める可能性が高まります。

諸費用や頭金をしっかり用意する方は計画性がある

物件代金以外にかかる諸費用や、住宅ローンの頭金をしっかり入れることが大切です。

返済利息も少なく(頭金ゼロの場合よりも)短期で返せるため、銀行は「きっちり返してくれそうだからリスクは少ないな」と判断して、有利な適用金利で貸し出してくれます。

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諸費用はできるだけご自身で用意し、さらに頭金も(多ければ多いほどいいというわけではありませんが)なるべく入れるようにしましょう。

物件の担保力が高いと、万が一の場合に残債を回収できる

銀行は物件に必ず抵当権を設定し、万が一の場合にはその物件を売却して返済原資とします。

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その他にも、住宅ローンの返済口座を給与振込口座に設定すると、銀行としては返してくれる可能性が高まるということで、それだけ金利を優遇する場合もあります。

住宅ローンは生活を見直す絶好のチャンス。生活に見合った融資を

いくら借りられるか(借入可能額)も大切ですが、いくら返せるか(返済可能額)を見極めることがもっと大切です

「住宅ローンは年収の5倍が目安」とも「6倍が目安」などとも言われますが、一人一人の実際の生活によってそれを目安としていいかどうかは大きく変わります。

household-accounts_ss表面上の数値より、現在の貯蓄や毎月の食費・衣料品・雑費、お子様の教育費など、各種ライフイベントも考慮して、実態として無理なく生活できるかどうかを現実的に検討しましょう。

繰り返しますが、住宅ローンを組むということは生活を見直す絶好のチャンスなのです。

ファイナンシャルプランを立てることで数値に落とし込んで具体的な対策が計画できます。不動産購入は住宅ローン購入、大きな買い物の前にしっかりと今後について見つめなおしたいですね。

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