目次
自己資金の負担が少なく、権利関係の調整など活用法に幅広さがある
等価交換は自分の土地を自己資金の負担なくマンションの住戸に変換できることにその特徴があります。
また、複雑な権利を調整したり、隣接する土地をまとめることでさらに柔軟な活用方法が考えられます。
尚、不動産を取得することになるため、通常の不動産購入と同じように、不動産取得税や登録免許税、印紙税、登記費用、消費税などは必要となります。
また、建築中の仮住まい費用や引っ越し代も必要になることにはご注意ください。
自己資金ほぼゼロで安く住戸を入手。賃貸住宅の経営リスクも大幅に軽減
地主(土地所有者)のメリットとしては、お金を用意することなく、そして借金をせずに建物を取得できることです。
自宅として利用する場合にはもちろん、取得した分譲マンションを賃貸経営する場合にも、自己資金の負担がないことは経営リスクをかなり小さくできます。
通常相場よりも安くマンションを取得できる
等価交換事業でマンションを手に入れる場合、原価で割り当てられるため、一般の分譲マンションを購入するより安く仕入れられます。
一般の分譲価格は、①土地代+②建設費用+③税金・金利+④販売経費+⑤建築会社の利益と大きく分解できます。
新築分譲マンションの場合、綺麗な広告やモデルルームの管理コストなどが大きくのしかかってきます。
しかし等価交換事業は、地主との共同事業であるため、③と④を差し引いた価格で安く割り当てられることが一般的です。
土地を差し出す代わりにおカネを出さず、しかも安価に分譲マンションを手に入れることができるのですね。
通常、賃貸住宅の経営は多額の借金が前提。等価交換は借入不要
土地の上にアパートを建て、賃貸経営する時に地主が懸念することは多額の借入です。
相続対策と称して賃貸アパート経営をする場合もありますが、確かに現金を不動産に変えることや、借り入れをして借金することは相続税を減額させる効果はあります。
しかしながら、実際に入居者を確保し、賃料を回収できなければ、借金と利息の返済に追われて、最悪支払いができなくなれば土地建物もろとも手放す事態に陥ります。
その意味で、借金をしないでマンションの住戸を与えられる等価交換は、賃貸経営を行う場合にもリスクが極めて少ないといえます。
もちろん、入居者がいなければ賃料収入が入ってこず本末転倒となりますが、銀行への借金返済がないため、支払いができなくなるという事態には陥らないのです。
賃貸経営には興味があるけどリスクを限りなく小さくしたい、という方の要望にも応えることができるのです。
お金を用意せずに自宅や店舗を建て替えられる
自分が所有する自宅や会社(店舗)が老朽化しているけど、建て替える資金がない…という場合、等価交換することで建て替えが可能です。
つまり、土地を不動産会社(建築会社)に提供することで、既存の建物を取り壊した上でマンションやビルを建築してもらえます。
そして、そのマンションやビルの一室に自分が住み続けられるのです。土地の所有権は失いますが、土地の共有持分と割り当てられた住戸は自分のものです。
また、店舗など事業用としての建物を所有するオーナーが、等価交換によって建築されたビルの1階部分を割り当ててもらうこともあります。
複雑な権利関係を、土地を分筆せずに調整できる
土地を他人に貸していて、底地権と借地権が発生している場合や、自分の土地と隣接する場合に複数の土地をまとめて等価交換することもできます。
具体例でみてみましょう。同じ土地の底地権者A、借地権者Bと、別の土地の所有者C、所有者Dの4人で合意して、一体の土地として不動産会社と等価交換する場合です。
それぞれの権利が2.5億円(A)、1.5億円(B)、1億円(C)、1億円(D)とし、不動産会社が4億円キャッシュを提供したとしましょう。合計10億円に対し、それぞれの出資割合は25%・15%・10%・10%・40%です。
完成したマンションもそれ応分に分けられます。ここで、マンション戸数の兼ね合いや、土地所有者Dからの要望もあり、Dはマンションを9%相当分提供され、残り1%を現金で受け取っています。
このように、複雑な権利を柔軟に調整することができるのが等価交換の強みです。
共同所有している土地もスッキリ分割できる
複数の所有者が共同名義で所有している土地をうまく分けたいという要望にも対応できます。
広大な土地を持つ一人の所有者が土地を分割するケースではなく、共有持ち分を分筆せずに分割するというケースにも使えるということです。
4人で共有している土地を分割する状況を考えましょう。
一つの土地を4つに分筆(分割)することはできますが、細切れになった土地は活用方法が狭められ、土地の価値を下げることにつながりかねません。
その場合、等価交換を行い、土地の上にマンションを建設することで、土地を有効に使いつつ所有権の割合に応じて区分マンションを複数戸所有できるようになります。
資産を綺麗に分けることができるのです。
相続を見据えた資産の分割も容易。”争続”を避ける手段になる
相続を考えられている資産家の方であれば、土地一体を所有していても法定相続人にうまく分割できず、相続が「争族」になってしまいかねません。
土地を分ける(分筆する)ことも考えられますが、活用しづらい土地は価値が下がり、それを相続する子どもや孫が困ることにもなりかねません。
等価交換では(土地の価値にもよりますが)区分マンションを数戸取得できるため、資産価値を下げることなく遺産分割ができます。
一部売却による換金化で相続税資金も捻出
さらに、広大な土地の場合には買い手がつくことが難しかった場合にも、小分けした区分マンションであれば買主がつきやすく、換金(キャッシュ)化しやすいともいえます。
つまり、相続税の納付のために一部を売却する(現金化する)手段としても使えるのです。
思い入れのある土地を利用し続けられる
等価交換を行う場合すべてに共通することですが、土地と縁が切れるわけではない(土地から離れるわけではない)という特徴があります。
つまり、土地の所有権を失いますが(共有名義として共有持分は得られます)、その土地に建てられたマンションに住むことができます。
先祖代々受け継いできた土地など、土地との縁を保つことはできるのです。
等価交換は、感情的な部分でどうしても愛着がわいており、手放したくないけれど、資金を投下してリスクを負いたくない所有者には適している方式です。
土地をまとめて等価交換することで、土地値が上昇することも
土地全体がまとまることで、土地の評価額が跳ね上がることもあります。
例えば、自分の土地が細い道路にしか面していない場合に、他の土地と一体化することで、幹線道路に面することになり、容積率が大幅に緩和される場合などです。
また、道路から離れ奥まった部分に土地を所有する場合にも、隣接する他の土地と一体化できれば、道路に接道したマンションを手に入れることができます。
自分自身の土地に活用方法が見出せなくても、お隣さんを含めて土地の活用が考えられ、場合によっては大化けする可能性があるのが等価交換なのですね。
【税の特例】物々交換のため「立体買換えの特例」が適用できる
更地を所有しているだけの地主の場合、等価交換で土地の上に建物が建つだけで固定資産税がぐっと下がります
具体的には、更地に比べて、建物付きの土地は固定資産税が約1/6になります。
そして、等価交換において地主は土地を譲渡していますが、お金を得るのではなくモノ(住戸)を受け取るため、譲渡所得税の優遇が受けられます。
立体買換えの特例で、次に売却する時まで譲渡所得税を繰り延べる
具体的には、「立体買換えの特例」と呼ばれるものです(適用にはそれなりに厳しい要件がありますがここでは割愛します)。
これは、等価交換によって取得した住戸(買換資産)に譲渡益が出ていても、その住戸を売却するまで譲渡税を繰り延べるというものです。
例えば、取得価額が2億円の土地があったとしましょう。それを等価交換によって、1億円の区分マンションが3戸(合計3億円相当)得られたとした時、通常であれば差額の1億円が譲渡所得とみなされ、課税されます。
等価交換は、出資「割合」に応じて資産(マンション住戸)が割り当てられますので、もともと所有していた土地の価格以上の資産(マンション)が手に入る場合があります。
そのため、2億円の土地が3億円の区分マンションに化けることも往々にしてあります。
しかし特例を適用すれば、その譲渡税をその時は課税せず、含み益としたままにしておきましょうとその時は目をつぶってくれる特例なのです。
減税されるのではなく、税金支払いを繰り延べるもの(猶予するもの)
繰り返しますが、譲渡所得税を免除してくれるものではなく、あくまで繰り延べるものです。
建物取得価額分を全額減価償却した後に売却する場合、売却価格から土地の取得価額を引いた譲渡益に譲渡所得税が課税されます。
尚、土地を譲渡する代わりに、住戸だけでなくおカネも一部取得した場合には、その受け取ったおカネに応じて通常の譲渡所得税がかかります。
繰り延べるか特例を適用しないか、長い目でみて検討が必要
立体買換えの特例を適用した場合には、マンションを建築してもらう時に譲渡した土地の譲渡所得税がかからず、その時は税金を払わずにすみます。
減価償却の額が少なくなる副作用もある
減価償却できる額が制限されるというデメリットもあります。
通常であれば、例えばマンションを賃貸する場合、建物価額相当額(=取得した資産の価格-土地の取得価額)の全額を長年にわたり減価償却ができます。
立体買換えの特例を適用する場合、減価償却できるのは等価交換で取得したマンション(建物)の内、建物相当額の全額ではなく譲渡益相当額「以外」の建物価格なのです。
つまり、等価交換で取得したマンション(買換資産)の取得費は元の土地の取得価額を基に算定され、実際の価格から譲渡益相当額が差し引かれます。
その後の経費(減価償却費)が減ることで、毎年の課税所得が増えて税金が高くなることになります。
例えば、本来年間▲500万円が減価償却できたものが、▲300万円などに落ち込み、その分経費が少なくなり税額が高くなるのです。特例を適用せず、マンションを取得した時に譲渡益を払えば、建物取得価額+譲渡益相当額の全額を減価償却できるようになります。
つまり、特例の適用が必ずしも長期的にみてお得になるわけではないのですね。
譲渡所得税と毎年の所得税は税率が違う。所得が多い人ほど所得税が高い
だからこそ、以下の2つを天秤にかけどちらが得か?という検討が必要です。
- 一時の譲渡所得税を繰り延べる(支払わないですます)代わりに、その後毎年発生する課税所得が増えることを受け入れる
- 譲渡所得税を支払い一時的にキャッシュアウトする代わりに、多く取れる減価償却費で毎年の課税所得を少なめに抑える
その際、譲渡所得税と不動産所得税の税率はその所得に応じて大きく異なることも踏まえて、立体買換えの特例を適用するかどうか慎重に判断しましょう。
例えば、買換資産(マンション)を取得してから5年超経過して売却する場合、長期譲渡税として20%(=譲渡税15%+住民税5%)ですみます。
一方で、毎年の不動産所得税は累進課税として最大55%(=所得税45%+住民税10%)かかります。所得が多い場合はできるだけ減価償却費で経費計上することを優先すべきでしょう。
将来売却しないなら、ずっと繰り延べられる。適用を住戸ごとに変えるのも一案
また、将来売却する予定がない場合は、事実上、譲渡所得税はゼロとなります。
つまり、取得したマンションをずっと保有し続けることがわかっているのであれば、譲渡所得税が永遠に繰り延べられるからです。
さらに、等価交換で取得したマンションが複数戸ある場合には、立体買換えの特例を適用するものとしないものに分けることもできるという折衷案も採用することができます。
これらを総合的に検討した上で節税戦略を決めましょう。
ディベロッパーにとっても低リスクでメリットある事業
地主は現金の代わりに土地を差し出せば、新築マンションを手に入れることができる低リスクな事業といえます。
そしてこれは建築会社側からみても同じことがいえるのです。
建築会社は土地仕入れにキャッシュが不要。金利支払いもなく、建築コストも低減
土地を仕入れるお金を用意せずに事業を進められるため、リスクを抑えられることが事業者のメリットです。
なぜなら、マンションを建てた後に住戸を渡す物々交換なので土地を仕入れる際にお金を地主に払わないでいいからです。
これは不動産会社のみのメリットではなく、実は土地の所有者にもメリットとなります。
建築会社が銀行などから借り入れをしないということは、金利支払い費用がなくなりそれだけ建築コストが下がります。
つまり、等価交換事業へ建築会社が出資するキャッシュが少なくなり、その分、土地の所有者に割り当てられる資産が多くなるのです。
通常は土地仕入れ値を早く決定するためリスクがある
開発リスクの大幅な低減という意味でもメリットがあります。
通常のマンション建設の場合には、本当に想定通りのマンションが建設できるかという詳細な検討が必要です。環境調査や建築費用概算、法的規制などを調べる必要があります。
特に不動産は容積率や建ぺい率、道路付け、高さ、日影など、さまざまな規制に縛られており、検討に時間がかかります。
一方で、土地の仕入れ競争は激化しており、十分な検討をしている時間はないのが実情です。
つまり、見切り発車で土地を仕入れることが多々あり、仕入れる時点で購入価格も決まります。
もし想定が誤っており、分譲マンションの売上高が小さくなっても、既に支払い済みの仕入れ費用に変化はなく、利益を大きく圧迫するリスクがあるのです。
土地仕入れ価格を後付けで決定でき、理論上は損をしない仕組み
一方で、等価交換でのマンション建設では、地主から土地を提供してもらう約束を取り付けてから詳細な建築プランの検討や役所との折衝を行っても構わないのです。
建築マンションの詳細が決定してから、地主へ割り当てる区分数などを提案するためです。
もちろん、例えば当初の想定より建築できる区分数が下がったとした場合、全体の売上高は減少します。
ただ、建築のために建築会社が拠出したお金と地主の土地評価額の割合(出資割合)に応じて地主にマンションを割り当てるため、建築会社としては理論上損をしないのです。
土地の仕入れ時に土地取得費用が決まっておらず、完成するマンションに対する出資割合に応じて分配するという仕組みをうまく利用しているのですね。
等価交換のメリット・活用法のまとめ
等価交換は地主にとってもディベロッパー(建築会社)にとってもメリットがあります。地主は土地を譲渡するため自己資金をほとんど出すことなく、新築マンションを取得できます。
また、複雑な権利関係をスッキリさせたり、共同持ち分を綺麗に分割できるなど、うまく活用することで相続をスムースに進める対策にもなります。
さらに、隣地を含め大きな土地にマンションを建てれば不動産の価値が大きく上昇することもあります。
尚、譲渡所得税の支払いを繰り延べる「立体買換えの特例」は必ずしも特になるものではなく慎重に事前検討しましょう。
ディベロッパーにとっても、事業性をしっかり検証する時間を確保できることに加え、土地仕入れに関わる借り入れがなくなりキャッシュフローが大きく改善できます。
立地や地主との健全な合意が不可欠な等価交換事業ですが、うまく活用すれば関係者全員にとって利益をもたらす事業となるのですね。
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