ノンリコースローンは、住宅を売り払えば残債があっても借金が帳消し

ローンには、リコースローン(遡求型融資:recourse loan)とノンリコースローン(非遡求型融資・責任財産限定型ローン:non-recourse loan)の大きく2つがあります。

住宅ローンが支払えなくなった場合、担保に入れているマイホームを売り払っても、なお残債が支払えない時に、残っている借金を個人的に支払い続けなければなりません。

failure_foreign-man_s一方で、ノンリコースローンは、物件を売り払っても借金が残る場合、その借金を返済しなくてよくなります。

つまり、リコースローンは物件を手放しても返済義務は残り、ノンリコースローンは住宅を取られたらそれでおしまいにする(それ以上の返済義務はない)という大きな違いがあります。

マイホーム(実需物件)への融資は、「人」に貸すリコースローンが合理的

これらの違いを指して、「リコースは人に貸し、ノンリコースは家に貸す」といういい方がされることがあります。日本ではほとんどリコースローンであり「人」に貸します。

そもそも、収益物件など投資に対する融資であれば、融資した先の不動産が賃料収入を生み、それを原資に返済していきます。

個人・住宅家_s融資対象と収益を生む対象が同じ投資不動産であり、事業が失敗すれば物件を売却して債務免除という考えも理解できます。

しかし、マイホームへの住宅ローンの場合、住宅自体は(売却時までは)なんら収益を生みません。収益を生むのは融資した人であり、具体的には人が稼ぐ給料などです。

だからこそ、銀行は審査の際に年収や勤務先・勤続年数、返済比率など人の審査を重視するのです。

人に貸すからこそ、返済できず家を手放しても借金が残る住宅ローン

金融機関は住宅ではなく人に貸すという意識であり、借りた人がそれを住宅購入に充てているという構図です。

従って、万が一返済できなくなっても、その人に借金がついて回るリコースローンが主流になっているともいえるのです。

ノンリコースローンは、住宅価格が上昇する局面ではそれを売却することで借金をまかなうことができるかもしれません。

しかし長期的な住宅市場を見通すことは難しく、やはり投資収益物件に適しているといえるでしょう。

なぜ銀行は住宅ローン審査で「人の属性」を重視する?投資物件との違い

【参考】アメリカでもノンリコースローンは一部の州のみ。多くはリコース

ノンリコースローンが実施されている地域としては、カリフォルニア州など米国の西海岸が有名です。

アメリカでは州の法律によって、残債務が免除される(請求を禁じる)州や、担保物件の抵当権を実行(金融機関が強制的に売却)するか、または売却せずに債務の請求をするかどちらか一方しか選べない「One Action Rule」など、金融機関の請求を規制している州があります。

west-coast_usa_america_sこれによって、債務者は残債の支払いから解放されるため、(当初の契約がリコース型であっても)事実上のノンリコースローンといわれています。

しかし、アメリカ全土でみればリコースローンの方が主流です。

マイホームではない商業施設などには、日本でも一部ノンリコースローンが見受けられますが、やはり全体としてリコースローンが主流といえます。

ノンリコースは、貸し倒れリスク分が金利に上乗せ。無理なローンも誘発

物件を手放したらそれ以上に債務(借金)を抱えていてもその支払いを免除されるノンリコースローン。

一方で、マイホームを取られた上でさらに残った借金をコツコツ返済しなければならないリコースローン。

stand-crossroad_life_s一見、ノンリコースローンの方がメリットが大きいように思えます。しかし、その裏には大きなデメリットも抱えているのです。

「借りたものは返す」という意識を持つ人と、「返せなかったら家を手放せばいいや」という前提で借りる人とでは、銀行も貸し倒れリスクの考え方が変わってくるのです。

銀行がリスクを負う分、貸し出しが慎重に。審査も厳しく金利が高くなる

金融機関の立場からすれば、ノンリコースローンの場合には融資したおカネを返してもらえないリスクが高まります。

その為、住宅ローンの審査がかなり厳しくなり、人の属性もそうですが、それ以上に物件に資産価値があるか、数十年後に万が一が起こった場合にいくらで売れる見込みか、などを精査します。

融資することが決まっても、債務者に最後まで残債に責任を負ってもらうリコースローンに比べて、当然に貸出金利が高くなります。さらに頭金も多めに用意しなければなりません。

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日本で採用されるリコースローンは、多くの人で借りたら最後まで返すという意識の中で貸し出しが行われている分、全体として金利が引き下げられているのです。日本の貸倒率は米国に比べて低いともいわれています。

日本と異なり、米国では多くの州で住宅ローンの金利支払いが所得から控除される仕組みがあるため、金利が少し高いことに対してそれ程抵抗がないのかもしれません。

ただ、やはり金利は低い方が月々の家計への負担は減るでしょう。

借金チャラでも「債務免除益」による多額の所得税が課せられる

「マイホームを手放せば借金がなくなる」という側面だけ捉えると、身の丈に合わない高額な物件を購入する可能性があります。

「うまくいったら完済して自分のものに、払えなくなったら諦めればいい」と安易に物件を購入しようと考えてしまうかもしれませんね。

このようなモラルハザードの問題を内包しており、安易に購入する人のリスクを、堅実にコツコツ返す人に押し付けて金利があがる構造が出来上がってしまうのです。

moral-hazard_irresponsible_sそもそも、アメリカの一部の州で行われているノンリコースローンにおいて、物件を手放してもなお残った残債を免除してもらった場合、債務免除益としてそのまま所得とみなされます。

つまり、借金がなくなっても、その後に免除された借金分の所得を得たということで高額な所得税が課せられ、その支払いに苦しむことになります。

やはり、広く一般の人が関わるマイホーム用の住宅ローンを考えた場合に副作用が多く、ノンリコースローンは投資向きということがいえるでしょう。

リコースローンでも、「競売」の前に「任意売却」があり債務圧縮が可能

ローンが支払えなくなった場合には、(住宅ローン組成時に保証契約を結んでいれば)保証会社が銀行に立て替え、債務者の代わりに借金を支払います(代位弁済)。

その後、保証会社から「代わりに支払った住宅ローンの残債を支払ってください」と請求がきます。

bankruptcy_mortgage-loan_recourse_sこのまま支払いせずにいると、万が一のために担保に取っていた住宅を裁判所を通じて「競売」して強制的に残債の一部を回収します。

ただし、債務者は競売によって家を失っても(自己破産などを行わない限り)、原則として残った未払い分のローンは返済を続けなければなりません。

不動産市場での「任意売却」は現実的な生活の立て直しができる

一方で、競売に至る前に通常の不動産市場で物件を売却する「任意売却(任売)」が実施できれば、より現実的な生活の立て直しができます。

競売では裁判所による売却でなかなか融通が利きませんが、任売は、債権者(金融機関)と債務者(住宅ローンを借りた人)が相談しながらある程度柔軟に不動産を売却します。

相談・役所_300任売で物件を手放しても、リコースローンである限り、原則としては残った借金はチャラにはならないことは変わりません。

しかし、残ったローンの毎月の返済額を少額にしてゆっくり返していったり、残債を一部(または全部)免除してくれたりと、交渉次第で負担が軽くなることが多いのです。

金融機関にとっても、競売より高値で売れる任売がお得

金融機関にとっても、二束三文でしか売れない競売よりも、通常の市場で売り出した方が回収額も多く、任売を実施した方がお得といえます。

裁判所_s一方で、いつ売れるか分からないものをズルズルと待つわけにはいかず、基本的には期限を区切って最終的には競売を実施します。

ある期日までは通常の市場での売却にトライしましょう、というのが任意売却のイメージです。現在は、多くの銀行が応じてくれるようです。

「サービサー」へ未払いローンの回収委託や債権譲渡をすることも多い

金融機関は、回収見込みの低い債務者からローン残債を請求する業務を、債権回収のプロである「債権回収会社(サービサー)」に依頼したり、住宅ローン債権(おカネを払ってくださいという権利)を売り渡す場合があります。

例えば、すぐに(競売前に)サービサーに債権を売却して、新たな債権者となったサービサーが債務者から未払いローンを回収することもあります。

servicer_bankruptcy_mortgage-loan_recourse_sまた、競売は金融機関が債権者として実施するけれど、並行して任売などの回収業務を委託することもあります。

競売や任売が終わった後に、まだ残る残債部分の請求権をサービサーに売却することもあります。この場合には、(競売や任売後の)残債のわずか2~5%程度で債権を売却(譲渡)しているともいわれています。

サービサーは銀行から債権を買い取った時点で銀行は損切していることになります。格安で譲り受けたサービサーは残債の一部を回収すれば収支に見合うため、ムリな返済を迫ることは少なく、債務者の生活の立て直しを考慮しながら返済を迫ります。

銀行にもメリットの多い債権譲渡(売却)。回収は費用対効果が悪い

回収できるかどうかわからないのにいつまでも債務者に請求することに手間も時間もコストもかかるため、債権譲渡や回収依頼をすることが大局的にみてコストパフォーマンスが高いといえます。

不良債権を売却すれば損金処理してバランスシート(貸借対照表)から切り離せ、財務状況が改善するというメリットもあります。

握手_sそもそも、住宅ローンを組んだ時に、回収できない場合を想定して(債務者から)保証料を徴収している場合がほとんどです。あらかじめ保険をかけているともいえ、この事態はある程度想定内ともいえます。

打算的な話になりますが、銀行としては債務者に自己破産をされ請求権が消滅してしまうよりも、少額でもいいから回収しその後はサービサーなどに任せるという戦略が得策と考えるのでしょう。

リコースローンは人に貸すといわれますが、実際には状況に応じて債務免除され、ノンリコースローンのような解決をみる場合もあるのです。

(ノン)リコースローンのまとめ

万が一、返済ができなくなった場合、リコースローンであればマイホームを取り上げられても原則として、残った借金は返済する義務があります。

アメリカの一部の州でみられるようなノンリコースローンであれば住宅の抵当権を実行されれば、残債が残っていようともその返済は免除されます。

一方で、ノンリコースローンの場合には銀行も融資に厳しくなり金利が上がってしまうという大きなデメリットも抱えます。債務免除されれば所得とみなされ後々税金の支払いに追われることにもなります。

日本ではマイホームへの融資である住宅ローンは、多くの人が責任をもって返済するからこそ低金利が実現できているともいえます。最悪の場合にも任意売却によって現実的な生活の立て直しができます。

いずれにせよ、ファイナンシャルプランを作成するなど、あらかじめ無理のない返済計画を立てた上で安心・安全・快適な生活を送ってくださいね!

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