低炭素建築物とは省エネの新基準を超える住宅

省エネルギーや二酸化炭素排出の抑制などを目的として、国としても市街化区域などにおいて住宅の低炭素化を推進させています。

2020年度にはすべての新築住宅が新たな省エネ基準に合致するよう義務付けられることが決定しています。

省エネ・節約・住宅・電球_s

新たな省エネ基準は改正省エネルギー基準と呼ばれ、この新基準をさらに凌駕した省エネ対策を講じた建物が低炭素住宅(建築物)なのです。

法的な背景は、2012年には建築物の低炭素化を目的とした「都市の低炭素化の促進に関する法律(通称:エコまち法)」が公布・施行されたことです。

これに基づき「低炭素建築物認定制度」が創設されたものです。

主に市街化区域をターゲットとして普及させる方針

この制度に基づき、市街化区域等内において、国が低炭素住宅を認定し、その認定された住宅には各種減税制度など優遇制度が適用されるのです。

市街化区域を主に対象としているのは、省エネ対策は、エネルギーを大量に使う都市部で総合的に実施すると効果的だからです(山奥で一つの家屋が省エネしても効果はあまりないということですね)。

省エネ住宅は着々と建築されている

2020年に新省エネ基準を満たす住宅しか建てられなくなります。

その先には、「省エネ」「創エネ」「蓄エネ」などを駆使し、創エネルギー≧消費エネルギーとなる「ゼロエネルギー住宅」(ZEH:net Zero Energy House)も見据えています。

2030年には新築住宅の平均でゼロエネルギー住宅を、2050年にはすべての住宅でゼロエネルギー住宅とする目標が示されています。

また、オフィスビルや商業施設など2,000㎡以上の建築物を皮切りに、300㎡以上の建物、そしてすべての新築住宅と段階を追って義務化している途上で、商業施設などでは省エネ化が既に本格化しています。

【追記】住宅の省エネ化の流れは変わらないものの、2020年の義務化は撤回されました。詳しくは以下コラムをご参照ください

省エネ住宅の義務化が白紙撤回?!今後、新築戸建てを買う場合の注意点とは?

低炭素住宅の認定基準

低炭素建築物の認定基準は、必須である「定量的評価項目」と、8つの項目の内2つ以上の基準に該当すればよい「選択的項目」から成り立ちます。

必須項目では省エネルギー法に基づく省エネ基準と同等以上の断熱性能(断熱等性能等級4)やエネルギー消費量の低減(一次エネルギー消費量等級5)の確保、選択的項目では(省エネ基準では考慮されていない)低炭素化に効果のある措置を講じることを求めています。

 評価の種類概要
定量的評価項目
(必須)
  • 【断熱等性能等級4】省エネ法の省エネ基準と同等以上の断熱性能・日射熱取得性能が確保されていること
  • 【一次エネルギー消費量等級5】省エネ基準に比べ、(家電などのエネルギー消費量を除く)一次エネルギー消費量が▲10%以上優れること
選択的項目
(2つ以上)
  • 節水対策
    1. 節水に資する機器を設置している(以下のいずれか)
      • 設置する便器の半数以上に節水に資する便器を採用
      • 設置する水栓の半数以上に節水に資する水栓を採用
      • 食器洗浄機を設置(共同住宅の場合、半数以上の住戸)
    2. 雨水、井水、雑排水の利用のための設備を設置
  • エネルギーマネジメント
    1. HEMSまたはBEMSを設置
    2. 太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電設備、およびそれと連携した定置型の蓄電池を設置
  • ヒートアイランド対策
    1. 一定のヒートアイランド対策を講じている(以下のいずれか)
      • 緑地または水面の面積が敷地面積の10%以上
      • 日射反射率の高い舗装の面積が敷地面積の10%以上
      • 緑化を行う、または日射反射率等の高い屋根材を使用する面積が屋根面積の20%以上
      • 壁面緑化を行う面積が外壁面積の10%以上
  • 建築物(躯体)の低炭素化
    1. 住宅の劣化の軽減に資する措置を講じている
    2. 木造住宅もしくは木造建築物
    3. 高炉セメントまたはフライアッシュセメントを構造耐力上主要な部分に使用

建物全体の省エネ性能を評価する「外皮の熱性能」と「一次エネルギー消費量」

省エネ基準は、1979年に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(通称:省エネ法)」が制定されて以来、1980年に初めて省エネ基準が告示、その後は1992年に新省エネ基準、1999年に次世代省エネルギー基準と基準が改善・強化されてきました。

さらに東日本大震災を経て、2013年に改正省エネルギー基準が制定されました。低炭素住宅はこの基準を満たすようまずは求めています。

旧基準(次世代省エネルギー基準)では、断熱性能を「床面積」に対して評価しており、これでは狭小住宅など床面積が小さな物件では過度な断熱対策をしなければなりません。一方で新基準は、外皮、つまり床や壁、天井部分を含む全体で評価します。

省エネ基準(外皮)_700

この外比表面積に対して、外皮の熱性能と一次エネルギー消費量を評価します。

さらに、外皮の断熱性のみを評価する基準ではなく、省エネ効果の大きい暖冷房、給湯、照明設備などによる取組を評価するためにも新基準では、国際的にも使用されている「一次エネルギー消費量」という指標で包括的に評価しています。

外皮の断熱性能に加えて、一次エネルギー消費量の2つの指標で評価し、建物と設備機器を一体化して建物全体を総合的かつ客観的に評価・比較できるように改良したものです。

現在利用している建物の省エネ化を基本としながら、時間的・空間的にも配慮

考え方として、建物を使用している期間のCO2削減を基本とし、使用期間中のCO2削減のために、HEMS・BEMSの導入や太陽光発電などによる蓄電、節水や雨水の再利用など水消費の削減を促しています。

HEMSやBEMSの「EMS」というのは「Energy Management System」のことで、エネルギー消費を監視し、使用量を制御することで効率的にエネルギーを使うシステムのことです。HはHome(住宅)、BはBuilding(ビル)、その他にもFEMS(Factory:工場)やCEMS(Community:地域)という概念があります。

低炭素建築物認定基準の概念(考え方)_700また低炭素化の概念を、長期的にみてCO2削減に資する住宅とするよう時間的に拡張しています。つまり、建物を新築・改修・解体を含むライフサイクル全体でみて低炭素化の効果がある住宅造りを促しています。

具体的には、新築や解体する頻度を減らすことで低炭素化につながり、そのためには住宅の劣化を防ぐ対策によって住宅の超寿命化が必要です。また、建築時にも、製造時などのCO2排出が少ない建材の使用(木造住宅や高炉セメントなど)の使用が促されています。

さらに、住宅そのものではなく住宅が外部の環境へ与える影響にも目を向け、間接的なCO2削減も推奨しています。空間的に省エネの概念を拡大したのですね。具体的には、ヒートアイランド対策によって周辺環境における熱の負荷を低減させることが効果を生みます。

申請方法は2つ。事前審査方式の方が短時間

低炭素住宅は、上述した諸条件を満たすプランを建築主(施主)と建築会社間で打合せ、「低炭素建築物新築等計画」を提出して審査に合格する必要があります。

この計画書は建築会社が作成しますので難しいことは理解しなくて構いません。

所管行政庁がそれを認可すれば、「認定通知書」を発行してもらえます。これらの手続きは建築前(着工前)にすべて終わらせなければなりませんのでご注意ください。

ここで、所管行政庁とは建築基準法に基づく建築確認申請をする「建築主事」がおかれている地方公共団体のことで、認定を行う所管行政庁は検索することができます。

申請者(建築主)が事前に技術的審査を受ける場合

所管行政庁に計画書を提出する前に、住宅品確法に基づく「登録住宅性能評価機関」で、あらかじめ技術的審査(性能評価)を依頼することができます。

長期優良住宅の認定と同様に、評価機関に技術的審査を申請し、合格すれば適合証が交付されます。

その適合証を添付して、所轄行政庁に認定申請することで、認定を受けられます。無駄がなく効率的な審査手順です。

所管行政庁から技術的審査を外部委託する場合

はじめから、低炭素建築物新築等計画を所管行政庁に直接、認定申請する方法です。

所管行政庁は技術的審査(性能評価)をせず、それを登録住宅性能評価機関へ委託します。一般的に、このやり取りでかなりの時間が使われます。

いきなり所管行政庁に提出してもかまいませんが、結局、所管行政庁から登録住宅性能評価機関に審査委託されます。

ですので時間を削減したい場合、まずは登録住宅性能評価機関へ技術的審査を受けることをおすすめします。

低炭素住宅のまとめ

低炭素住宅(建築物)は、省エネの新基準である改正省エネルギー基準を凌駕する省エネ性能を発揮する、低炭素を実現した優良住宅です。

新基準は、これまでの床面積のみにこだわっていた旧基準(次世代省エネルギー基準)を建物の表面積(外皮)で考え、一次エネルギー消費量で断熱性などを測るものに改正しました。

2020年以降はすべての新築住宅に対して、この新基準に適合する建物しか建てられなくなります。

低炭素住宅はその新基準にさらに踏み込んだ住宅で、低炭素という概念を使用する建物のみならず、時間的にも空間的にも拡張した広い概念で捉え、評価するものです。

この住宅のメリットやデメリットはどういうものがあるのか、それらを次でみていきましょう。

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