収益(手残りキャッシュ)は購入「前」でほとんど決まる!事前検討が重要

不動産投資の収益構造(手残りキャッシュ)を構成する各項目をあらためてみてみましょう。

まず、投資ローンに関する項目である「②ローン元金返済」「③支払金利」「⑦頭金」「⑧ローン残債」は、購入前に「融資額」「金利」「融資期間」を決めれば購入後には不変です。

「手残りキャッシュ」=【Ⅰ】インカムゲイン+【Ⅱ】キャピタルゲイン

  • 【I】インカムゲイン=①賃料収入-②ローン元金返済-③支払金利-④経費-⑤税金
  • 【Ⅱ】キャピタルゲイン=⑥売却価格-⑦頭金-⑧ローン残債-⑨経費-⑩税金
保有時の収益構造
①賃料収入【I】インカムゲイン
(手残りキャッシュ)
⑤税金
④経費
③ローン支払い金利
②ローン元金返済
売却時の収益構造
⑥売却価格【Ⅱ】キャピタルゲイン
(手残りキャッシュ)
⑩税金
⑨購入・売却経費
⑧ローン残債
⑦ローン頭金

もちろん、繰り上げ返済を行えば計画から変えられますが、これらの大枠は投資前に決まり購入後に大きく変化させることは難しいといえます。

また、「①賃料収入」は購入予定の周辺相場から大きく乖離することは考えにくく、「⑤税金」の重要な比重を占める減価償却費も、法定耐用年数や築後年数、建物価格などによって事前に決まります。

「経費」のコントロールは可能、賃料や税金にも一定の影響。事前の事業計画が重要

購入「後」に能動的に変えられる項目は、修繕やバリューアップリフォーム・リノベーションをどこまで行うかなどの「④経費」です。

この経費をコントロールすることで、間接的に「①賃料収入」や「⑤税金」に影響を及ぼすことができます。

また、売却する時の市場の期待利回りなどで「⑥売却価格」は読みづらいといえますが、資産価値の下がりにくい物件は事前にある程度予想もつきます。

大切なのは、購入後に収益構造を変えようと思ってもそれは限られており、購入「前」に詳細な事業計画(シミュレーション)を立ててしっかり検討しておくことが極めて重要ということです。

一つ一つポイントをみていくことでどのような投資物件を買えばキャッシュが得やすいかをみていきましょう。

収益の上限があるミドルリターン、長い時間をかけ投資回収。購入前の見極めが大事

賃貸アパート・マンション事業のビジネスモデルは、部屋を他人に貸して賃料を得るというシンプルなものです。

保有時にはどんなに頑張っても「戸数×賃料」以上に賃料収入は得られません。戸数は事実上変えられないため、賃料を上昇させることも考えられますが2倍・3倍と上昇させることは非現実的です。

つまり、(株式投資のように)大きく利益が上振れすることは期待できず、ミドルリターンといわれる所以でもあります。

graphs_ss一方で、建物を適切にメンテナンスすれば入居者が確保できる限り、何十年も事業を継続できます。

毎年の収益上限は決まっていても、時間軸でみれば長い目でみていくらでも収益を伸ばせます。

不動産投資は原則として長期的に付き合っていく必要があるのに対して、そして毎年のキャッシュフローは購入「前」にほとんどが決まります。ですので、購入物件を事前に精査することがとても意義を持つのです。

「売却価格」を維持する資産価値が下がりにくい物件を選ぶ。立地がカギ

資産価値の高い物件とはいつでも貸せて売れる「キャッシュを生む物件」のことです。そして資産価値は「立地」で大部分が決まるといわれています。

もちろん、定期的なメンテナンスなど管理をしっかり行い、場合によっては設備を充実させることで建物内部の魅力度を高めることは大事です。

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しかし、どんなに立派な建物でも、周りにコンビニなど便利な施設がまったくなく、駅から1時間も歩かなければならない場所に住みたいとは思わないでしょう。

将来の買い手の気持ちになれば、利便性が高く人の集まるエリアは入居候補者も多く空室リスクが低いため魅力です。高値でも購入したいと考えるでしょう。

立地を制するものはリッチになる」といわれるくらい、不動産投資ではまずは立地の選定が大切なのです。

土地の活用性(整形地)・遵法性(再建築可)や最寄駅の乗降客数、災害耐性を確認

具体的な検討手順までは深入りしませんが、考え方としては、将来の買い手(投資家や不動産業者)がこだわるであろうポイントを押さえておくことが大切です。

一棟アパート・マンションのように、土地の所有権も得られる物件に投資する場合には、土地が利用しやすいか(旗竿地ではなく整形地か)、再建築不可物件などの既存不適格物件や違法物件でないかは最低限チェックしておきましょう。

scramble crossway_ssまた、今や簡単に駅の乗降客数(何人の人が駅を利用しているか)はその街の活気を測る重要な指標です。

さらに、その地域に洪水や地震が来た場合に災害耐性の強い地域か、液状化など地盤に問題がないかなどをハザードマップで調べておくことも、売却価格が下がりにくい物件を購入するために大切です。

社会動向と需給を見極め「賃料収入」を確保。レントロールは疑い深く確認

賃料収入を得るためには、なんといっても適正な賃料水準を保ちながら空室率を下げることが最重要です。

相続税の課税などによって、賃貸アパート・マンションの建設は特に地方で増加したことなど、不動産投資の経営は競争が激しくなっています。

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例えば、周りと同じような物件を建てたり、事前検討なく中古アパートをそのまま買うことは危険です。

そのためには購入予定のエリアを調査し、どのような街か・どのような属性(年収・年齢層など)が住んでいるかなどを具体的に調べ、エリアの特性を把握することが大切です。

さらに社会動向を踏まえてその地域が長い目でみてどのように移り変わっていくかを予想することも忘れないようにしましょう。

今や2人以下の世帯が半数以上。高齢者向けや短期貸し出しもエリアによって需要増

例えば世帯人数について、「夫婦+子ども」という世帯が最も多かった(40%超を占めていた)のは1980年代までです。

今や住宅の半分以上は一人暮らしまたは夫婦のみという「2人以下」の世帯で締められています。平均世帯人数も東京都では2人未満にまで減少しています。晩婚化や出生率の低下、ライフスタイルの多様化などによって単身世帯が増えているのです。

このような総論を踏まえた上で、実際に投資を予定しているエリアとターゲットとする入居者層を絞り込み、どのような物件を購入すれば賃料収入が見込めるか具体的に考えましょう。

例えば、高齢化が進み老人の入居をターゲットとする場合にはバリアフリー化できる少し広めの住戸を選ぶことや、逆に毎年新卒採用を実施する企業や学校が点在するような「若いエリア」ではシェアルームや女学生向け専用の、清潔でセキュリティの高い部屋とすることも一案でしょう。

マンスリーマンションなど、賃貸する期間を短期間に絞った経営もあるでしょう。駅から遠くても有名病院の近くであれば身の回りの世話のために1週間単位で親族が入居を希望するニーズも見込めるかもしれません。

民泊といった新しい形の不動産賃貸もでてきており、個別具体的に検討し、周辺物件と差別化できる物件を選びましょう。

レントロールは賃料のばらつきや契約期間、空室の賃料設定などに注意!

賃料といえば、物件購入前にレントロール(家賃や契約期間などをまとめた貸借条件一覧表)を疑い深くチェックしましょう。以下のポイントについて不明な点は、あなたの担当の仲介業者から、オーナー側の元付仲介業者に必ず確認してもらいましょう。

まず、部屋の間取りや設備が同程度であるにも関わらず家賃にばらつきがある物件は要注意です。

一般的に長い間入居している部屋は、昔の高い家賃のままになっていることが少なくなく、現在の相場とかけ離れている可能性があります。その入居者が退去すれば、次の入居者の時は家賃を下げざるを得なくなります。

特に空室の部屋の家賃設定が相場通りかは必ず確認したいところです。売主としては、売却価格を上げたいため「こんなに家賃が取れる物件ですよ」とアピールしたい気持ちがあり、相場より高く設定してレントロールに記載してくる場合があります。

また、入居者属性にも注意が必要です。滞納が繰り返し行われていないか、または高齢者の一人暮らしが多いと事故が起こり賃料が下落する懸念もあります。保証会社に加入するなど対策費用に経費がかさむ場合があることを理解しておきましょう。

さらに、居住用(入居者が住むための部屋)なのか事業用(店舗やオフィスなど)なのかも大切です。事業用であれば、不況時など入居している会社の業績が傾けば退去(撤退)したり、営利法人であれば家賃の減額請求について厳しい交渉を受ける可能性があります。

「投資ローン」は期間を長く・自己資金は少なく。短期固定まはた変動金利

支払金利は月々支払っていかなければならない経費ですので、できるだけ少なくすることが基本的な戦略です。住宅ローンとの違いをしっかり理解しましょう。

不動産投資の特徴の一つ、レバレッジを有効に活用するためにも投資の場合は、返済期間を短くして早期返済することはあまり得策といえません。

できるだけ返済期間を長く設定し、手元にキャッシュを残すというのが基本的な考え方です。

また、多額の自己資金を多く入れることはあまり意味をなしません。余裕資金は手元に残しておき、不測の事態に備えたり優良物件購入を買うチャンスを生かすためにいつでも使える状態にしておきましょう。

もちろん、自己資金を少なくすることで返済リスクは高まるなどこれが唯一正しいものではありません。あなたの事情や背景、投資スタンスなどにあわせて検討ください。

近い将来の売却もある不動産投資。一括返済でも違約金がかからない返済方法を

売却してから不動産事業トータルの損益が判明する不動産投資、売却のタイミングが非常に重要です。

長期固定金利はおすすめしません。売却による一括返済で多額の違約金がかかる可能性があり、売却時を制限してしまう場合があります。

また、インフレ時には金利も家賃も上昇傾向にあるため、変動金利は金利リスクを一定程度吸収できる性質もあります。

不動産投資においては、「変動金利」か「短期固定金利」で借り入れすることが合理的といえるでしょう(場合によってはこれらにも違約金がかかる場合もあります。詳しくは金融機関に確かめてください)。

もちろん、長期にわたりずっと保有し続ける固い決意があったり、金利上昇が見込まれ変動は支払金利が急増すると予想する場合にはこの限りではありません。

「投資家」「不動産の担保力」「事業・実績」を評価。金融機関へは紹介で

不動産投資でローンを組む場合、住宅ローンでの審査と基本的な考えは同じです。

事業を経営する投資家個人の属性や資産状況、(経営者であれば)法人の経営状況などをみたり、物件の担保力(収益性)を審査することは住宅ローンと同様です。

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それに加えて他の不動産投資を行っていればその業績(実績)もみます。不動産投資を繰り返し、複数の投資事業を成功裏に行っている投資家には低金利で貸し出しが行われます。実績を積めば積むほど、優遇金利で借りられる可能性が高まります。

単に黒字だからOKというものでもなく、赤字だから貸し出さないというわけではありません。例えば(会計上)赤字となっていても、減価償却などを利用した節税によって赤字となっている場合は、キャッシュを確保する経営手腕が評価されることもあります。

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そしてできる限り、金融機関と取引のある不動産会社や実際にローンを組んだことのある知人の紹介など、信用に足る方の紹介でいくことをおすすめします。飛び込みで行っても門前払いされるか、金利が高くなったり、金額が少なくなることがあります。

銀行は実績と数値が好きです。それらの点をしっかりとストーリー性を持ってあなたの魅力を伝え、有利な条件で借り入れましょう!

管理状況や修繕履歴を確認して「経費」(リフォーム工事)を抑制する

不動産投資の経費は、月々の管理費や仲介手数料、支払金利などあらかじめ見通せるものも少なくありません。

その中で、額が大きく、かつ突発的に発生するリスクのあるのが修繕費(リフォーム工事)です。購入「前」にしっかり確認しておきましょう。

empty-house_ss修繕積立金が少なく、投資後に多額の修繕費が必要となることもあります。このリスクを防ぐためには、過去にどのような修繕がどれくらいの金額をかけてどの施工会社で行われてきたか、そして今後どのように修繕するつもりなのかを知ることが重要です。

特に屋上(防水)、外壁、配管設備などは金額が大きく、一見してわかりにくい部分でもあるため、必ずチェックしましょう。

「長期修繕計画」がある場合にはあわせて管理組合から入手し、計画通りに修繕されているかなどを確認しましょう。

部屋に内見できずとも現地調査はできるだけ実施、共用部分の管理状況から推測する

投資物件の場合、既に入居者が住んでいる場合も多く、内見ができないことが多いものです。

だからといって、物件の現地調査をせずに投資するのはやめましょう。周辺環境や外からみて分かること、気づくことは多いものです。

例えば、共用部分の管理状態から入居者のマナーや管理状態を推し量ることができるものです。

管理レベルの悪い物件は、後々トラブルや設備の修繕費用がかさむ可能性があります。そもそも入居者も確保しづらくなる可能性もあるので要注意です。

郵便ポストや玄関、ゴミ置き場、廊下などにゴミが散乱していないか、私物が置かれていないか、綺麗に掃除されているかなどを確認しましょう。場合によっては購入後に管理会社を変えることも一案です。

管理人さんが常駐する場合、管理人さんにご挨拶するなどして、様子もチェックしてみましょう。

物件の選び方のまとめ

不動産投資は、購入「前」でその収益(手残りキャッシュ)が最大いくらになるのかがほとんど決まります。購入「後」には動かすことのできない要因がたくさんあるためです。

そのためにも、立地やそのエリアの特徴を調査した上で、あなたの投資スタイルに応じた収益物件を選びましょう。

また、投資ローンは住宅ローンと異なり事業性をみます。金利も住宅ローンより高くなります。投資家の資質や不動産投資の実績も審査対象であり、相手にしっかり理解してもらえる伝え方をしましょう。紹介で融資相談をすると話はスムースになります。

経費も大規模修繕を行った時期や金額、施工会社などを事前に確認し、投資後に不用意なリフォーム工事が発生しないかを確認しましょう。

次は、投資物件の収支を予測するのにとても重要な「レントロール(賃借条件一覧表)」の見方についてみていきましょう。

【レントロール】賃借条件一覧表で家賃下落・空室リスクを見抜く

【P.S.】「この家、買っていいのかな?」…迷わずご相談ください!

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