金利の種類によって基準とする指標(メカニズム)が異なる

結論からいえば、変動金利は日銀が決める「政策金利」に、(全期間)固定金利は「新発10年物国債利回り」に連動します。

そして、3年や5年など一定期間金利を固定する固定特約の金利は、「円金利スワップレート」というものを基準にします。

完全に連動するわけではありませんが、これらは基準としてみなされており、ある程度の相関性が認められます。

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以下は少し難しい話ですが「それぞれの金利が基準とするものが異なる」ということをご理解ください。まったく別の金利メカニズムで決まるのです。

住宅ローンは住宅を万が一の担保に差し入れるため、銀行にもリスクが少なく代表的な指標に連動させられるという言い方もできます。

尚、固定金利は、住宅ローンを実行した時点の金利を返済が終了するまでその金利で固定します。一方で、その固定金利の基準となる国債利回りは日々変動していることを(誤解のないように)ご理解ください。

①変動金利は「生活の実態」で決まる。日銀が政策金利でコントロール

変動金利は各金融機関が決める「短期プライムレート」と呼ばれる金利に連動します。

この短期プライムレートは、銀行が優良企業に貸し出す際の最も優遇された金利の内、1年以内の短期で貸し出す際の金利です。

そしてこのレートは、金融機関同士がおカネを貸し借りする時の「市中金利(無担保コールレート翌日物)」に連動し、この市中金利をコントロールしているのが日本銀行の「政策金利」なのです。

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つまり、短期金利は日銀の政策によって決まってくるということです。

景気の安定を至上命題とする日銀、景気が良くなれば日銀は短期金利を上げるように動き、景気が悪くなれば下げようとします。

噛み砕いて言えば、変動金利は「日々の生活の実態」に即して動くのです。

②当初固定金利(一定期間固定金利)は「円金利スワップレート」で決まる

全期間固定と変動の間の性質を持つ「一定期間固定金利」は、円金利スワップレートという市場金利(デリバティブ金利の一種)を基準としています。

金利スワップとは、異なる種類の金利を交換する取引のことをいい、特に日本円の場合は円金利スワップといいます。

yen-yen_swap_s最も一般的な取引は、変動金利と固定金利を交換するものです。変動金利でおカネを貸し借りしたい人と、固定金利でそうしたい人との間で金利の受け払いを交換するのです。

「円金利スワップレート」とは、その際の「変動金利と交換(スワップ)可能な固定金利」のことを指します。

【使用例】企業が変動リスクから解放されるために、固定金利で借り換える場合

例えば一般企業は、変動金利でローン契約を結んで借りたおカネを、金利変動リスクを避けたいために固定金利で支払う契約に変更したいという場合があります。

その場合、別の金融機関と金利スワップ契約を結び、その金融機関に固定金利を支払う代わりに、変動利息を受け取ればいいのです。

そうすると、上図のピンク色の部分の通り、企業としては受け取る変動利息をそのまま横流しすることで変動金利から解放されます。

事実上、固定金利で融資を受けたことと同じことになるのです。

この時の、変動利息と固定利息を交換する固定金利を円金利スワップレートといい、その時々でレートが決まります。

金利スワップレートは予想(期待)で動く。上昇する予想があればレートは上がる

「今後、長期金利が上昇するだろうなあ」という期待(予想)が高まれば、スワップレートは上昇し、「今後下落していくはずだ」という予想があればスワップレートは下がります。

スワップレートは「変動金利と固定金利」を交換する時の固定金利の水準であり、今後どのように長期金利が変化するかを予想するものともいえます。

shakehands_ss例えば、「今は、返済期間10年・変動金利0.5%で借りているけど、今後長期金利が上がりそうだ。固定金利1.0%の支払いに変えてくれるなら借り換えたい」という企業の要望があるとします。

それに対し、スワップ契約を受ける側の金融機関は「今後金利が上がるだろうから(変動金利の支払いが増えるだろうから)、固定金利に交換したいなら1.0%はもらわないと割に合わないな」となります。

この時、スワップレートは「1.0%」に落ち着くということです。

③固定金利は10年物国債利回りで決まる。実態を先取りして「予想」で動く

一般的に、長期金利は新発10年国債利回りが基準に決まります。大切なことは国債市場という「市場」で決まるということです。

つまり、インフレやデフレなど将来の物価変動や将来の金融政策が及ぼす影響を予想(期待)して金利水準が形成されるのです。

一例を挙げれば、インフレ期待が高まれば長期金利は高まる傾向にあります。

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ここでのポイントは、予想(期待)がありさえすれば実際にインフレになっていなくても、市場は将来の変化を先取りしてスグに変動するということです。

尚、国債は財務省から定期的に発行されます。「新発10年物」というのは発行された10年物国債のうち最新のもののことです。

また、利回りといっても、国債には発行市場と流通市場があり、ここでは流通市場の利回りを指しています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

国債の発行市場と流通市場の仕組み。やっと落札利回りもプラスに転じた

固定金利は変動金利よりも先にあがる。予想は実態を先取り

固定金利は予想(期待)で決まり、変動金利は実態で決まる傾向にあることが分かりました。

実態よりも予想が先にありますので、変動金利より先に上がるのは固定金利ということです。

注意・ポイント・気づき_s「とりあえず金利の低い変動金利で住宅ローンを組んでおいて、金利が上がりだしたら固定金利に変更しよう」という考えは危険であるということです。変動金利が上がるより先に固定金利が上昇していることが多いためです。

投資家が日々売買しており乱高下する国債利回りと、日銀が実体経済などをにらみながら慎重に変更する政策金利とではその変動スピードが異なることはイメージとして理解できると思います。

あくまで一般論でしかありませんが、長期金利は先取りして柔軟に動いていくことをしっかり理解しておきましょう。

【参考】金利スワップレートと国債利回りは相関関係がある

金利スワップレートも国債利回りもどちらも予想(期待)で動きます。

そして一般論として、10年のスワップレート(その時の変動金利を変換する固定金利)は10年物国債利回りに、20年のスワップレートは20年物に連動します。

多くの人が、政府が資金を借りる際の利息(クーポン)である「国債流通利回り」を金利の基準として参考とするためです。

上図は、(日銀の政策が大きく動いた期間を含む)2015年12月~2016年11月の間の10年物円金利スワップレート(赤線)と10年物国債流通利回り(グレー線)を併記していますが、概ね同じような動きをしていますね。

スワップレートは国債利回りより少し高めの水準で推移していますが、これは信用リスク(国債を発行する政府は事実上ゼロリスク)や、将来の金利変動の期待などが含まれるためです。

金融機関がおカネを貸し出す際の、変動金利の指標6カ月物「TIBOR」

上図のグラフには、融資期間6カ月の「TIBOR」(Tokyo InterBank Offered Rate)がオレンジ線で示されています。

これは、東京市場において銀行間で貸し借りする際の、資金の貸し手側が提示する金利で「金融機関が資金調達する時の基準金利」になります。

つまり、6カ月ごとに変わる変動金利の基準値であり、これに銀行の利益(スプレッド)を乗せて企業などに貸し出すのです。

【実例】金利上昇予想によって「TIBOR」と「金利スワップレート」が接近・乖離

2015年12月ころはTIBORに比べてスワップレートが高い水準にあります。

この時には「TIBOR(変動金利)0.3%弱の水準に対して、利息を10年間固定金利にしたいなら、スワップレート(固定金利)は0.5%程度にしないと収益に見合わないな」という状態だったのです。

しかし、2016年1月29日の日銀の金融政策決定会合において、マイナス金利政策が導入されました。

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すると、「今後、金融緩和が続き国債利回りも抑え込まれる。長期金利はしばらく上がらない」という予想に一転、変動金利の水準と変わらないほどまで落ち込んだのです。

そして、2016年11月7日にドナルド・トランプ氏が次期大統領に決定後に国債利回りが急騰、今後長期金利が上がるという予想からTIBORとスワップレートが乖離しました。

このように、金利が上がるか下がるかという予想によってスワップレートは変動金利と離れたりくっついたりするのです。

金利の決まり方のまとめ

金利は、変動・一定期間固定・全期間固定の3種類でそれぞれ連動する指標は異なります。

一つ一つをみれば複雑な話に思えますが、変動金利は実態で、固定金利は予想で決まることが大きなポイントの一つです。

それぞれなぜその指標を基準として連動するのか、その理由を次ではみていきましょう。

特に、一定期間を固定金利で貸し出す際の金利は、円金利スワップレートというものを基準としていることが分かりづらい部分かと思われます。実は、金融機関の収益構造に答えがあるのです。

銀行の収益と金利の種類。住宅ローンの繰上返済に違約金がかかる理由

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